第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-20] ポスター(運動器)P20

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-20-4] パーキンソン病の固縮により両側尖足拘縮を呈し,手術療法を行った症例

岡本 辰二, 曽根 典法, 堀口 遥 (国家公務員共済組合連合会舞鶴共済病院)

キーワード:パーキンソン病, 尖足拘縮, 手術療法

【はじめに,目的】

近年,尖足に対しては薬物療法の報告は多い。一方,外科的治療は,薬物療法で変化が得られない患者に対し,最終的に選択される治療法とされる。しかし,われわれの調べた中では外科的治療の詳細な報告は無く,具体的な経過が不明である。今回,われわれはパーキンソン病により著明な両側尖足拘縮を呈し,手術療法を行い,介助歩行を獲得した症例を経験したので報告する。



【方法】

70代女性,パーキンソン病,意識清明,両上肢は大きな障害がなく,両足部に著明な内反尖足を呈した。ヤール分類I度(上肢の振戦-)。2014年末までは杖歩行可。この頃より,両側足関節変形が出現し,徐々に進行。2015年X-5ヶ月,外来リハビリ開始。左側重度の内反尖足,MMTは足関節2,その他下肢筋力4~5,動作能力として寝返り・起き上がりは一部介助,立ち上がり・立位は全介助,B.Iは15点。補高をした両側金属支柱付き短下肢装具を制作し,平行棒内歩行練習を開始。しかし,左足関節の荷重時痛が生じため,右下肢支持が中心の起立・移乗練習を進めた。その結果,平行棒内介助歩行レベルとなったが,両側足部の変形に改善は見られなかったため,同年X月左足関節形成術,X+1ヶ月右アキレス腱延長術を二期的に施行し理学療法を行った。



【結果】

X+2週:ギプスヒールを用いて部分荷重開始。X+4週:平行棒内歩行練習開始。X+1ヶ月:術翌日より両側ギプスにて全荷重開始。X+1ヶ月2週:両側金属支柱付きAFO装着下にてピックアップウォーカー使用し,見守りレベル。X+13ヶ月:左ROM 背屈-5°,MMT:著変なし,動作能力:寝返り・起き上がりは自立,立ち上がり・立位は見守りレベル,歩行はT字杖見守りにて約60m。自宅はピックアップウォーカーを使用。B.I:55点

【結論】

本症例は両側の著明な内反尖足により,立位をとれず,廃用をきたしていた。それに対して,装具を用いて積極的な理学療法を進めた。その結果,5ヶ月後には移乗動作までが可能となった。しかし,左下肢の支持性が問題となった。高橋らの報告によると,薬物療法や運動療法では効果が得られないようなパーキンソン病の二次的障害に対しては手術療法が効果的な場合もある,と述べている。本症例においても両側の手術療法を行った結果,両下肢とも支持性が改善し,歩行の獲得につながったと考える。歩行獲得できた他の要因としては,ヤール分類I,良好な認知機能,また足関節以外の機能が高く意欲もあった。手術までの5ヶ月間リハビリを行い,廃用の改善と下肢機能の回復を図ったこと,また変形の進行からリハビリ開始までの期間が3ヶ月と比較的短かったことが考えられる。

【理学療法領域における意義】

パーキンソン病による両足部の変形に対する手術療法の症例報告は極めて稀である。今後,同様の症例に対して役立つのではないかと考える。