[P-MT-12-1] 持続した立位体幹屈曲・伸展運動時の腰背筋活動と循環動態変化
Keywords:腰痛, NIRS, 筋活動
【はじめに,目的】
近年,非特異的腰痛症に対する立位での体幹伸展運動(立位伸展運動)による効果が報告されている。立位伸展運動は髄核移動が影響しているとされている。しかし,非特異的腰痛症の中でも筋・筋膜性腰痛は腰部循環不全に起因するともいわれており,立位伸展運動は循環動態を改善している可能性もある。また非特異的腰痛症では腰背部の柔軟性向上を目的に立位伸展運動とは逆方向となる体幹屈曲運動(立位屈曲運動)が行われていることもある。しかし,立位屈曲運動では腰背部筋活動による阻血が生じる可能性もある。近年,近赤外線酸素代謝モニタ装置(near-infrared spectroscopy;NIRS)と表面筋電計(electromyograph;EMG)を用いて,腰部の循環動態を検証している報告は散見されるが,立位屈曲運動後に立位伸展運動を行わせることによる循環動態変化のリバウンド効果を検討した報告はない。本報告の目的は,健常若年者を対象にNIRSとEMGを用いて,腰背部の血流動態と筋活動の変化の視点から立位屈曲運動と立位伸展運動の筋生理学的な影響を比較検討することである。
【方法】
対象は健常成人男性10名(平均年齢22.8±2.2歳)とした。運動課題は先行研究に則り,4秒間の安静立位から体幹を4秒かけて屈曲,屈曲位で4秒間保持する立位屈曲運動を屈曲10から50度まで10度刻みで連続して行わせた。50度屈曲位で4秒間保持後,4秒間で立位に戻り,安静立位で4秒間静止後,4秒かけて10度伸展,伸展位で4秒間保持する立位伸展運動を行わせ,次に伸展20度で同様の運動を連続して行わせた。近赤外線組織酸素モニタ装置(Pocket NIRS Duo, DynaSense社製)で,多裂筋部の酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(deOxy-Hb),総ヘモグロビン(total-Hb)を計測し,腰部脊柱筋部と多裂筋部の筋活動を表面筋電計(TeleMyo2400, Noraxon社製)で計測した。
各角度の筋血流動態と筋活動量の比較にはFriedman検定,多重比較検定(Holm test)を行い,有意水準を5%とした。
【結果】
立位屈曲運動ではMFの筋活動量が30度までの屈曲角度の増加に伴い有意に増加し,LES,MFともにOxy-Hb,total-Hbが有意に減少した。その後の立位伸展運動ではLESでは10度,MFでは20度で筋活動が有意に減少し,Oxy-Hb,total-Hbの増加傾向を認めたが,有意差を認めず安静立位時の値に回復する結果となった。
【結論】
立位屈曲運動による筋の伸張,筋活動の増加が筋内圧を上昇させ,阻血状態となったことで酸素消費量が高まり,立位伸展運動ではこの酸素負債の影響を受けたと考えられた。
近年,非特異的腰痛症に対する立位での体幹伸展運動(立位伸展運動)による効果が報告されている。立位伸展運動は髄核移動が影響しているとされている。しかし,非特異的腰痛症の中でも筋・筋膜性腰痛は腰部循環不全に起因するともいわれており,立位伸展運動は循環動態を改善している可能性もある。また非特異的腰痛症では腰背部の柔軟性向上を目的に立位伸展運動とは逆方向となる体幹屈曲運動(立位屈曲運動)が行われていることもある。しかし,立位屈曲運動では腰背部筋活動による阻血が生じる可能性もある。近年,近赤外線酸素代謝モニタ装置(near-infrared spectroscopy;NIRS)と表面筋電計(electromyograph;EMG)を用いて,腰部の循環動態を検証している報告は散見されるが,立位屈曲運動後に立位伸展運動を行わせることによる循環動態変化のリバウンド効果を検討した報告はない。本報告の目的は,健常若年者を対象にNIRSとEMGを用いて,腰背部の血流動態と筋活動の変化の視点から立位屈曲運動と立位伸展運動の筋生理学的な影響を比較検討することである。
【方法】
対象は健常成人男性10名(平均年齢22.8±2.2歳)とした。運動課題は先行研究に則り,4秒間の安静立位から体幹を4秒かけて屈曲,屈曲位で4秒間保持する立位屈曲運動を屈曲10から50度まで10度刻みで連続して行わせた。50度屈曲位で4秒間保持後,4秒間で立位に戻り,安静立位で4秒間静止後,4秒かけて10度伸展,伸展位で4秒間保持する立位伸展運動を行わせ,次に伸展20度で同様の運動を連続して行わせた。近赤外線組織酸素モニタ装置(Pocket NIRS Duo, DynaSense社製)で,多裂筋部の酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(deOxy-Hb),総ヘモグロビン(total-Hb)を計測し,腰部脊柱筋部と多裂筋部の筋活動を表面筋電計(TeleMyo2400, Noraxon社製)で計測した。
各角度の筋血流動態と筋活動量の比較にはFriedman検定,多重比較検定(Holm test)を行い,有意水準を5%とした。
【結果】
立位屈曲運動ではMFの筋活動量が30度までの屈曲角度の増加に伴い有意に増加し,LES,MFともにOxy-Hb,total-Hbが有意に減少した。その後の立位伸展運動ではLESでは10度,MFでは20度で筋活動が有意に減少し,Oxy-Hb,total-Hbの増加傾向を認めたが,有意差を認めず安静立位時の値に回復する結果となった。
【結論】
立位屈曲運動による筋の伸張,筋活動の増加が筋内圧を上昇させ,阻血状態となったことで酸素消費量が高まり,立位伸展運動ではこの酸素負債の影響を受けたと考えられた。