[P-MT-27-2] 変形性膝関節症における膝伸展筋力の増加と筋内健アーチ率の減少について
Keywords:変形性膝関節症, 超音波, 筋内腱
【はじめに,目的】
大腿直筋の筋内腱は超音波短軸像上でcomma shaped hyperechoic bandと呼ばれる弧形(アーチ)として描出できる。我々はこれまでに横断的な調査で,健常成人では筋収縮で筋内腱のアーチが直線に変化し,収縮時のアーチが少ないほど筋力が高いことを報告した。しかし,筋内腱の形態変化が筋力の変化に対応するかは明らかになっていない。そこで,本研究は変形性膝関節症患者を対象に筋力トレーニングで筋内腱の形態が変化するかを検証した。
【方法】
対象はKellgren-Lawrence分類IIの変形性膝関節症患者12名16肢(Mean±SD;72±13歳,156.3±10.9cm,65.0±11.7kg,以下OA肢)であった。対象者は筋力トレーニングとしてstraight leg raising運動(以下,SLR)を1日5秒×20回,1ヵ月間実施した。SLR前後で超音波画像診断装置(日立,HI VISION AVIUS)を用いた大腿直筋の撮像をした。観察部位は下前腸骨棘と膝蓋骨を結ぶ線の中点,観察肢位は股関節・膝関節90°屈曲位の椅子座位とし,骨盤・大腿遠位部をベルトで固定した。プローブは皮膚面に垂直に当て,短軸像を撮影した。筋内腱の同定ではプローブを上下方向に動かし,連続性を確認して行った。超音波による観察は筋力測定(Musculator GT30,OG技研)に同期させ,安静時と等尺性膝伸展最大筋力発揮中の動画を3回ずつ記録した。得られた超音波画像から筋内腱前方端と後方端の距離(A)に対する筋内腱のカーブの頂点からAに降ろした垂線の距離(B)の比B/A(アーチ率:%)および筋厚を測定した。統計学的検討では3回測定の平均値を用いた。介入前後の膝伸展筋力,安静時アーチ率,安静時筋厚,収縮時筋厚を比較するために対応のあるt検定,収縮時アーチ率を比較するためにWilcoxonの符号付き順位検定を行った。解析ソフトはSPSS 22を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
OA肢では,膝伸展筋力はSLR前19.7±7.5kgとSLR後22.5±10.2kg,収縮時アーチ率はSLR前7.6±6.0%とSLR後3.5±5.1%であり,いずれも有意差を認めた(p<0.05)。安静時アーチ率,安静時筋厚,収縮時筋厚はSLR前後で有意差を認めなかった。
【結論】
SLRにより膝伸展筋力の増加と収縮時アーチ率の減少を認め,筋力トレーニングによる筋内腱の形態変化を明らかにした。本研究では有意な筋厚の増大は認められず,介入期間が1ヵ月であったことから筋肥大は生じていないと考えた。したがって筋内腱の観察は筋肥大とは異なる筋力増強メカニズムを反映する可能性があり,新しい筋機能評価の一助となると考える。
大腿直筋の筋内腱は超音波短軸像上でcomma shaped hyperechoic bandと呼ばれる弧形(アーチ)として描出できる。我々はこれまでに横断的な調査で,健常成人では筋収縮で筋内腱のアーチが直線に変化し,収縮時のアーチが少ないほど筋力が高いことを報告した。しかし,筋内腱の形態変化が筋力の変化に対応するかは明らかになっていない。そこで,本研究は変形性膝関節症患者を対象に筋力トレーニングで筋内腱の形態が変化するかを検証した。
【方法】
対象はKellgren-Lawrence分類IIの変形性膝関節症患者12名16肢(Mean±SD;72±13歳,156.3±10.9cm,65.0±11.7kg,以下OA肢)であった。対象者は筋力トレーニングとしてstraight leg raising運動(以下,SLR)を1日5秒×20回,1ヵ月間実施した。SLR前後で超音波画像診断装置(日立,HI VISION AVIUS)を用いた大腿直筋の撮像をした。観察部位は下前腸骨棘と膝蓋骨を結ぶ線の中点,観察肢位は股関節・膝関節90°屈曲位の椅子座位とし,骨盤・大腿遠位部をベルトで固定した。プローブは皮膚面に垂直に当て,短軸像を撮影した。筋内腱の同定ではプローブを上下方向に動かし,連続性を確認して行った。超音波による観察は筋力測定(Musculator GT30,OG技研)に同期させ,安静時と等尺性膝伸展最大筋力発揮中の動画を3回ずつ記録した。得られた超音波画像から筋内腱前方端と後方端の距離(A)に対する筋内腱のカーブの頂点からAに降ろした垂線の距離(B)の比B/A(アーチ率:%)および筋厚を測定した。統計学的検討では3回測定の平均値を用いた。介入前後の膝伸展筋力,安静時アーチ率,安静時筋厚,収縮時筋厚を比較するために対応のあるt検定,収縮時アーチ率を比較するためにWilcoxonの符号付き順位検定を行った。解析ソフトはSPSS 22を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
OA肢では,膝伸展筋力はSLR前19.7±7.5kgとSLR後22.5±10.2kg,収縮時アーチ率はSLR前7.6±6.0%とSLR後3.5±5.1%であり,いずれも有意差を認めた(p<0.05)。安静時アーチ率,安静時筋厚,収縮時筋厚はSLR前後で有意差を認めなかった。
【結論】
SLRにより膝伸展筋力の増加と収縮時アーチ率の減少を認め,筋力トレーニングによる筋内腱の形態変化を明らかにした。本研究では有意な筋厚の増大は認められず,介入期間が1ヵ月であったことから筋肥大は生じていないと考えた。したがって筋内腱の観察は筋肥大とは異なる筋力増強メカニズムを反映する可能性があり,新しい筋機能評価の一助となると考える。