[P-MT-39-4] 大腿骨近位部骨折者における歩行周期変動の信頼性
Keywords:大腿骨近位部骨折, 歩行周期変動, 信頼性
【はじめに,目的】
転倒リスクを評価する指標として,歩行の安定性を評価する歩行変動が注目されており,近年は小型加速度センサを用いて,歩行周期時間の変動を簡便に計測できる方法が確立され研究が進んでいる。一方,高齢者において,転倒に伴う大腿骨近位部骨折が多くみられ,受傷後の再転倒についても問題となっている。そのため,高齢の大腿骨近位部骨折者に対しては,転倒リスクを的確に評価する必要があるが,評価の前提となる歩行周期変動の信頼性に関する検討は十分なされていない。そのため,本研究の目的は大腿骨近位部骨折者の歩行周期変動の信頼性を検討することとした。
【方法】
対象は,老人保健施設に通所もしくは入所している大腿骨近位部骨折者7名(年齢:82.3±2.5歳)で,リハビリテーション内で独歩練習を行っている者とした。両側踵に加速度計(Microstone社製,測定周期200Hz)を装着,快適歩行速度で10m歩行を8回計測し,得られた加速度から歩行周期平均時間と歩行周期時間変動を算出した。その後,1週間程度の間隔をあけ再測定を実施した。解析は,各試行における中央10ストライドを抽出し,健側,患側の計1120ストライドを計測データとして用いた。統計解析は,健側,患側に分けて実施し,20から80ストライドまで20ストライド毎に級内相関係数ICC(1,1),最小可変検知量(MDC)を用い,それぞれ再テスト信頼性として検討した。統計解析はすべてRコマンダーVer1.48を使用した。
【結果】
全実測値の平均において,10m歩行速度は0.79±0.2m/sec,歩数は25.2±3.4歩,歩行周期時間は健側1.01±0.1sec,患側1.01±0.1sec,歩行周期時間の変動係数は健側4.15±1.21%,患側4.21±1.33%であった。歩行周期平均時間ICCは,健側で0.97~0.99,患側で0.97~0.99であった。歩行周期時間変動におけるICCは,健側と患側両側ともに高値で以下の値であった(20ストライド[健側:0.86,患側:0.95],40ストライド[健側:0.90,患側:0.95],60ストライド[健側:0.94,患側:0.96],80ストライド[健側:0.96,患側:0.96])。MDC(%)は,20ストライド[健側:2.14,患側:3.27],40ストライド[健側:3.24,患側:3.27],60ストライド[健側:3.30,患側:3.64],80ストライド[健側:3.54,患側:3.63]で各値をとった。
【結論】
大腿骨近位部骨折後の高齢者における歩行周期変動の再テスト信頼性は高く,測定は20ストライドの計測を行うことで,信頼性の高いデータを入手できることが示された。本研究をふまえ,歩行変動の臨床的意義を明らかにするために,大腿骨近位部骨折患者における歩行変動の変化を縦断的に調査するなど,今後さらなる研究が必要である。
転倒リスクを評価する指標として,歩行の安定性を評価する歩行変動が注目されており,近年は小型加速度センサを用いて,歩行周期時間の変動を簡便に計測できる方法が確立され研究が進んでいる。一方,高齢者において,転倒に伴う大腿骨近位部骨折が多くみられ,受傷後の再転倒についても問題となっている。そのため,高齢の大腿骨近位部骨折者に対しては,転倒リスクを的確に評価する必要があるが,評価の前提となる歩行周期変動の信頼性に関する検討は十分なされていない。そのため,本研究の目的は大腿骨近位部骨折者の歩行周期変動の信頼性を検討することとした。
【方法】
対象は,老人保健施設に通所もしくは入所している大腿骨近位部骨折者7名(年齢:82.3±2.5歳)で,リハビリテーション内で独歩練習を行っている者とした。両側踵に加速度計(Microstone社製,測定周期200Hz)を装着,快適歩行速度で10m歩行を8回計測し,得られた加速度から歩行周期平均時間と歩行周期時間変動を算出した。その後,1週間程度の間隔をあけ再測定を実施した。解析は,各試行における中央10ストライドを抽出し,健側,患側の計1120ストライドを計測データとして用いた。統計解析は,健側,患側に分けて実施し,20から80ストライドまで20ストライド毎に級内相関係数ICC(1,1),最小可変検知量(MDC)を用い,それぞれ再テスト信頼性として検討した。統計解析はすべてRコマンダーVer1.48を使用した。
【結果】
全実測値の平均において,10m歩行速度は0.79±0.2m/sec,歩数は25.2±3.4歩,歩行周期時間は健側1.01±0.1sec,患側1.01±0.1sec,歩行周期時間の変動係数は健側4.15±1.21%,患側4.21±1.33%であった。歩行周期平均時間ICCは,健側で0.97~0.99,患側で0.97~0.99であった。歩行周期時間変動におけるICCは,健側と患側両側ともに高値で以下の値であった(20ストライド[健側:0.86,患側:0.95],40ストライド[健側:0.90,患側:0.95],60ストライド[健側:0.94,患側:0.96],80ストライド[健側:0.96,患側:0.96])。MDC(%)は,20ストライド[健側:2.14,患側:3.27],40ストライド[健側:3.24,患側:3.27],60ストライド[健側:3.30,患側:3.64],80ストライド[健側:3.54,患側:3.63]で各値をとった。
【結論】
大腿骨近位部骨折後の高齢者における歩行周期変動の再テスト信頼性は高く,測定は20ストライドの計測を行うことで,信頼性の高いデータを入手できることが示された。本研究をふまえ,歩行変動の臨床的意義を明らかにするために,大腿骨近位部骨折患者における歩行変動の変化を縦断的に調査するなど,今後さらなる研究が必要である。