[P-MT-27-1] 異常運動の制動が関節軟骨に与える組織学的影響
Keywords:変形性膝関節症, 非生理的運動, 関節制動
【はじめに,目的】
変形性膝関節症は,肥満や加齢,力学的負荷など多くの誘因によって発症する多因子疾患である。その有症状患者数の多さから,膝OAの発症予防や進行防止を目的とした治療の確立は急務である。近年,OARSIを発端に,膝OAをtype分類し,各typeに合わせた保存療法の展開が進められている。また力学的観点においてもKAMを始めとした,膝OAの進行因子の特定が進められており,膝OAに対する運動療法は研究的背景においては徐々に進歩している。しかしながら,このような背景にもかかわらず臨床場面では,変形の程度や変形に伴う非生理的運動を考慮せず,漫然と理学療法が実施されているのが現状であり,その治療効果に関しても明確になっていない。そこで本研究では,膝関節内外側の応力不均衡や非生理的な運動軸形成等に伴う,異常な関節運動で生じた力学的負荷が,関節軟骨の変性や破壊を惹起し,膝OAの発症,進行に作用する点に着目し,異常運動の制動の有無が大腿骨内側関節面に与える影響を組織学的に検討し,膝OAに対する運動療法再考の一助を得ることを目的とした。
【方法】
Wister系雄性ラット9匹をランダムにcontrol群,ACL-T群,関節制動(controlled abnormal movement:CAM)群に分類した。術後よりトレッドミルにて運動負荷を与え,術後1Wにて各群より大腿骨を採取し,パラフィン切片を作成した。Safranin Oによる染色後,顕微鏡にて大腿骨内側顆関節面の関節軟骨の変性,破壊の程度をOARSI Gradeを元に巨視的に観察・評価した。
【結果】
CAM群における関節軟骨は滑らかな表面を保ち,基質の破壊像や欠損像は見られずに,表面の連続性が保たれていた(Grade1)。一方で,著明な変化は認められなかったもののACL-T群においては,局所的に関節軟骨表層の脱落が見られ関節軟骨表層の連続性が断たれた(Grade2)変化が見られた。
【結論】
ACL-Tにおけるラット膝OAモデルでは,その進行過程がmildであるとされている背景があり,本研究においても,術後1W時点でのACL-T群における関節軟骨の変化は局所的な関節軟骨の変性であり,OAの初期変化であると推察された。一方で,関節内異常運動を制動したCAM群においては関節軟骨は滑らかな形状を保ち,関節軟骨の連続性が確認されたことからOAにおける関節軟骨の変性所見は認められなかった。本研究においては各群に同様の運動負荷を与えたことを考慮すると,CAM群においてはACL切除に伴う異常運動が制動されたことが,関節軟骨の変性を抑制に寄与した可能性が考えられた。lateral thrustの様な関節内異常運動による異常な力学的負荷の増大が,膝OAの発症・進行に寄与する誘因の1つであることを考慮すると,膝OAにおける理学療法においては,より生理的な関節運動を考慮した質的観点からの介入が重要である可能性が示唆された。
変形性膝関節症は,肥満や加齢,力学的負荷など多くの誘因によって発症する多因子疾患である。その有症状患者数の多さから,膝OAの発症予防や進行防止を目的とした治療の確立は急務である。近年,OARSIを発端に,膝OAをtype分類し,各typeに合わせた保存療法の展開が進められている。また力学的観点においてもKAMを始めとした,膝OAの進行因子の特定が進められており,膝OAに対する運動療法は研究的背景においては徐々に進歩している。しかしながら,このような背景にもかかわらず臨床場面では,変形の程度や変形に伴う非生理的運動を考慮せず,漫然と理学療法が実施されているのが現状であり,その治療効果に関しても明確になっていない。そこで本研究では,膝関節内外側の応力不均衡や非生理的な運動軸形成等に伴う,異常な関節運動で生じた力学的負荷が,関節軟骨の変性や破壊を惹起し,膝OAの発症,進行に作用する点に着目し,異常運動の制動の有無が大腿骨内側関節面に与える影響を組織学的に検討し,膝OAに対する運動療法再考の一助を得ることを目的とした。
【方法】
Wister系雄性ラット9匹をランダムにcontrol群,ACL-T群,関節制動(controlled abnormal movement:CAM)群に分類した。術後よりトレッドミルにて運動負荷を与え,術後1Wにて各群より大腿骨を採取し,パラフィン切片を作成した。Safranin Oによる染色後,顕微鏡にて大腿骨内側顆関節面の関節軟骨の変性,破壊の程度をOARSI Gradeを元に巨視的に観察・評価した。
【結果】
CAM群における関節軟骨は滑らかな表面を保ち,基質の破壊像や欠損像は見られずに,表面の連続性が保たれていた(Grade1)。一方で,著明な変化は認められなかったもののACL-T群においては,局所的に関節軟骨表層の脱落が見られ関節軟骨表層の連続性が断たれた(Grade2)変化が見られた。
【結論】
ACL-Tにおけるラット膝OAモデルでは,その進行過程がmildであるとされている背景があり,本研究においても,術後1W時点でのACL-T群における関節軟骨の変化は局所的な関節軟骨の変性であり,OAの初期変化であると推察された。一方で,関節内異常運動を制動したCAM群においては関節軟骨は滑らかな形状を保ち,関節軟骨の連続性が確認されたことからOAにおける関節軟骨の変性所見は認められなかった。本研究においては各群に同様の運動負荷を与えたことを考慮すると,CAM群においてはACL切除に伴う異常運動が制動されたことが,関節軟骨の変性を抑制に寄与した可能性が考えられた。lateral thrustの様な関節内異常運動による異常な力学的負荷の増大が,膝OAの発症・進行に寄与する誘因の1つであることを考慮すると,膝OAにおける理学療法においては,より生理的な関節運動を考慮した質的観点からの介入が重要である可能性が示唆された。