The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-42] ポスター(運動器)P42

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-42-3] 人工膝関節全置換術後の出血量が関節可動域に及ぼす影響について

藤井 隆文1, 速水 翔平1, 竹村 享子1, 吉川 雅夫1, 中島 幹雄2, 常徳 剛2, 速水 英之2 (1.医療法人大植会葛城病院リハビリテーション部, 2.医療法人大植会葛城病院人工関節センター)

Keywords:人工膝関節, 術後出血量, 関節可動域

【はじめに,目的】

人工膝関節全置換術(以下TKA)術後の理学療法において関節可動域(以下ROM)の獲得は非常に重要な課題の一つである。TKA術後のROM制限因子の1つに膝関節周囲の腫脹がある。TKA術後の腫脹がROMに影響するとの報告もあり,この腫脹の要因として,術後の出血量の影響が考えられる。当院では,人工膝関節全置換術(以下TKA)術後の出血対策として,H28.2月よりステロイドとトラネキサム酸関節内投与を併用したドレーンクランプ法(以下DC法)を行っている。我々が独自で行った先行研究によりDC法と,これ以前に行っていた術中皮下浸潤麻酔に通常のドレーンを使用した方法(以下SC法)との比較において,DC法がより出血量が少ないことが分かった(P<0.05)。本研究では,術後出血量の差から生じる腫脹がROMに及ぼす影響について検討することを目的とした。


【方法】

H27.9からH28.7までに当院でFINE OMC CR型TKAを行った53例53膝のうちDC群29例(男性3例,女性26例,75.5歳±5.1)29膝。SC群24例(男性2例,女性22例,72.4歳±8.5)24膝を対象とした。当院のTKAデータベースを用い,データに不備があるものは除外した。検討項目は,自動および他動の膝関節屈曲・伸展ROM,疼痛(Visual Analogue Scale(以下VAS),Face Scale(以下FS)で評価)とし,術前,手術翌朝(DC群はドレーン解放直後),術後1日,3日,7日,14日の値をDC群とSC群で比較した。また,ADL評価として術後14日の機能的自立度評価法(以下FIM)各運動項目および運動項目合計を採点し比較した。2群をMann-Whitney検定を用いて統計解析を行い比較した。危険率は5%未満とした。


【結果】

手術翌朝他動膝関節屈曲ROMでは,DC群92.2°±13.8,SC群81.0°±16.4と有意差を認めた。術前,術後1日,3日,7日,14日の自動及び他動ROM,VAS,FS,各項目FIMでは,両群間で有意差を認めなかった。


【結論】

手術翌朝のROMに有意差を認めたことは,DC群において,術後出血量が少量であることで腫脹が軽減された結果,良好なROMを獲得できたと考える。入院期間の短縮が求められている近年,早期在宅復帰には術後早期から積極的な理学療法が必要となる。術後早期にROMを獲得することで術直後の離床に求められる基本動作(寝返り,起き上がり,起立)や移乗動作を容易にし,また早期から腫脹の影響を受けることなく積極的にROMや歩行を含めた各動作練習が可能となると考察される。術後1日目以降のROMや疼痛に有意差を認めなかったことから,術後出血量は,術後早期からの理学療法導入には有用であるが,機能回復や動作獲得を含めた長期的な経過においては,影響は少ないと考えられる。