[P-MT-28-3] 大腿部悪性軟部肉腫により大腿四頭筋全切除術を施行された症例に対する装具療法の実際
Keywords:大腿部軟部肉腫, 膝折れ, 装具
【はじめに,目的】
悪性軟部肉腫は皮下組織や筋肉などの軟部組織に発生し,治療は広範切除術を基本とし,骨浸潤を認める場合は切断となる事もある。最近では安全な切除縁を確保するため,血管や神経の連続性を保ったまま切除し,組織浸潤を評価したうえで範囲を決定するIn situ preparation(ISP)法が行われている。どの方法であっても術後リハビリ(リハ)は必須となるが大腿部悪性軟部肉腫術後のリハ報告は少ない。
今回,大腿部軟部腫肉腫に対しISP法により大腿四頭筋全切除を施行された症例を担当した。術後膝関節固定制限,膝折れや二次的障害の予防,応用歩行の獲得を含めたリハ内容,および装具対応について報告する。
【方法】
50歳女性。2015年8月,右膝関節の運動時痛出現。11月,当院整形外科で切開生検施行,悪性軟部肉腫と診断。2016年1月,ISP法施行。大腿から脛骨結節まで皮切し,大腿骨を骨切り,腫瘍とともに大腿骨を挙上,大腿四頭筋と大腿骨骨膜を切除,大腿骨はプレート固定された。腫瘍切除部は広背筋を採取,筋皮弁施行され,翌日よりリハ開始。
【結果】
リハ開始時は免荷で,筋皮弁生着,血流確保のため膝関節は伸展位にシーネ固定されROM練習も禁止であった。そのため健側筋力強化や全身調整運動を主に行った。術後12日に部分荷重・歩行訓練許可となるが,整形外科医より一度の転倒でもプレート固定部の安定性確保が困難であるため荷重時の膝関節屈伸運動は禁止とされ,固定用膝装具が必要となった。当初はニーブレースを考えたが,固定期間が長期に及ぶと言われていたため在宅でも使用可能で,かつ膝折れに強固に対応できる両側金属支柱付き硬性膝装具を選択した。さらに今後,歩行や立ち仕事が行いやすい角度に調整できるよう膝継手はダイヤルロックを選択した。その後,膝関節固定位での歩行が可能となり自宅退院となった。
退院1ヶ月後,化学療法目的で再入院,荷重位での膝関節屈伸動作が許可されたが。膝をロックしなければ立脚支持が困難であった。オフセット継ぎ手への変更を検討したが,在宅時の階段昇降,坂道歩行時に膝関節固定位では不便であったとの訴えがあった。さらに年齢も若く活動性も高い事から反張膝の危険性も考えられ,オフセットでは不十分と判断した。そのため軽度の膝関節屈伸を許し,かつ屈伸最終可動域に強固な固定性を有する膝継ぎ手として,ダイヤルロックの最終伸展時,屈曲25度までの調整ネジホール間を刳り貫き,連結させる事で遊動性と固定性を確保した。
筋力強化を行い,荷重時の膝関節屈曲位からの伸展運動を反復練習し,坂道歩行,階段昇降練習を行った。その後1足1段での階段昇降,坂道も違和感なく可能となり,自宅復帰となった。
【結論】
機能障害だけでなく安静度や二次障害の予防およびニーズにあわせ適宜装具を対応させていった事が患者のQOLを最大限向上させたと考えられる。経過中に装具の目的が変化する可能性がある場合,今回のダイヤルロックを加工する方法は1つの選択肢となり得る。
悪性軟部肉腫は皮下組織や筋肉などの軟部組織に発生し,治療は広範切除術を基本とし,骨浸潤を認める場合は切断となる事もある。最近では安全な切除縁を確保するため,血管や神経の連続性を保ったまま切除し,組織浸潤を評価したうえで範囲を決定するIn situ preparation(ISP)法が行われている。どの方法であっても術後リハビリ(リハ)は必須となるが大腿部悪性軟部肉腫術後のリハ報告は少ない。
今回,大腿部軟部腫肉腫に対しISP法により大腿四頭筋全切除を施行された症例を担当した。術後膝関節固定制限,膝折れや二次的障害の予防,応用歩行の獲得を含めたリハ内容,および装具対応について報告する。
【方法】
50歳女性。2015年8月,右膝関節の運動時痛出現。11月,当院整形外科で切開生検施行,悪性軟部肉腫と診断。2016年1月,ISP法施行。大腿から脛骨結節まで皮切し,大腿骨を骨切り,腫瘍とともに大腿骨を挙上,大腿四頭筋と大腿骨骨膜を切除,大腿骨はプレート固定された。腫瘍切除部は広背筋を採取,筋皮弁施行され,翌日よりリハ開始。
【結果】
リハ開始時は免荷で,筋皮弁生着,血流確保のため膝関節は伸展位にシーネ固定されROM練習も禁止であった。そのため健側筋力強化や全身調整運動を主に行った。術後12日に部分荷重・歩行訓練許可となるが,整形外科医より一度の転倒でもプレート固定部の安定性確保が困難であるため荷重時の膝関節屈伸運動は禁止とされ,固定用膝装具が必要となった。当初はニーブレースを考えたが,固定期間が長期に及ぶと言われていたため在宅でも使用可能で,かつ膝折れに強固に対応できる両側金属支柱付き硬性膝装具を選択した。さらに今後,歩行や立ち仕事が行いやすい角度に調整できるよう膝継手はダイヤルロックを選択した。その後,膝関節固定位での歩行が可能となり自宅退院となった。
退院1ヶ月後,化学療法目的で再入院,荷重位での膝関節屈伸動作が許可されたが。膝をロックしなければ立脚支持が困難であった。オフセット継ぎ手への変更を検討したが,在宅時の階段昇降,坂道歩行時に膝関節固定位では不便であったとの訴えがあった。さらに年齢も若く活動性も高い事から反張膝の危険性も考えられ,オフセットでは不十分と判断した。そのため軽度の膝関節屈伸を許し,かつ屈伸最終可動域に強固な固定性を有する膝継ぎ手として,ダイヤルロックの最終伸展時,屈曲25度までの調整ネジホール間を刳り貫き,連結させる事で遊動性と固定性を確保した。
筋力強化を行い,荷重時の膝関節屈曲位からの伸展運動を反復練習し,坂道歩行,階段昇降練習を行った。その後1足1段での階段昇降,坂道も違和感なく可能となり,自宅復帰となった。
【結論】
機能障害だけでなく安静度や二次障害の予防およびニーズにあわせ適宜装具を対応させていった事が患者のQOLを最大限向上させたと考えられる。経過中に装具の目的が変化する可能性がある場合,今回のダイヤルロックを加工する方法は1つの選択肢となり得る。