[P-MT-23-4] 人工膝関節全置換術症例における術後3ヶ月までの大腿四頭筋筋力の継時的変化
術前機能獲得日数に着目して
Keywords:TKA, 術前機能, 術後1ヶ月
【はじめに,目的】
人工膝関節全置換術(TKA)は重篤な変形性膝関節症患者に対して疼痛除去と運動機能の再建,ADL,QOLなどの改善を目的として施行される。TKA術後の理学療法(PT)では,術前機能獲得日数を可及的に短縮することがADLやQOLの改善に重要である。特にTKA術後の機能回復において,各種の運動機能との相関が高い大腿四頭筋筋力の回復が重要とされる。本研究の目的は,PTを施行したTKA術後症例における大腿四頭筋筋力の回復時期と要因を明らかにし,より効果的なPTプログラム立案の一助とすることである。
【方法】
対象は,平成27年1月から平成28年5月までに当院にてTKAを施行した25例のうち,データ欠損のない13例14膝(男性3例,女性10例,平均年齢73±8.1歳)とした。評価項目は,主項目として大腿四頭筋筋力,副項目としてCRP値,ROM(膝伸展・屈曲),筋力(股外転・膝屈曲),10m歩行,KOOSとした。評価時期は,術前,術後2週(2W),術後1ヶ月(1M),術後3ヶ月(3M)とした。統計解析は,術前から3Mまでの継時的変化の比較にFriedman検定,事後検定にBonferroni検定を用いた。さらに,大腿四頭筋筋力と各項目(KOOS以外)の改善率の関連性についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
大腿四頭筋筋力と膝屈曲ROMは,術前と比べ2Wで有意に低下したが1Mで有意差はなく,2Wから1Mの間で改善した。CRP値は術前と比べ2Wおよび1Mで有意に上昇したが,1Mで2Wに比べ有意に低下した。膝伸展ROMは術前と比べ2Wで有意差はなく,1Mで術前より有意に改善した。股外転筋力および歩行速度は,術前と比べ2Wで有意差はなく,3Mで術前より有意に改善した。KOOSは,症状,こわばり,痛み,ADLにおいて術前と1Mで有意差はなく,3Mで術前より有意に改善した。QOLは1Mで術前より有意に改善し,1Mと3Mでは有意に3Mが改善した。2Wから1Mまでの大腿四頭筋筋力改善率と膝屈曲ROM改善率(r=0.55,p<0.05),膝伸展ROM改善率(r=0.61,p<0.05),股外転筋力改善率(r=0.68,p<0.05),歩行速度改善率(r=0.70,p<0.05)に正の相関が認められた。CRP値に有意な相関は認められなかった。
【結論】
PTを施行したTKA術後症例における大腿四頭筋筋力の回復は2Wから1Mの間で生じることが確認された。さらに,大腿四頭筋筋力の回復には2Wから1Mにおける膝屈曲・伸展ROMと股関節外転筋力の改善率が関連していた。すなわち,膝関節の柔軟性および骨盤の安定性向上が大腿四頭筋筋力の回復に関連し,これらの相乗効果により歩行速度やADL,QOLの改善に繋がる可能性が示唆された。
人工膝関節全置換術(TKA)は重篤な変形性膝関節症患者に対して疼痛除去と運動機能の再建,ADL,QOLなどの改善を目的として施行される。TKA術後の理学療法(PT)では,術前機能獲得日数を可及的に短縮することがADLやQOLの改善に重要である。特にTKA術後の機能回復において,各種の運動機能との相関が高い大腿四頭筋筋力の回復が重要とされる。本研究の目的は,PTを施行したTKA術後症例における大腿四頭筋筋力の回復時期と要因を明らかにし,より効果的なPTプログラム立案の一助とすることである。
【方法】
対象は,平成27年1月から平成28年5月までに当院にてTKAを施行した25例のうち,データ欠損のない13例14膝(男性3例,女性10例,平均年齢73±8.1歳)とした。評価項目は,主項目として大腿四頭筋筋力,副項目としてCRP値,ROM(膝伸展・屈曲),筋力(股外転・膝屈曲),10m歩行,KOOSとした。評価時期は,術前,術後2週(2W),術後1ヶ月(1M),術後3ヶ月(3M)とした。統計解析は,術前から3Mまでの継時的変化の比較にFriedman検定,事後検定にBonferroni検定を用いた。さらに,大腿四頭筋筋力と各項目(KOOS以外)の改善率の関連性についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
大腿四頭筋筋力と膝屈曲ROMは,術前と比べ2Wで有意に低下したが1Mで有意差はなく,2Wから1Mの間で改善した。CRP値は術前と比べ2Wおよび1Mで有意に上昇したが,1Mで2Wに比べ有意に低下した。膝伸展ROMは術前と比べ2Wで有意差はなく,1Mで術前より有意に改善した。股外転筋力および歩行速度は,術前と比べ2Wで有意差はなく,3Mで術前より有意に改善した。KOOSは,症状,こわばり,痛み,ADLにおいて術前と1Mで有意差はなく,3Mで術前より有意に改善した。QOLは1Mで術前より有意に改善し,1Mと3Mでは有意に3Mが改善した。2Wから1Mまでの大腿四頭筋筋力改善率と膝屈曲ROM改善率(r=0.55,p<0.05),膝伸展ROM改善率(r=0.61,p<0.05),股外転筋力改善率(r=0.68,p<0.05),歩行速度改善率(r=0.70,p<0.05)に正の相関が認められた。CRP値に有意な相関は認められなかった。
【結論】
PTを施行したTKA術後症例における大腿四頭筋筋力の回復は2Wから1Mの間で生じることが確認された。さらに,大腿四頭筋筋力の回復には2Wから1Mにおける膝屈曲・伸展ROMと股関節外転筋力の改善率が関連していた。すなわち,膝関節の柔軟性および骨盤の安定性向上が大腿四頭筋筋力の回復に関連し,これらの相乗効果により歩行速度やADL,QOLの改善に繋がる可能性が示唆された。