第52回日本理学療法学術大会

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[P-MT-21] ポスター(運動器)P21

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-21-2] 人工股関節術前後での脊柱アライメント変化と腸腰筋のMRI筋断面積との関係

住田 尚史 (名古屋整形外科人工関節クリニック)

キーワード:人工股関節, 脊柱アライメント, 腸腰筋

【はじめに,目的】

変形性股関節症(以下,OA)は,Hip-Spine症候群で提唱されているように,脊柱と密接な関係があり,臼蓋形成不全由来のOAでは骨盤過前彎が原因で腰痛が高い確率で合併していると報告されている。一方で,人工股関節置換術(以下THA)の術後は骨盤が後傾する傾向があり,THA後,股関節痛,股関節屈曲拘縮は改善することで腰椎前彎由来の腰痛が軽減すると報告されている。当院先行研究にてTHA術後にて腸腰筋のMRIでの前額面上での筋断面積が増加することを報告したが,アライメントへの影響は考察されていない。そのため,本研究においてTHA術後の矢状面上でのアライメント変化による筋断面積と腰痛との改善程度の違いについて検討した。



【方法】

対象は,当院においてTHAを左右別々に両側施行した両側変形性股関節患者で23例とした。対象は女性21名,男性2名,平均年齢53.69±5.5歳,身長は158.0±7.1cm,体重は60.8±11.9kgであった。MRI撮影は初回THA術前時と反対側THA術前時に行い,筋断面積の測定位置は第4腰椎上縁とした。術前後でSacral slope angleが減少した骨盤後傾群(以下骨盤後傾群)とSSAが減少した骨盤前傾群(以下骨盤前傾群)に分類し,2群間にて統計的比較を行った。検討項目は,年齢,脊柱の矢状面上アライメント(Lumber lordosis angle(以下LLA),腰痛(VAS),健側,患側での股関節屈曲可動域,股関節伸展可動域,股関節屈曲筋力,股関節伸展筋力の術前後での変化量について比較した。股関節筋力測定はハンドヘルドダイナモメーター(アユマ社)を使用し,側臥位で股関節屈曲10°にて3回づつ測定し,最大値を採用した。統計は対応のないt検定を行ない,いずれも統計学的な有意差は5%未満とした。



【結果】

THA術前後において,腸腰筋左右筋断面積合計値は術前1099.5±445.2,術後1150.2±489.8と有意に増加し,SSAは術前41±9.9,術後39.9±7.7と有意に減少した。腰痛VASは術前29.7±25.8,術後
25.2±26.8と有意に減少した。一方で,骨盤前傾群と後傾群を群間比較し,各評価項目にて有意差は認められなかった。



【結論】

初回THA術前後において先行文献と同様に骨盤は後傾,腸腰筋の筋断面積は増加,腰痛も減少したがSSA,腰痛減少はわずかであった。一方でTHA術前後の骨盤前後傾の違いと腸腰筋の筋断面積,腰痛,股関節筋力可動域とは関係が認められなかった。先行文献にてTHA術後にはアライメントは変化し,腰痛は軽減すると報告されているが,アライメントが変化した要因として腸腰筋の筋力,筋断面積の増加には関係がなく,さらにアライメントの変化量がTHA術後の腰痛にも関連がないことがわかった。本研究では反対側のTHA施行前で股関節の疼痛が残存していることも,アライメント改善,腰痛の改善が少ない要因と考えられる。今後は両側THA施行後に脊柱アライメントと他の要因を調査し,術後腰痛の軽減因子を検討していく必要がある。