[P-MT-15-4] 術後の神経障害性疼痛は不安・抑うつに関連するか
Keywords:神経障害性疼痛, 不安・抑うつ, 腰椎変性疾患
【はじめに,目的】腰椎変性疾患患者の術後に残存する疼痛は,理学療法の実施において阻害因子となりやすい。先行研究では,疼痛と不安・抑うつは関連があると多数報告されている。実際の臨床上でも,腰椎変性疾患術後に疼痛が遷延している患者は,不安・抑うつを呈することが多いと感じられる。疼痛の原因や遷延期間により治療介入が変化する為,それらを評価することは理学療法の実施にあたり重要である。しかし先行研究で,術後の神経障害性疼痛と不安・抑うつの関連についての報告は見当たらない。そこで今回,我々は術後の神経障害性疼痛と不安・抑うつの経時的変化の関連について調査を行った。
【方法】当院の脊椎・脊髄外科において,平成27年3月~平成28年6月に腰椎変性疾患に対して手術と理学療法を行い,術後の疼痛が残存している33名を対象とした。糖尿病や末梢神経障害等神経障害を有する症例,関節リウマチ・変形性関節症など疼痛を生じる既往がある症例,脊椎の再手術の症例,また精神疾患の既往がある症例については除外対象とした。術後1週間,1ヵ月,3ヵ月に日本語版The self-complete Leeds Assessment of Neuropathic Symptoms and Signs pain score(以下S-LANSS)とHospital Anxiety and Depression Scale(以下HADS)で評価を行った。S-LANSSは神経障害性疼痛の尺度として用い,高値になれば神経障害性疼痛の可能性が高くなる。10点以上を痛みの原因が神経障害性疼痛であるとして評価した。HADSは不安・抑うつの尺度として用い,点数が高値になれば不安・抑うつである可能性が高いとされている。またS-LANSSとHADS,それぞれについて術後1週間,1ヵ月,3ヵ月に差があるのかを多重比較検定を用いて調査した。加えて,各時期の不安・抑うつが神経障害性疼痛と関連しているのかを調べるためにS-LANSSが10点以上を神経障害性疼痛群,9点以下を非神経障害性疼痛群とし,各時期のS-LANSSとHADSをt検定を用いて調査した。有意水準は5%未満とした。
【結果】S-LANSSとHADSは共に術後1週間,1ヵ月,3ヵ月それぞれ有意な差はみられず,神経障害性疼痛と不安・抑うつの経時的な変化は共に認めなかった。術後1週間(p=0.33),1ヵ月(p=0.47)でS-LANSSとHADSの有意な関連はみられなかった。しかし術後3ヵ月で有意な関連がみられ(p=0.002),神経障害性疼痛が遷延した患者に関しては不安・抑うつが高値を認めた。
【結論】術後1週間,1ヵ月では神経障害性疼痛と不安・抑うつに関連はみられなかったが,術後3ヵ月では関連がみられた。術後の神経障害性疼痛が長期的に持続することにより,不安・抑うつが助長されるのではないかと考えられる。そのため退院後の外来を継続し,身体機能面や患者の情動面に配慮した理学療法の介入が重要であると考えられる。しかし今回の解析でどちらが原因となるのか,因果関係は明確にすることはできなかったため,今後調査を行い検討していきたい。
【方法】当院の脊椎・脊髄外科において,平成27年3月~平成28年6月に腰椎変性疾患に対して手術と理学療法を行い,術後の疼痛が残存している33名を対象とした。糖尿病や末梢神経障害等神経障害を有する症例,関節リウマチ・変形性関節症など疼痛を生じる既往がある症例,脊椎の再手術の症例,また精神疾患の既往がある症例については除外対象とした。術後1週間,1ヵ月,3ヵ月に日本語版The self-complete Leeds Assessment of Neuropathic Symptoms and Signs pain score(以下S-LANSS)とHospital Anxiety and Depression Scale(以下HADS)で評価を行った。S-LANSSは神経障害性疼痛の尺度として用い,高値になれば神経障害性疼痛の可能性が高くなる。10点以上を痛みの原因が神経障害性疼痛であるとして評価した。HADSは不安・抑うつの尺度として用い,点数が高値になれば不安・抑うつである可能性が高いとされている。またS-LANSSとHADS,それぞれについて術後1週間,1ヵ月,3ヵ月に差があるのかを多重比較検定を用いて調査した。加えて,各時期の不安・抑うつが神経障害性疼痛と関連しているのかを調べるためにS-LANSSが10点以上を神経障害性疼痛群,9点以下を非神経障害性疼痛群とし,各時期のS-LANSSとHADSをt検定を用いて調査した。有意水準は5%未満とした。
【結果】S-LANSSとHADSは共に術後1週間,1ヵ月,3ヵ月それぞれ有意な差はみられず,神経障害性疼痛と不安・抑うつの経時的な変化は共に認めなかった。術後1週間(p=0.33),1ヵ月(p=0.47)でS-LANSSとHADSの有意な関連はみられなかった。しかし術後3ヵ月で有意な関連がみられ(p=0.002),神経障害性疼痛が遷延した患者に関しては不安・抑うつが高値を認めた。
【結論】術後1週間,1ヵ月では神経障害性疼痛と不安・抑うつに関連はみられなかったが,術後3ヵ月では関連がみられた。術後の神経障害性疼痛が長期的に持続することにより,不安・抑うつが助長されるのではないかと考えられる。そのため退院後の外来を継続し,身体機能面や患者の情動面に配慮した理学療法の介入が重要であると考えられる。しかし今回の解析でどちらが原因となるのか,因果関係は明確にすることはできなかったため,今後調査を行い検討していきたい。