[P-MT-21-3] 人工股関節全置換術前後の下肢アライメントと外転筋力
Keywords:人工股関節全置換術, 下肢アライメント, 外転筋力
【はじめに,目的】
前回の報告では,coxitis kneeをあげ人工股関節全置換術(THA)術前後における術前後の膝アライメントの変化を調査し,術前は股関節痛や外転筋力低下が影響し膝に負担がかかっていたが,術後は脚長やオフセットの補正によって膝痛が軽減したと考えられた。今回は下肢アライメントと外転筋力の術前後の変化を調査した。
【対象】
2015年11月~2016年8月に当院整形外科で初回THAを施行した24例24股関節,女性19例,男性5例,平均年齢59.8歳(48~78歳)とした。平均身長157.2±8.1cm,平均体重59±9.8kg,BMI24±4.2,手術方法はDall法23例,Hardinge法1例であった。
【方法】
術前と術後4週のX線,CTから術側,非術側の大腿脛骨角(FTA):大腿骨軸と脛骨軸,術側大腿骨頸体角:頸部軸と骨幹部軸,前捻角:大腿骨頸軸と大腿骨両顆軸,術側オフセット長:大腿骨軸から大腿骨骨頭中心までの距離,脚長差:左右涙痕線下端を結ぶ垂線と小転子最長部の距離の差を測定した。
股関節外転筋力は,アイソフォースGT-300を使用し背臥位で等尺性収縮を3秒間,2回測定し最大値を採用し体重比を算出した。筋力と術側の膝痛の有無は,術前と術後4週で測定した。歩行機能は,10m歩行時間,TUGを術前と術後8週で測定した。統計解析は術前後の各項目において正規性を確認の上,Wilcoxon符合付順位検定を用い有意水準は5%未満とした。
【結果】
FTA(°)は術側術前176.2±2.9,術後176±2.4,非術側術前175.7±2.4,術後176.2±2.1,頸体角は術前135.9±9,術後134.4±5.8,前捻角(°)は術前26.4±12.3,術側オフセット長(mm)は術前35.9±6.5,術後39.2±5.4,脚長差は術前5.9±11.2,術後3.8±9.4,術後27.1±13.7,筋力(N/kg)は術側術前0.76±0.24,術後0.7±0.19,非術側術前0.85±0.22,術後0.85±0.28,10m歩行時間(s)は術前12.5±11.9,術後10.7±2.2,TUG(s)は術前12.1±6.1,術後11.1±2でありオフセット長(P<0.01)と脚長差(P<0.01)に有意差がみられた。膝痛は術側術前11例(45.8%),術後6例(25.0%),非術側術前6例(25%),術後4例(16.6%)にみられた。
【結論】
股関節は体幹と下肢を連結させる荷重関節であり,下肢荷重軸は骨頭中心から膝関節中心,足関節中心を通り,股関節周囲筋群,腸脛靭帯の筋緊張により安定化が図られる。大腿骨は頸体角で外側にオフセットされ股関節内,外転筋を効率よく配置しているとされている。術前の頸体角や前捻角の拡大あるいは縮小,オフセット長の減少が外転筋力低下だけではなく,筋が短縮し張力を失い筋力を発揮できず股関節の安定性に寄与できず膝に負担がかかっているのではないかと考えられる。脚長やオフセット長が有意に補正され膝痛が軽減されたが外転筋力に変化がみられなかった。効率的に筋力が発揮されるために筋力だけではなく下肢のアライメントを意識して理学療法をすすめる必要があると考えられる。
前回の報告では,coxitis kneeをあげ人工股関節全置換術(THA)術前後における術前後の膝アライメントの変化を調査し,術前は股関節痛や外転筋力低下が影響し膝に負担がかかっていたが,術後は脚長やオフセットの補正によって膝痛が軽減したと考えられた。今回は下肢アライメントと外転筋力の術前後の変化を調査した。
【対象】
2015年11月~2016年8月に当院整形外科で初回THAを施行した24例24股関節,女性19例,男性5例,平均年齢59.8歳(48~78歳)とした。平均身長157.2±8.1cm,平均体重59±9.8kg,BMI24±4.2,手術方法はDall法23例,Hardinge法1例であった。
【方法】
術前と術後4週のX線,CTから術側,非術側の大腿脛骨角(FTA):大腿骨軸と脛骨軸,術側大腿骨頸体角:頸部軸と骨幹部軸,前捻角:大腿骨頸軸と大腿骨両顆軸,術側オフセット長:大腿骨軸から大腿骨骨頭中心までの距離,脚長差:左右涙痕線下端を結ぶ垂線と小転子最長部の距離の差を測定した。
股関節外転筋力は,アイソフォースGT-300を使用し背臥位で等尺性収縮を3秒間,2回測定し最大値を採用し体重比を算出した。筋力と術側の膝痛の有無は,術前と術後4週で測定した。歩行機能は,10m歩行時間,TUGを術前と術後8週で測定した。統計解析は術前後の各項目において正規性を確認の上,Wilcoxon符合付順位検定を用い有意水準は5%未満とした。
【結果】
FTA(°)は術側術前176.2±2.9,術後176±2.4,非術側術前175.7±2.4,術後176.2±2.1,頸体角は術前135.9±9,術後134.4±5.8,前捻角(°)は術前26.4±12.3,術側オフセット長(mm)は術前35.9±6.5,術後39.2±5.4,脚長差は術前5.9±11.2,術後3.8±9.4,術後27.1±13.7,筋力(N/kg)は術側術前0.76±0.24,術後0.7±0.19,非術側術前0.85±0.22,術後0.85±0.28,10m歩行時間(s)は術前12.5±11.9,術後10.7±2.2,TUG(s)は術前12.1±6.1,術後11.1±2でありオフセット長(P<0.01)と脚長差(P<0.01)に有意差がみられた。膝痛は術側術前11例(45.8%),術後6例(25.0%),非術側術前6例(25%),術後4例(16.6%)にみられた。
【結論】
股関節は体幹と下肢を連結させる荷重関節であり,下肢荷重軸は骨頭中心から膝関節中心,足関節中心を通り,股関節周囲筋群,腸脛靭帯の筋緊張により安定化が図られる。大腿骨は頸体角で外側にオフセットされ股関節内,外転筋を効率よく配置しているとされている。術前の頸体角や前捻角の拡大あるいは縮小,オフセット長の減少が外転筋力低下だけではなく,筋が短縮し張力を失い筋力を発揮できず股関節の安定性に寄与できず膝に負担がかかっているのではないかと考えられる。脚長やオフセット長が有意に補正され膝痛が軽減されたが外転筋力に変化がみられなかった。効率的に筋力が発揮されるために筋力だけではなく下肢のアライメントを意識して理学療法をすすめる必要があると考えられる。