The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-26] ポスター(運動器)P26

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-26-4] 大腿骨近位部骨折患者における急性期病院退院時の日常生活動作能力予測に適した栄養スクリーニングの検討

井上 達朗1,2, 三栖 翔吾2,3, 田中 利明1, 筧 哲也1, 三坂 恵1, 垣内 優芳1, 渡 彩夏1, 小野 玲2 (1.西神戸医療センター, 2.神戸大学大学院保健学研究科, 3.神戸市立医療センター西市民病院)

Keywords:大腿骨近位部骨折, 栄養, Mini Nutritional Assessment-Short Form

【はじめに,目的】

本邦では高齢化に伴い大腿骨近位部骨折患者は増加傾向にある。大腿骨近位部骨折患者において,急性期病院退院時Activity of Daily Living(以下ADL)が退院後1年の死亡率を予測するとの報告があり,急性期病院でのADL改善は重要である。また,近年,栄養状態が術後ADLを予測すると報告され,早期の栄養スクリー二ングと適切な介入が推奨されている。欧州臨床栄養・代謝学会は栄養スクリーニング方法としてMini Nutritional Assessment-Short Form(以下MNA-SF),Malnutrition Universal Screening Tool(以下MUST),Nutritional Risk Screening-2002(以下NRS-2002)を推奨しているが,アルブミン値と体重を計算式に用いたGeriatric Nutritional Risk Index(以下GNRI)等の方法もあり,どの方法がADLの予測に適しているかを比較検討した報告は未だみられない。本研究の目的は,上記4つの栄養スクリーニング方法から急性期病院退院時ADLの予測に適した方法を比較検討する事とした。

【方法】

対象は転倒により受傷し急性期病院に入院した大腿骨近位部骨折患者とした。除外基準は保存療法選択,受傷前歩行不可,術後荷重制限例とした。全対象者に対して入院時のMNA-SF,MUST,NRS-2002,GNRIを評価し,それぞれの方法において栄養良好群・リスク群・低栄養群の3群に対象者を分類した。退院時ADLはFunctional Independence Measure(以下FIM)運動項目を用いて評価した。統計解析は退院時FIM運動項目を目的変数,各スクリーニング方法によるグループを説明変数とした重回帰分析を,それぞれの方法ごとに実施した(MNA-SF model,MUST model,NRS-2002 model,GNRI modelの4つのモデルを作成した)。各モデルにおいて,交絡変数として先行研究より年齢,性別,骨折から手術までの日数,受傷前歩行能力,握力,下腿周径,併存疾患を強制投入した。



【結果】

解析対象者は205名で平均年齢は83.5±7.0歳,在院日数中央値は23日であった。MNA-SF,MUST,NRS-2002,GNRIの順に栄養良好群27.3%,47.3%,43.4%,21.5%,リスク群50.2%,20.5%,33.7%,36.1%,低栄養群22.5%,32.2%,22.9%,42.4%であった。重回帰分析の結果,MNA-SFのみが退院時FIM運動項目と有意に関連していた(良好群 vs リスク群 β=-0.09,P<0.05,良好群 vs 低栄養群 β=-0.39,P<0.05,R2=0.53)。

【結論】

本研究において,術後大腿骨近位部骨折患者の急性期病院退院時ADLの予測には,MNA-SFが適している事が示唆された。BMIや体重減少,アルブミン値という身体特性のみを用いて評価する他のスクリーニング方法と比較し,MNA-SFは認知機能や歩行能力が評価内容として含まれており,より包括的なスクリーニング方法であることから,退院時ADLの予測に有用であったと考える。