[P-MT-35-1] 人工股関節全置換術における退院時のQOLに影響を及ぼす因子の検討~第二報~
Keywords:日本整形外科学会股関節疾患評価質問表(JHEQ), 人工股関節全置換術, 生活の質(QOL)
【はじめに,目的】
人工股関節全置換術(以下,THA)後において,患者が抱く退院時の不安を解決することは重要である。そこで,我々は過去に日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(以下,JHEQ)を用いて退院時のQOL評価を行い,その影響因子を検討した。しかし,この検討は退院時の因子のみを用いたものであり,より早期に退院時のQOLを予測して改善するためには術前因子を含めた検討が必要であると考えた。そこで,今回は術前因子を加え再度検討を行った。
【方法】
当院にTHA目的で入院となった変形性股関節症患者70例のうち,術前と退院時に調査が可能で,術後合併症がなく自宅退院となった56例(女性44例,男性12例,平均年齢69.7±9.2歳)を対象とした。方法は,JHEQを術前と退院時にそれぞれ調査し,下位尺度(痛み,動作,メンタル)ごとに合計点を算出した。次に術前と退院時に両側股関節の可動域(屈曲,外転,外旋),Timed Up and Go test,Harris Hip Score(疼痛,機能)を測定した。統計学的解析は,測定した項目に年齢,性別を加えたものを独立変数,退院時のJHEQの各下位尺度を従属変数とした重回帰分析を行った(有意水準5%未満,SPSS Ver.20を使用)。
【結果】
術後在院日数の中央値(四分位範囲)は20.0(16.0~24.0)日であった。重回帰分析の結果,影響を与える因子は,JHEQ痛みは性別と退院時の術側外転可動域,JHEQ動作は退院時の術側屈曲可動域と術前JHEQ動作,JHEQメンタルは退院時の術側屈曲可動域と術前JHEQメンタルであった。自由度調整済み決定係数R2は,痛み,動作,メンタルの順に0.236,0.252,0.375であり,算出された回帰モデルはすべて統計学的に有意であった(すべてp<0.001)。
【結論】
JHEQ痛みには,女性であること,退院時の術側外転可動域が大きいことが関係し,外転可動域については脚延長による筋緊張の増大による痛みなどが関係している可能性がある。JHEQ動作には,退院時の術側屈曲可動域が大きいこと,術前JHEQ動作が高いことが関係し,JHEQ動作の質問に屈曲可動域が必要な内容が多いことや術前機能がTHA後の機能予後に影響することがJHEQによる主観的評価でも重要であることがわかった。JHEQメンタルには,退院時の術側屈曲可動域が大きいこと,術前JHEQメンタルが高いことが関係し,屈曲可動域の改善を感じたことがJHEQメンタルを改善し,またJHEQメンタルの質問が近所づきあいなど入院中には回答が困難で術前のイメージがそのまま退院時の結果に繋がった可能性がある。
人工股関節全置換術(以下,THA)後において,患者が抱く退院時の不安を解決することは重要である。そこで,我々は過去に日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(以下,JHEQ)を用いて退院時のQOL評価を行い,その影響因子を検討した。しかし,この検討は退院時の因子のみを用いたものであり,より早期に退院時のQOLを予測して改善するためには術前因子を含めた検討が必要であると考えた。そこで,今回は術前因子を加え再度検討を行った。
【方法】
当院にTHA目的で入院となった変形性股関節症患者70例のうち,術前と退院時に調査が可能で,術後合併症がなく自宅退院となった56例(女性44例,男性12例,平均年齢69.7±9.2歳)を対象とした。方法は,JHEQを術前と退院時にそれぞれ調査し,下位尺度(痛み,動作,メンタル)ごとに合計点を算出した。次に術前と退院時に両側股関節の可動域(屈曲,外転,外旋),Timed Up and Go test,Harris Hip Score(疼痛,機能)を測定した。統計学的解析は,測定した項目に年齢,性別を加えたものを独立変数,退院時のJHEQの各下位尺度を従属変数とした重回帰分析を行った(有意水準5%未満,SPSS Ver.20を使用)。
【結果】
術後在院日数の中央値(四分位範囲)は20.0(16.0~24.0)日であった。重回帰分析の結果,影響を与える因子は,JHEQ痛みは性別と退院時の術側外転可動域,JHEQ動作は退院時の術側屈曲可動域と術前JHEQ動作,JHEQメンタルは退院時の術側屈曲可動域と術前JHEQメンタルであった。自由度調整済み決定係数R2は,痛み,動作,メンタルの順に0.236,0.252,0.375であり,算出された回帰モデルはすべて統計学的に有意であった(すべてp<0.001)。
【結論】
JHEQ痛みには,女性であること,退院時の術側外転可動域が大きいことが関係し,外転可動域については脚延長による筋緊張の増大による痛みなどが関係している可能性がある。JHEQ動作には,退院時の術側屈曲可動域が大きいこと,術前JHEQ動作が高いことが関係し,JHEQ動作の質問に屈曲可動域が必要な内容が多いことや術前機能がTHA後の機能予後に影響することがJHEQによる主観的評価でも重要であることがわかった。JHEQメンタルには,退院時の術側屈曲可動域が大きいこと,術前JHEQメンタルが高いことが関係し,屈曲可動域の改善を感じたことがJHEQメンタルを改善し,またJHEQメンタルの質問が近所づきあいなど入院中には回答が困難で術前のイメージがそのまま退院時の結果に繋がった可能性がある。