The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-37] ポスター(運動器)P37

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-37-2] 腰椎椎間板ヘルニア摘出術後における下肢症状残存症例の術前股関節可動域の特徴

松本 慶吾1, 大谷 洋紅1, 桜井 千景1, 中野 由紀1, 宮井 優1, 佐々木 友1, 片浦 聡司1, 佐藤 伸明1, 真鍋 道彦2 (1.神戸百年記念病院リハビリテーション科, 2.県立柏原病院整形外科)

Keywords:腰椎椎間板ヘルニア, 下肢症状, 股関節可動域

【はじめに,目的】

腰椎椎間板ヘルニア(以下,LDH)摘出術実施後,多くの症例は良好な経過をたどる。しかし,術後,画像上明らかな再発所見がないにもかかわらず,術前の痛みやしびれといった下肢症状が残存あるいは再発する症例を経験する。この下肢症状に対し,術後の生活習慣や物理療法の有効性について調査した報告はあるが,術前の股関節可動域について調査した報告はない。よって本研究の目的は,LDH摘出術後の下肢症状残存症例における術前の股関節可動域の特徴を明らかにし,そこから術後残存した下肢症状の発症機序を考察することである。

【方法】

2011年4月から2016年7月までに当院でL4/5,L5/6,L5/S1レベルのLDHと診断され手術を行った症例に対し,手術前に理学療法評価にて,患側下肢の股関節可動域[Straight Leg Raising(以下SLR),屈曲,伸展,内外旋(90°屈曲位,伸展位)]をゴニオメーターを用いて計測,術後翌日~6ヶ月の間で術前に見られた下肢症状の有無を聞き取り調査した。LDH以外の腰椎疾患および股関節疾患を合併ならびに既往のある者,また疼痛により可動域測定が困難であった者を除外した,67例(男性46例,女性21例,手術時平均年齢45.8歳)を対象とした。術後に術前の下肢症状を訴えたものを残存群,訴えなかったものを非残存群に分類し,検討した。統計処理は2群間比較にMann-Whitney検定を実施し,有意水準は5%とした。

【結果】

残存群が23例(男性15例,女性8例,平均年齢45.8歳),非残存群は44例(男性31例,女性13例,平均年齢45.7歳)であった。残存群は,術前股関節可動域において,SLR(残存群46.1°,非残存群54.7°:p=0.03)ならびに90°屈曲位内旋(残存群27.6°,非残存群37.2°:p=0.01)が有意に小さく,伸展(残存群10.0°,非残存群6.0°:p=0.03)が有意に大きかった。

【結論】

本研究の結果から,LDH摘出術後に症状が残存している症例では,術前から股関節外旋筋群,ハムストリングスの筋緊張が高いことが示唆された。LDHは,脱出した髄核や押し出された後方線維輪が硬膜や神経根を圧迫することで発症する。その要因として腰椎後彎と骨盤後傾の姿勢アライメントが深く関与し,このアライメントは,股関節外旋筋群やハムストリングスの短縮により促される。さらに,これらの筋群の緊張が仙腸関節痛や坐骨神経,ならびに腓骨神経への絞扼性神経症状を惹起することは過去に報告されている。よって,LDH摘出後の残存する下肢症状は,股関節外旋筋群やハムストリングスの筋緊張が術前から高いことで上記の様な障害が潜在しており,LDH摘出術後,LDHによる神経症状軽減に伴い,顕在化されるのではないかと考えられた。