The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-15] ポスター(運動器)P15

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-15-1] 肩こりに対する高電圧電気刺激法の効果
―治療前後の筋硬度変化の検討―

佐藤 圭汰1, 小俣 純一1,2, 遠藤 達矢1, 三浦 拓也1, 岩渕 真澄3, 白土 修3, 伊藤 俊一1,4 (1.福島県立医科大学会津医療センターリハビリテーション科, 2.福島県立医科大学新医療系学部設置準備室, 3.福島県立医科大学会津医療センター整形外科・脊椎外科学講座, 4.北海道千歳リハビリテーション学院)

Keywords:肩こり, 電気療法, 超音波エラストグラフィー

【はじめに】

肩こりは平成22年および25年の厚生労働省国民生活基礎調査において,男女ともに高い有訴率で,改善が急務とされる病態の一つである。その中でも,肩こり患者の僧帽筋の筋硬度は健常者と比較して有意に高値を示すという報告があり,理学療法介入による改善が期待できる一つの因子である。

鎮痛効果を目的とした電気刺激療法は,一般的に経皮的神経電気刺激法(TENS)が用いられるが,今回はTENSと比較し皮膚抵抗が少ない高電圧電気刺激法(HVS)に着目した。HVSは鎮痛効果に加え,筋ポンプ作用による血液循環増大効果を持つことが報告されており,肩こり患者における僧帽筋の筋硬度を改善させる可能性がある。しかし,肩こり患者に対するHVSの効果は検討されていない。そこで本研究の目的は,肩こり患者に対するHVSの即時的効果と筋硬度に対する介入の意義を検証することである。



【対象と方法】

対象は同意を得た肩こりを有する成人女性15名(40.3±8.4歳,155.4±2.6cm,58.7±10.5kg)。HVSはPHYSIO ACTIVE HV(酒井医療社製)を用い,設定を周波数50Hz・パルス持続時間50μsecとして,対象者が不快に感じない電流強度で10分間実施した。筋硬度の測定は超音波画像診断装置Aixplorer(SuperSonic Imagine社製)を用いた。測定肢位は両上肢を体側につけた腹臥位として,僧帽筋上部線維の筋硬度を測定した。筋硬度はHVS前・直後・5分後,疼痛(VAS)はHVS前後に評価を実施した。統計的解析は治療前後の筋硬度変化に多重比較法,治療前後のVASに対応のあるt検定を用いた。有意水準は全て5%とした。









【結果】

僧帽筋の平均筋硬度はHVS前32.9±14.0kPa,直後30.0±11.2 kPa,5分後23.8±6.6 kPaで,HVS前・直後に比べて5分後に有意な低下を示した(p<0.05)。平均VASはHVS前52.6±22.8mm,HVS後31.8±21.3mmで,HVS前に比べHVS後に有意な低下を示した(p<0.01)。また,筋硬度の改善が疼痛の改善に寄与した者10名(66.7%)で,筋硬度の改善が疼痛の改善に寄与しない者2名(13.3%)であった。



【結論】

結果からHVSは筋硬度を低下させる効果を有し,肩こり患者の疼痛を改善する方法のひとつとなり得ることが示された。疼痛改善に用いる筋収縮後の弛緩期を利用した動的ストレッチは,血流改善による筋痛の緩和が報告されている。土井らは動的ストレッチ効果の持続時間を検証し,血液量が増加し筋温が上昇していくことで筋硬度の低下,筋伸張性が向上すると述べ,介入前に比べ直後,10分後と有意に効果が向上することを報告した。今回,HVSにより筋収縮が繰り返され,動的ストレッチと類似した効果が得られたため,筋硬度の改善,疼痛改善につながったと考える。しかし,筋硬度の改善が疼痛の改善に寄与しない者もみられた。肩こりの原因は多岐に渡るため,筋硬度に対するアプローチはあくまで肩こり患者の疼痛を改善させる方法の一つと考え,実施することが重要と考える。