[P-MT-26-1] 大腿骨近位部骨折術後患者における歩行再獲得の予測因子
地域連携パスデータを利用した検討
Keywords:地域連携パス, 大腿骨近位部骨折, 歩行再獲得
【はじめに,目的】
大腿骨近位部骨折術後患者の歩行再獲得は,ADLや生存率に影響を及ぼすとされる。年齢,骨折型,認知機能,受傷前のADL状況が,歩行再獲得に影響を与える因子であることが数多く報告されているが,その具体的なカットオフ値を求めた報告は少ない。本研究の目的は,大腿骨近位部骨折地域連携パス北九州標準モデルを用いて,受傷前・急性期病院退院時(急性期退院時)の各因子から回復期病院等退院時(回復期退院時)の歩行再獲得を予測する因子を求め,そのカットオフ値を明らかにすることである。
【方法】
2011年8月から2016年8月の間に地域連携パスを利用した3341名のうち,急性期病院,回復期病院双方から事務局へ情報が送信され,かつ受傷前より歩行可能であった811名のデータを解析した。本研究での歩行の定義は,伝い歩き,歩行器歩行,杖歩行,独歩とし,対象者を回復期退院時の歩行獲得の可否で再獲得群と未獲得群の2群に分類した。調査項目は地域連携パスデータより得られる年齢,性別,手術待機日数,骨折型,受傷前・急性期退院時それぞれのBarthel Index(BI),長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)とした。統計解析は,歩行の可否を従属変数,調査項目すべてを独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行い,抽出された項目は,ROC解析にてカットオフ値を求めた。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
回復期退院時の再獲得群は615名(75.8%),未獲得群は196名(24.2%)であった。多重ロジスティック回帰分析より,回復期退院時の歩行再獲得に影響を与える因子として,年齢,受傷前BI,急性期退院時のBIとHDS-Rが抽出された。それぞれのオッズ比は,年齢0.97(p<0.01),受傷前BI 1.01(p<0.05),急性期退院時BI 1.03(p<0.01),急性期退院時HDS-R 1.04(p<0.01),カットオフ値は,年齢86.5歳(感度54.6%,特異度68.1%,p<0.01),受傷前BI 77.5点(感度51.5%,特異度79.8%,p<0.01),急性期退院時BI 42.5点(感度61.2%,特異度77.1%,p<0.01),急性期退院時HDS-R 19.5点(感度71.9%,特異度64.9%,p<0.01)であった。
【結論】
今回,大腿骨近位部骨折地域連携パス北九州標準モデルを用いて,大腿骨近位部骨折患者における回復期退院時の歩行再獲得の予測因子を,受傷前・急性期退院時の因子から抽出し,カットオフ値を求めることができた。これらのカットオフ値を満たさない項目が多い症例では,急性期・回復期病院双方においてより予後を考慮した理学療法の内容の検討が重要と考える。本研究の限界は,対象者に選択バイアスが生じている可能性があることと歩行可否の判断に理学療法士の主観的な要素が影響していることである。
大腿骨近位部骨折術後患者の歩行再獲得は,ADLや生存率に影響を及ぼすとされる。年齢,骨折型,認知機能,受傷前のADL状況が,歩行再獲得に影響を与える因子であることが数多く報告されているが,その具体的なカットオフ値を求めた報告は少ない。本研究の目的は,大腿骨近位部骨折地域連携パス北九州標準モデルを用いて,受傷前・急性期病院退院時(急性期退院時)の各因子から回復期病院等退院時(回復期退院時)の歩行再獲得を予測する因子を求め,そのカットオフ値を明らかにすることである。
【方法】
2011年8月から2016年8月の間に地域連携パスを利用した3341名のうち,急性期病院,回復期病院双方から事務局へ情報が送信され,かつ受傷前より歩行可能であった811名のデータを解析した。本研究での歩行の定義は,伝い歩き,歩行器歩行,杖歩行,独歩とし,対象者を回復期退院時の歩行獲得の可否で再獲得群と未獲得群の2群に分類した。調査項目は地域連携パスデータより得られる年齢,性別,手術待機日数,骨折型,受傷前・急性期退院時それぞれのBarthel Index(BI),長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)とした。統計解析は,歩行の可否を従属変数,調査項目すべてを独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行い,抽出された項目は,ROC解析にてカットオフ値を求めた。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
回復期退院時の再獲得群は615名(75.8%),未獲得群は196名(24.2%)であった。多重ロジスティック回帰分析より,回復期退院時の歩行再獲得に影響を与える因子として,年齢,受傷前BI,急性期退院時のBIとHDS-Rが抽出された。それぞれのオッズ比は,年齢0.97(p<0.01),受傷前BI 1.01(p<0.05),急性期退院時BI 1.03(p<0.01),急性期退院時HDS-R 1.04(p<0.01),カットオフ値は,年齢86.5歳(感度54.6%,特異度68.1%,p<0.01),受傷前BI 77.5点(感度51.5%,特異度79.8%,p<0.01),急性期退院時BI 42.5点(感度61.2%,特異度77.1%,p<0.01),急性期退院時HDS-R 19.5点(感度71.9%,特異度64.9%,p<0.01)であった。
【結論】
今回,大腿骨近位部骨折地域連携パス北九州標準モデルを用いて,大腿骨近位部骨折患者における回復期退院時の歩行再獲得の予測因子を,受傷前・急性期退院時の因子から抽出し,カットオフ値を求めることができた。これらのカットオフ値を満たさない項目が多い症例では,急性期・回復期病院双方においてより予後を考慮した理学療法の内容の検討が重要と考える。本研究の限界は,対象者に選択バイアスが生じている可能性があることと歩行可否の判断に理学療法士の主観的な要素が影響していることである。