The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-14] ポスター(運動器)P14

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-14-3] 歩行立脚時の膝関節屈曲運動の減少は変形性膝関節症患者にいかなる影響を及ぼすか

阿南 雅也1, 徳田 一貫2, 谷本 研二2, 澤田 智紀2, 木藤 伸宏3, 新小田 幸一4,5 (1.大分大学福祉健康科学部理学療法コース, 2.広島大学大学院医歯薬保健学研究科保健学専攻, 3.広島国際大学総合リハビリテーション学部, 4.広島大学大学院医歯薬保健学研究院, 5.広島大学大学院医歯薬保健学研究科附属先駆的リハビリテーション実践支援センター)

Keywords:変形性膝関節症, 膝関節屈曲運動, サブグループ化

【はじめに,目的】

変形性膝関節症(以下,膝OA)における歩行時の運動学的変化としてdouble knee actionの消失が挙げられ,歩行立脚時の膝関節屈曲運動の減少は,病的な膝関節の状態を反映する指標であるとされている。また,歩行時の膝関節周囲筋の共同収縮が増大することにより膝関節安定性を高めているが,正常な膝関節運動が阻害されるため,膝関節へのメカニカルストレスが増大し,関節変性・破壊,疼痛増大,身体機能低下をもたらす可能性がある。そこで本研究は,膝OA患者を歩行立脚時の膝関節屈曲運動の変化量の違いによってサブグループ化し,歩行立脚時の膝関節屈曲運動が減少した膝OA患者は,膝関節へのメカニカルストレスが増大しているか,また疼痛,身体機能などに変化が生じているかを明らかにすることを目的として行った。


【方法】

被験者は膝OAの診断を受けた女性20人(72.1±4.6歳)であった。課題動作には被験者が快適と感じるスピードでの平地歩行を採用し,10回試行した。計測には,三次元動作解析装置および床反力計を使用して運動学・運動力学データを取得した。得られたデータから,歩行スピード,初期接地から膝関節最大屈曲角度までの膝関節屈曲角度変化量,歩行立脚期の外部膝関節内転モーメント(以下,KAM)積分値を算出した。また,膝外傷および変形性膝関節症アウトカムスコア(以下,KOOS)により,症状,痛み,日常生活,スポーツおよびレクリエーション活動,生活の質の各下位尺度を評価した。膝関節屈曲角度変化量が10°以上を正常群(9名),10°未満を減少群(11名)と定義し,2群に分類した。統計学的解析には統計ソフトウェアSPSS Ver.23.0を用い,2群間の比較には2標本t検定を行った。有意水準は5%未満とした。


【結果】

身長,体重,年齢,KAM積分値に群間の有意差を認めなかった。減少群は,正常群に比して歩行スピード(減少群:1.06±0.18[m/s],正常群:1.27±0.23[m/s];p<0.05),膝関節屈曲角度変化量(減少群:7.7±2.0[°],正常群:12.9±1.3[°];p<0.05),KOOSの症状(減少群:71.8±15.6[点],正常群:91.6±8.3[点];p<0.05),痛み(減少群:72.5±17.5[点],正常群:87.4±14.0[点];p<0.05),日常生活(減少群:84.6±9.4[点],正常群:93.7±8.2[点];p<0.05),スポーツおよびレクリエーション活動(減少群:57.2±26.2[点],正常群:81.4±14.7[点];p<0.05)において有意差を認めた。


【結論】

本研究の結果から,膝関節屈曲角度変化量が減少した歩行は,膝関節へのメカニカルストレスに対応した動作戦略ではなく,症状や痛み,身体機能に対応した動作戦略であることが明らかになった。膝OAの理学療法では,歩行立脚期での罹患側下肢の膝関節屈曲運動の再獲得の際に,症状や痛み,身体機能を考慮する必要があることが示唆された。