The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-28] ポスター(運動器)P28

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-28-5] 高齢者挫滅症候群に対する急性期理学療法の有効性

松原 彩香1, 藤田 康孝1, 久保 美帆1, 内田 真樹1, 相良 亜木子1,2 (1.京都市立病院リハビリテーション科, 2.京都府立医大大学院リハビリテーション医学)

Keywords:挫滅症候群, 急性期, 高齢者

【はじめに,目的】

挫滅症候群は,特殊な外傷であり,生命にかかわる重篤な疾患であるため,急性期理学療法の報告が非常に少ない。今回,高齢の挫滅症候群に対し,CK高値の急性期から十分なリスク管理のもと理学療法を実施した症例を経験したため,考察を交えて報告する。

【方法】

方法は症例研究とする。症例は73歳の独居女性。約6日間,左を下に倒れていたところを発見され当院へ入院,挫滅症候群の診断となった。本症例の意識レベル,筋力,CK,血清Cr,血清BUN,Kを入院時,理学療法開始時,離床開始時で比較し,介入開始,離床開始の判断やリスク管理について考察する。

【結果】

入院時,医師カルテより意識レベルJCS3,CK1406u/l,Cr3.29mg/dl,BUN241.5mg/dl,K6.4mEq/lであった。長期間の骨格筋圧迫により筋崩壊を呈し,圧迫解除による筋浮腫から左大腿部のコンパートメント症候群,急性腎不全,電解質異常を生じていた。また,左大腿から膝関節にかけて黒色壊死した褥瘡を認め,褥瘡部からの感染による重度敗血症を呈していた。急性腎不全が改善に向かい生命の危機を脱した第5病日,医師の指示のもと理学療法を開始した。開始時,意識レベルJCS2,筋力は右下肢MMT2,左下肢MMT1,CK4066u/l,Cr1.18mg/dl,BUN73.4mg/dl,K5.3mEq/lであった。下肢他動運動時に非常に強い疼痛が見られた。本症例は高齢であり,臥床状態の長期化による廃用症候群の進行が懸念されたため,拘縮予防目的での可動域練習や廃用性筋力低下予防目的での四肢他動/自動介助運動を実施した。筋疲労による筋力低下が出現するまで,各筋5~10回の運動を1日2回実施した。筋崩壊の進行や心不全の発症をリスクとして挙げ,運動中や実施後24時間のバイタルサイン変動,血液データのCKやK値の異常,尿量の増減がないことを確認しながら介入を継続した。第16病日,CK,Kともに基準値に回復したため医師の許可を得て端座位への離床を開始した。離床開始時,意識レベルJCS2,筋力は右下肢MMT2,左下肢MMT2,CK123u/l,Cr0.45mg/dl,BUN10.7mg/dl,K3.2mEq/lであった。その後,症状の増悪なく第27病日車椅子移乗,第41病日起立台立位,第56病日歩行練習と離床を進めた。第85病日,一般病院へ転院した。転院時,意識清明,筋力は右下肢MMT4,左下肢MMT3,見守りで伝い歩きが10m可能であった。その後,介護老人保険施設を経て発症から約1年後に自宅へ退院した。自宅退院時,屋内伝い歩き,屋外歩行車で歩行可能であった。

【結論】

高齢の挫滅症候群に対して,十分なリスク管理のもと急性期から理学療法を実施し,拘縮や廃用性筋力低下,症状の増悪を起こすことなく離床を進めることが出来た。挫滅症候群に対する早期介入は早期離床を進めるうえで有効である可能性がある。