The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-36] ポスター(運動器)P36

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-36-2] 糖尿病と低栄養状態を有する人工膝関節全置換術後患者の身体的特徴

中川 泰慈, 加納 一則, 都留 貴志, 石河 毅 (地方独立行政法人市立吹田市民病院リハビリテーション科)

Keywords:人工膝関節全置換術, 糖尿病, 低栄養

【はじめに,目的】

糖尿病者や低栄養状態の者は周術期において創傷治癒の遅延や合併症の出現率を高めるとされている。また,糖尿病や低栄養状態の高齢者は一般的な高齢者と比べて健康状態の低下を認める。近年,人工膝関節全置換術(以下,TKA)患者の高齢化が進んでおり,運動療法を行う上でこれら疾患,状態は身体機能の回復を遅延させることが予想される。本研究の目的は糖尿病と低栄養状態にあるTKA後患者の身体的特徴を調査することである。

【方法】

対象は平成26年4月から平成28年8月までに当院で変形性膝関節症と診断され片側TKAを施行した126名(平均年齢74.7±7.4歳)とした。手術前と退院時(平均在院日数26.7±5.6日)を調査時期として年齢,BMI,退院時疼痛(以下,疼痛),術側膝伸展筋力(以下,膝伸展筋力),10m最大歩行速度(以下,歩行速度)について調査した。

疼痛は退院時の歩行時痛をVisual analog scaleを用いて数値化した。膝伸展筋力は徒手筋力測定器(アニマ社製μTas MT-1)にて測定し,トルク体重比(Nm/kg)として算出した。膝伸展筋力,歩行時間は退院時の値を手術前の値から除して変化率を算出した。

対象者を糖尿病者(以下,糖尿病群),低栄養状態である者(以下,低栄養群),糖尿病を有し且つ低栄養状態である者(以下,合併群),どちらにも該当しない者(以下,通常群)に分類した。選定基準は医師より糖尿病と診断されている者を糖尿病群,もしくは合併群とした。栄養状態はGeriatric Nutritional Risk Index(以下,GNRI)を用いて,手術前のGNRIが低栄養リスクとされているGNRI<98の者を低栄養群,もしくは合併群とした。

4群間の比較には一元配置分散分析および多重比較検定(Tukey-kramer法)を用いた。有意水準は5%とした。

【結果】

対象者の内訳は通常群74名(男性10名,女性64名),糖尿病群27名(男性6名,女性21名),低栄養群17名(男性4名,女性13名),合併群8名(男性1名,女性7名)であった。群間での年齢による有意な差は認めなかった。BMIは合併群22.1±3.9kg/m2で通常群24.7±7.1kg/m2,糖尿病群26.5±4.1kg/m2と比較して有意に低かった。疼痛は通常群39.2±13.2mmと比較して糖尿病群50.7±10.1mm,合併群55.1±8.4mmで有意に高かった。また糖尿病群,低栄養群44.5±14.1mmと比較しても合併群は有意に高かった。膝伸展筋力の変化率は通常群91.7±12.1%と比較して糖尿病群82.5±13.1%,合併群79.7±10.9%で有意に低かった。歩行速度の変化率は通常群94.1±10.1%と比べて合併群120.4±18.3%で有意に高かった。

【結論】

今回の結果から,糖尿病を有するTKA後患者は通常と比べ身体機能が低く,低栄養状態も加わるとさらにその程度は強まる可能性が示唆された。糖尿病の存在でTKA後の疼痛が長引くことは報告されているが,低栄養状態が創傷治癒の遅延や浮腫の増強をさらに増長させていることが考えられる。