第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-12] ポスター(運動器)P12

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-12-2] 姿勢保持に対するストレッチとその手法の違いが腰部循環動態に与える影響

新田 真之介1, 奥村 崇幸1, 隈元 庸夫2 (1.春日部厚生病院, 2.埼玉県立大学)

キーワード:腰痛, ストレッチ, NIRS

【はじめに,目的】

筋・筋膜性由来の腰痛症は姿勢保持による筋阻血が一要因とされており,循環動態を改善させることが一つの治療目標となる。慢性腰痛ではストレッチが疼痛に短期的効果を有するとのエビデンスがある。ストレッチによる腰部の筋血流動態変化を近赤外線分光法(near infared spectroscopy:NIRS)で検討した報告は散見されるが,ストレッチ手法の違いが姿勢保持時の血液循環動態変化に及ぼす影響を比較検討した報告は少ない。本研究の目的は,NIRSと表面筋電図を用いてストレッチが姿勢保持における腰部の循環動態と筋活動量に及ぼす影響を検討し,腰部のストレッチ効果を筋生理学的に検証することである。

【方法】

対象は整形外科的疾患既往のない健常男性9名(平均年齢22.9±2.3歳)とした。姿勢保持での腰部の筋活動と循環動態変化をストレッチ前後で比較するために,端坐位(upright),体幹40°前傾位(flex),再び端坐位(re-upright)の順に30秒間姿勢保持させる姿勢保持課題を行わせた。その後,体幹を最大屈曲し,両側の内外果を手で把持させる腰部のストレッチを10秒間,3セット,各セット間は5秒間として行わせた。ストレッチはこの5秒間を正中位での安静端坐位としたSSと,正中位での体幹伸展等尺性運動を行わせたHRの2種類とした。その後,再び姿勢保持課題を行わせた。

携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置(PocketNIRS Duo,DynaSense社製)と表面筋電計(TeleMyo 2400,Noraxon社製)を用いて,姿勢保持課題中の腰部の酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(deOxy-Hb),総ヘモグロビン(total-Hb),筋活動量(%MVC)を求めた。

得られた測定値を対応のあるt検定,Wilcoxonの符号付順位和検定にて比較検討した。有意水準は5%とした。


【結果】

姿勢保持課題時の循環動態のストレッチ前後比較では,SSでdeOxy-Hbとtotal-Hbの有意な減少,Oxy-Hbに有意差を認めず,HRではOxy-Hbが増加傾向,deOxy-Hb,total-Hbは有意差を認めない結果となった。ストレッチ手法による比較では,SSと比較してHRで姿勢保持課題時のOxy-Hb,deOxy-Hb,total-Hbが有意に増加した。姿勢保持課題時での筋活動量のストレッチ前後比較では,SSもHRも有意差を認めなかった。ストレッチ手法による比較についてもSSとHRで有意差を認めなかった。

【結論】

SSではdeOxy-Hb減少,HRではOxy-Hb増加が特徴的な変化であり,HRでは充血作用が期待できることから,筋阻血が原因である姿勢性の非特異的腰痛に対するストレッチとして有用となる可能性が示唆された。