[P-MT-13-2] 加速度計を用いた両側人工膝関節全置換術後患者における術前後での歩行解析の報告
Keywords:人工膝関節置換術, 歩行, 加速度計
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下,膝OA)の発症のリスクファクターとして,年齢,女性,肥満,大腿脛骨角(femoro-tibal angle:FTA)及び歩行時のlateral thrust(以下LT)を挙げている。我が国において変形が高度に進行した者に対して人工膝関節置換術(以下TKA)は治療のひとつとして選択されることが多い。しかし,短縮された入院期間の中でどの程度歩行能力が獲得されているかは明らかではない。そこで今回,両側膝OAを罹患し,両側同時人工膝関節置換術(以下Bil-TKA)を施行した患者に対し,三軸加速度計を用いて術前後での歩行を評価した。これらについて比較・検討したため報告する。
【方法】
対象は,両内側型膝OAを呈し,Bil-TKAを施行した15症例30膝とした。三軸加速度計は,両側の腓骨頭に専用ベルトにて装着した。測定は,手術前日と,術後は退院前日(術後平均約17日)に行った。課題は助走路と減速路2mずつ設けた14m直線歩行路を快適速度にて独歩で行った。三軸加速度計から得られたデータより膝外側加速度ピーク値(以下ピーク値),連続する1歩行周期時間から平均,標準偏差を求め算出した歩行周期変動(以下CV),Root Mean Square(以下RMS)と歩行速度を求めた。RMSは歩行速度の2乗で除した。歩行中の加速度データは,加速期と減速期の影響を考慮して,歩き始めの2歩と終わりの2歩を除いた。歩行速度は中間10mの距離にて測定した。得られた値は術前後で対応のあるt検定にて有意差を求めた。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
術前後において,ピーク値は術前が0.65±0.25G,術後が0.38±0.14Gであり有意に減少していた(P<0.01)。左右RMSは術前が0.37±0.19m/s2,術後が0.29±0.1m/s2であり有意に減少していた(P<0.05)。前後RMSは術前が0.57±0.22m/s2,術後が0.6±0.2m/s2であった。上下RMSは,術前が0.34±0.11m/s2,術後が0.26±0.08m/s2であった。CVは術前が2.69±1.02%,術後が2.89±1.21%であった。歩行速度は,術前が0.83±0.15m/s,術後が0.71±0.15m/sであり有意に減少していた(P<0.05)。
【結論】
先行研究により,ピーク値はInitial Contact後の膝外側動揺性すなわちLTを示し,RMSは歩行周期中の動揺性を示し,CVは安定性を示しているとされている。術後,LTと左右の動揺性が改善した。ピーク値が減少したことで,左右RMSも減少したと考えられ,LTは膝の左右動揺性に影響があることが推察された。前後・上下RMS,CVは術前後において有意差は認められなかった。これらにより,術後早期においても術前と同程度の歩行安定性が獲得されていると示唆された。歩行速度は有意に減少した。先行研究により術後早期は歩行速度が低下すると報告されており,本研究においても同様の結果となった。当院では術後2週間を退院目標としているため,今後は術後長期での経時的変化,ROM・FTA・筋力・疼痛などとの相関関係や円滑性や規則性など他の要因を検討する必要があると考える。
変形性膝関節症(以下,膝OA)の発症のリスクファクターとして,年齢,女性,肥満,大腿脛骨角(femoro-tibal angle:FTA)及び歩行時のlateral thrust(以下LT)を挙げている。我が国において変形が高度に進行した者に対して人工膝関節置換術(以下TKA)は治療のひとつとして選択されることが多い。しかし,短縮された入院期間の中でどの程度歩行能力が獲得されているかは明らかではない。そこで今回,両側膝OAを罹患し,両側同時人工膝関節置換術(以下Bil-TKA)を施行した患者に対し,三軸加速度計を用いて術前後での歩行を評価した。これらについて比較・検討したため報告する。
【方法】
対象は,両内側型膝OAを呈し,Bil-TKAを施行した15症例30膝とした。三軸加速度計は,両側の腓骨頭に専用ベルトにて装着した。測定は,手術前日と,術後は退院前日(術後平均約17日)に行った。課題は助走路と減速路2mずつ設けた14m直線歩行路を快適速度にて独歩で行った。三軸加速度計から得られたデータより膝外側加速度ピーク値(以下ピーク値),連続する1歩行周期時間から平均,標準偏差を求め算出した歩行周期変動(以下CV),Root Mean Square(以下RMS)と歩行速度を求めた。RMSは歩行速度の2乗で除した。歩行中の加速度データは,加速期と減速期の影響を考慮して,歩き始めの2歩と終わりの2歩を除いた。歩行速度は中間10mの距離にて測定した。得られた値は術前後で対応のあるt検定にて有意差を求めた。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
術前後において,ピーク値は術前が0.65±0.25G,術後が0.38±0.14Gであり有意に減少していた(P<0.01)。左右RMSは術前が0.37±0.19m/s2,術後が0.29±0.1m/s2であり有意に減少していた(P<0.05)。前後RMSは術前が0.57±0.22m/s2,術後が0.6±0.2m/s2であった。上下RMSは,術前が0.34±0.11m/s2,術後が0.26±0.08m/s2であった。CVは術前が2.69±1.02%,術後が2.89±1.21%であった。歩行速度は,術前が0.83±0.15m/s,術後が0.71±0.15m/sであり有意に減少していた(P<0.05)。
【結論】
先行研究により,ピーク値はInitial Contact後の膝外側動揺性すなわちLTを示し,RMSは歩行周期中の動揺性を示し,CVは安定性を示しているとされている。術後,LTと左右の動揺性が改善した。ピーク値が減少したことで,左右RMSも減少したと考えられ,LTは膝の左右動揺性に影響があることが推察された。前後・上下RMS,CVは術前後において有意差は認められなかった。これらにより,術後早期においても術前と同程度の歩行安定性が獲得されていると示唆された。歩行速度は有意に減少した。先行研究により術後早期は歩行速度が低下すると報告されており,本研究においても同様の結果となった。当院では術後2週間を退院目標としているため,今後は術後長期での経時的変化,ROM・FTA・筋力・疼痛などとの相関関係や円滑性や規則性など他の要因を検討する必要があると考える。