The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-31] ポスター(運動器)P31

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-31-5] キック動作の呼吸様式がボールスピードに与える影響

小松 匠, 渡邊 昌宏 (つくば国際大学医療保健学部理学療法学科)

Keywords:draw in, 体幹筋, サッカー

[はじめに,目的]

インステップ・キックによるボールスピードは,サッカーの重要なスキルの1つである。近年,ボールスピードはdraw inなど呼吸を意識した体幹深部筋収縮トレーニングが効果的であることが明らかになっている。しかし,ボールスピードとインパクト時の呼吸の関係を研究した報告は見当たらない。そこで本研究ではキック動作時の呼吸様式がボールスピードとスイングスピードにどのような影響を及ぼすかを明らかにすることとした。

[方法]

対象は中学・高校でサッカー部に所属していた11名(年齢20.63±1.0歳)とした。ボールスピード測定はスピードガンを使用しゴールネット後方からおこない,スイングスピードはマルチテスターIIを使用しボール右側方からおこなった。ボール設置場所はゴールライン中央より3m離れた距離とし,インステップ・キックでゴール中央に全力で蹴るように説明した。助走角度は45度としできるだけ助走スピードを速くするように指示した。また,インステップ・キックは4つの呼吸様式(通常呼吸,draw in,呼気,吸気)でランダムにおこなった。1つの呼吸様式につき3回計測を行い,それぞれ平均スピードを算出した。次の呼吸様式で実施する前には10分間の休憩をとった。ボールは5号球を使用しボール空気圧は0.7気圧とした。測定処理とデータ解析にはSPSS Statistics 20を使用し,各項目におけるボールスピードとスイングスピードを1要因分散分析と多重比較検定を用い比較した。有意水準は5%とした。

[結果]

ボールスピードはdraw in(87.6±9.11km/s)に比べ,呼気(77.0±11.9km/s)と吸気(78.3±10.15km/s)で有意に低下した(呼気vs draw in:P=0.33,吸気vs draw in:P=0.23)。draw inと通常呼吸(84.1±7.46km/s)には有意差は認められなかった。スイングスピードに有意差は認められなかった。

[考察]

体幹の表層筋群は主に体幹のコントロールに関与し,深部筋群は脊柱や骨盤の安定性に関与していることが知られている。また,ボールスピードを速くするためにはボール中心を足関節の近位部で蹴ることが重要であると報告されている。

今回,呼気や吸気をしながらインステップ・キックをおこなった場合,draw inに比べてボールスピードに明らかな低下が認められた。これはインパクト時に呼気や吸気により表層筋と深部筋のバランスが崩れたことにより,体幹と下肢の安定性が低下しボール中心をとらえきれなかったためだと考えられた。一方draw inでのインステップ・キックでは,通常呼吸と変わらずに体幹の安定性が確保され,ボール中心を足関節近位部で蹴ることができていたと推察された。

今後は,ボールスピードに影響を及ぼすのは呼吸方法か体幹筋トレーニングの影響かを明らかにする必要がある。