The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-20] ポスター(運動器)P20

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-20-3] 腰部筋持久力テストの再考
―脊柱変形のある高齢者への適切な評価法の検討―

神田 賢 (新潟医療福祉大学)

Keywords:腰部筋持久力テスト, 腰椎前弯角度, 脊椎変形

【はじめに,目的】現在,腰部筋持久力テストとして用いられている伊藤テストは,簡便であり,臨床現場等で幅広い対象者に適用されている。先行研究においても,他の腰部筋持久力テストと比較して高い規準妥当性が示されている。しかし,高齢者の中でも特に脊柱の変形が著明な方や痛みなどにより身体機能が低下している方にとっては,脊椎変形による弯曲の変化や可動性の低下,痛みなどによる腰背部筋の機能低下などから,筋持久力評価テストとしての伊藤テストの実施が困難であることが多々見受けられる。そこで本研究では,独自の腰部筋持久力テスト(以下,新テスト)を考案し,従来の伊藤テストと比較し,各テストを行う対象者を明確にすることを目的とした。

【方法】対象者は,過去1年以内に腰痛症状のない健常な男女13名(男8名,女5名,平均年齢20±3)とした。全対象者には,研究内容の説明を行い,書面で研究への参加の同意をしてもらった上で実施した。同一の対象者に対して,新テストと伊藤テストをランダムに実施させ,その差を比較・検討した。測定を行う前に,それぞれのテスト肢位の教育及び練習を行い,適切な肢位でのテストが行えることを確認した。腰背部持久力時間の測定は,疲労を考慮し期日を変えて行い,各テストの持久力時間をそれぞれ測定した。測定時間は,胸骨部位がベッドから離床してからまた再び着床するまでとし,測定中は体幹の角度をベッドから15度の位置に保持させた。脊柱アライメントは,脊柱計測分析器Spinal Mouseを用いて測定を行った。各テストの実施肢位にて,それぞれ腰椎前弯角度,胸椎伸展角度,仙骨角度を測定した。腰背部筋は,超音波診断装置を用いて多裂筋及び最長筋の筋厚の測定を行った。第5腰椎棘突起部位にて,各テスト実施前の安静時及び実施の際の筋収縮時の筋厚をそれぞれ測定し,その差を比較した。

【結果】腰背部持久力時間においては,新テストが伊藤テストと比較して有意に長かった。腰椎前弯角度及び仙骨傾斜角度に関しては,新テストが伊藤テストと比較して有意に小さく,胸椎後弯角度に関しては新テストが有意に大きかった。さらに,多裂筋及び最長筋の筋厚の差においても,新テストが伊藤テストと比較して有意に小さかった。

【結論】結果より,新テストは伊藤テストより腰椎の前弯角度や多裂筋・最長筋の収縮の軽減した状態での施行が可能である事が示唆された。従って,高齢者,中でも特に脊椎変形が著明な方や痛みなどにより身体機能が低下している方においての筋持久力評価テストとして,より適切に施行可能であると考える。また新テスト施行時の脊椎弯曲角度の変化が,伊藤テスト施行時と比較して少ない事から,より腰椎への負担を抑えての施行が可能であり,この点においても適切に筋持久力評価テストの施行が可能と思われる。