The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-40] ポスター(運動器)P40

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-40-2] 大腿骨近位部骨折後の誤嚥性肺炎の発症が急性期病院における生命予後および機能予後に及ぼす影響

半田 和也, 熊代 功児, 小根田 夏子 (倉敷中央病院リハビリテーション部)

Keywords:大腿骨近位部骨折, 誤嚥性肺炎, 予後

【はじめに,目的】

大腿骨近位部骨折は高齢化社会の急速な進行に伴って年々増加し,高齢者のADL低下,生命予後の悪化を招くとされている。これらの予後を悪化させる要因に関して合併症の発症が予後に影響し,死因は肺炎が最多と報告されている。本研究の目的は,大腿骨近位部骨折後の誤嚥性肺炎の発症が急性期病院における生命予後及び機能予後に及ぼす影響を明らかにすることである。

【方法】

対象は2013年1月から2016年6月に大腿骨近位部骨折にて当院整形外科に入院した65歳以上の患者430例(男性97例,女性333例,平均年齢82.1±7.8歳)とした。保存療法,病的骨折,院内発症例は除外した。まず,誤嚥性肺炎の発症が生命予後に及ぼす影響を調査するために,誤嚥性肺炎の有無,当院退院時の転帰(自宅退院・転院・死亡)を調査した。統計解析は,対象者を誤嚥性肺炎発症群と非発症群に分類し,χ2検定を用いて転帰を比較した。次に,誤嚥性肺炎の発症が機能予後に及ぼす影響を調査するために,誤嚥性肺炎の有無,年齢,認知症の有無,受傷前および退院時歩行能力,術後在院日数を調査した。統計解析は,退院時歩行能力を従属変数,肺炎の有無,年齢,認知症の有無,受傷前歩行能力,術後在院日数を独立変数として強制投入したロジスティック回帰分析を行い,退院時歩行能力と独立して関連する要因を検討した。受傷前および退院時歩行能力は,歩行可否を判断基準とし,歩行補助具は問わなかった。統計学的有意水準は5%とした。

【結果】

誤嚥性肺炎発症群は33例(発生率7.6%),当院退院時の転帰は,自宅退院21例,転院404例,死亡5例であった。χ2検定の結果,誤嚥性肺炎発症群で有意に死亡が多く,誤嚥性肺炎発症群の死亡率は15%であった(p<0.001)。ロジスティック回帰分析の結果,退院時歩行能力に影響する要因として,受傷前歩行能力(OR:6.074,95%CI:1.884-19.577),誤嚥性肺炎の有無(OR:4.441,95%CI:1.890-10.436),認知症の有無(OR:2.545,95%CI:1.556-4.164),年齢(OR:1.054,95%CI:1.023-1.087)が有意な項目として抽出され,術後在院日数は抽出されなかった(モデルχ2検定p<0.001)。

【結論】

先行研究と同様に誤嚥性肺炎発症群は非発症群に比べて死亡率は有意に高値であり,誤嚥性肺炎の発症は生命予後に影響することが示された。さらに急性期病院における退院時歩行能力に影響する要因として,術後在院日数に関わらず,誤嚥性肺炎の発症が大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドラインで報告されている認知症や年齢よりも影響が大きかった。急性期病院における生命予後,機能予後を改善させるためには大腿骨近位部骨折後の誤嚥性肺炎の発症を予防することが重要である。