The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-28] ポスター(運動器)P28

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-28-1] 大腿骨近位部骨折術後における早期転帰先決定因子の検討
自宅退院群とリハビリ目的転院群を比較して

櫻井 進一1, 岩田 瞳1, 小椋 慶子2, 佐藤 俊1, 金井 優作2, 荻原 裕輔3, 小泉 みちる2, 中澤 織恵2, 宮森 拓真2, 神園 索己1, 依田 英樹1, 市川 彰2 (1.佐久総合病院佐久医療センター, 2.佐久総合病院, 3.佐久総合病院小海分院)

Keywords:大腿骨近位部骨折, 早期自宅退院, 予測

【はじめに】

近年,地域完結型医療モデルへの転換の中で急性期病院における在院日数の短縮化が進んでいる。大腿骨近位部骨折術後においても,急性期病院から自宅退院できる症例や転院して理学療法を継続すべき症例の予知因子を早期から明らかにする必要があり,当院でも転帰先決定までは術後10日程度の猶予しかない。過去にも予後予測に年齢や,病前歩行能力等が報告されているが,在院日数は4週前後のものが多く,より短い在院日数での予測因子の検討が必要である。そこで,術後約2週で自宅退院可能な群(自宅群)とリハビリ目的で転院した群(転院群)の基本的属性,特に歩行能力に注目した術後経過などを比較し,転帰先を早期に判断する要因を分析することを目的とした。


【方法】

対象:2014年3月から2015年12月に大腿骨近位部骨折に対する手術後に理学療法を実施した65歳以上の症例について後方視的に調査し,データ欠損例と除外基準①~⑤に該当するものを除いた47例を対象とした(①術後他疾患を合併,②中枢神経疾患の既往有,③住居が自宅以外,④転帰先が福祉施設や療養目的等の転院,⑤受傷前から歩行不可)。自宅群は11例(77.6歳),転院群は36例(84.4歳)であり,2群間で下記項目の比較を行った。

検討項目:1)基本情報:年齢,性別,在院日数,骨折分類(頚部/転子部),術式(人工骨頭/内固定術),荷重制限有無,2)術後PT状況:手術~離床,~歩行練習開始,~病棟内歩行開始までの各日数,術後1週時の歩行練習状況(杖以上/歩行器以下),病棟内歩行の可不可。尚,人工骨頭置換術は前側方侵入で筋切離を行わない方法である。

統計学的検討には,t-test,Wilcoxson順位和検定,χ2検定を使用した。統計処理にはJMP12.0を用い危険率5%未満を有意とした。

【結果】

自宅群と転院群の比較では,1)基本情報:年齢(p<0.05),骨折分類(p<0.05),荷重制限有無(p<0.01)で有意差を認め,自宅群が若年で頚部骨折,荷重制限有が多かった。2)術後PT状況:術後1週時の歩行練習状況(p<0.01),病棟内歩行可不可(p<0.01)で有意差を認め,自宅群で杖歩行以上の練習を行い,病棟での歩行可能なものが多かった。


【結論】

近年は,頚部骨折への人工骨頭置換術にて低侵襲な前方侵入法が普及していること,また転子部骨折では中臀筋機能に与える影響が大きいためなど,頚部骨折の予後が良好という報告もあり,本研究も同様の結果であった。また,医師が免荷指示を行う場合,予め対象者の身体・認知機能面を考慮し指示を守れるかを判断しているという事実もあり,より医師との情報交換を積極的に行う必要性も確認された。また,術後1週時の歩行能力が予後予測指標となるとの報告は散見されるが,今回の結果からは歩行の練習状況も予後予測につながると考えられた。しかし,本研究においては各結果の考察に必要な運動機能等の詳細評価が行えていないため今後の課題である。