第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-29] ポスター(運動器)P29

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-29-4] 健常成人における階段昇降時の膝関節キネマティクス

大森 啓司1, 大越 康充2, 浮城 健吾1, 井野 拓実1,3, 川上 健作4, 鈴木 昭二5, 三浦 浩太1, 小竹 諭1, 大角 侑平1, 吉田 俊教1, 前田 龍智2, 鈴木 航2 (1.悠康会函館整形外科クリニックリハビリテーション部, 2.悠康会函館整形外科クリニック整形外科, 3.北海道科学大学保健医療学部理学療法学科, 4.函館工業高等専門学校生産システム工学科, 5.公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系知能学科)

キーワード:階段昇降, キネマティクス, 膝関節

【目的】

種々の膝関節疾患の愁訴として,階段昇降時痛が多い。それらの病態や治療を考慮するうえで,階段昇降時の正常運動を理解することが重要である。本研究の目的は健常膝における階段昇降時のキネマティクスについて検討することである。


【方法】

健常被検者11例22膝(男性5例,女性6例,平均年齢27.7歳)を対象とした。光学式モーションキャプチャ技術を用い,自由速度の階段昇降動作を計測した。計測装置は赤外線カメラ8台,床反力計2枚を用いた。階段は高さ20cm,奥行き30cmの4段で,中央の2段について各々床反力計に載るように特注した。膝関節6自由度運動はポイントクラスター法により算出された。昇段,降段ともに計測肢の初期接地から次の初期接地までを1周期とした。膝伸展位の静止立位をゼロ点とし,膝キネマティクスについて波形パターンや極値などを検討した。


【結果】

昇段時の屈曲角度の平均値は初期接地68.4°,立脚期最小値12.3°,遊脚期最大値104.7°であり,その最大運動範囲は1.0°~123.1°であった。前後並進は1周期を通して脛骨は前方位で,立脚期では徐々に後方並進していた。回旋は平均値では初期接地から立脚中期にかけて緩やかに内旋していたが,個別にみると全体の73%で脛骨が内旋しており,27%で外旋していた。降段時の屈曲角度の平均値は初期接地12.3°,遊脚期最大値104.1°であり,その最大運動範囲は4.6°~122.9°であった。前後並進は1周期を通して脛骨は前方位で,初期接地後脛骨は後方並進し,立脚終期以降は前方並進していた。回旋は初期接地から荷重応答期にかけて脛骨は大きく内旋し,その後は緩やかに内旋していた。


【考察と結論】

本研究における階段昇降時の膝屈伸運動の波形パターンは先行研究と概ね同様であり,我々の用いた方法論の妥当性が確認された。降段時の波形パターンは平地歩行に類似しており,double knee actionおよび初期接地後の荷重連鎖による脛骨内旋が認められた。昇段時にも荷重連鎖に起因する初期接地後の脛骨内旋が認められたが,3割の対象では初期接地後に脛骨の外旋が認められた。これは初期接地後に骨盤が立脚側に偏位することにより,大腿骨が内転・内旋し,相対的に脛骨が外旋したものと考えられた。昇段は身体を重力に抗して上方に移動させる動作のため,歩行と較べると運動戦略は多様となる可能性が考えられた。一方,降段では負荷量が大きいとされるものの初期接地後に回旋パターンに差が認められなかった。降段の初期接地は昇段に較べ膝関節が伸展位であるため膝関節の回旋や内外反の影響を受けにくいこと,および立脚期前半の膝関節に生じる負荷量や仕事量が昇段とは異なることが影響しているものと考えられた。