[P-MT-42-4] 変形性膝関節症および関節リウマチ患者における人工膝関節全置換術後の膝屈曲可動域の改善率の比較
Keywords:TKA, ROM, 予後予測
【はじめに,目的】
関節可動域(ROM)は,人工膝関節全置換術(TKA)の術後成績を左右する重要な指標の一つである。ROMの改善を図っていく上では,術前ROMに基づいた予後予測を行い個別性に配慮していくことが重要である。一方,変形性膝関節症(膝OA)と関節リウマチ(RA)におけるTKA後の膝屈曲ROMの相違については,先行研究において統一した見解は得られていない。本研究では,膝OAおよびRA患者におけるTKA後の膝屈曲ROMを1年間縦断的に調査し,両疾患における術後ROMの改善率の相違について検討することを目的とした。
【方法】
対象は2012年~2014年に膝OAおよびRAを原疾患とし,当院にてTKAを施行した37名45関節とした。内訳は膝OA群が22名28関節(女性28関節,年齢72.5±5.8歳),RA群が15名17関節(女性13関節,男性4関節,年齢70.8±7.1歳)であった。膝OA群における罹患関節の内訳は,両側が18名,片側が2名,対側施行後が2名であった。使用機種は日本ストライカー社製で,膝OA群がTriathlonⓇCS,RA群はTriathlonⓇPSが8関節,ScorpioⓇNRG PSが9関節であった。取り込み基準は60歳以上,同一の術者,術前ROMが110°以上,術前TUGが30秒未満の者とした。研究デザインは前向きコホート研究で,ベースライン調査として術前に年齢,BMI,疾患名,罹患期間,膝屈曲・伸展ROM,FTAを調査した。追跡調査として入院期間ならびに術後1・2・3・4週および3・6・12ヵ月における膝屈曲ROMを測定し,術前に対する術後12ヵ月の改善率(%)を算出した。統計学的処理は,まず膝OA群とRA群のそれぞれで,術後12ヵ月のROMおよび改善率とベースライン調査項目ならびに入院期間との相関係数を確認した。次に,術前ROMに基づいてすべての対象関節を130°以上の良好群と130°未満の中間群に分類し,その上で膝OA群とRA群の2群に分類した。そして,分類した2群間における術前ROMおよび術後改善率の相違を独立した2群の差の検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
術後12ヵ月のROMは術前ROM(膝OA群:r=0.73,p<0.01。RA群:r=0.64,p<0.01)と,術後改善率も術前ROM(膝OA群:r=-0.52,p<0.01。RA群:r=-0.86,p<0.01)との間にのみ有意な相関を認めた。術前ROMは,良好群と中間群のそれぞれで両疾患群間に有意差は認めなかった。術後改善率は,良好群では膝OA群(-3.6±4.8%)とRA群(-2.6±4.7%)に有意差は認めなかったものの,中間群では膝OA群(-0.6±4.6%)に比べRA群(6.2±5.4%)の方が有意に高値を示した(p<0.01)。
【結論】
中間群の術後ROMは,膝OA群は術前ROMと同程度であったのに対して,RA群は術前ROMを平均6%上回っていた。関節破壊の要因が退行変性に起因する膝OAと炎症に起因するRAでは,術後も温存される軟部組織の状態が異なることが推察される。そのため,関節破壊に至る両疾患の病態の相違が,術後ROMの改善率に影響した可能性が考えられる。
関節可動域(ROM)は,人工膝関節全置換術(TKA)の術後成績を左右する重要な指標の一つである。ROMの改善を図っていく上では,術前ROMに基づいた予後予測を行い個別性に配慮していくことが重要である。一方,変形性膝関節症(膝OA)と関節リウマチ(RA)におけるTKA後の膝屈曲ROMの相違については,先行研究において統一した見解は得られていない。本研究では,膝OAおよびRA患者におけるTKA後の膝屈曲ROMを1年間縦断的に調査し,両疾患における術後ROMの改善率の相違について検討することを目的とした。
【方法】
対象は2012年~2014年に膝OAおよびRAを原疾患とし,当院にてTKAを施行した37名45関節とした。内訳は膝OA群が22名28関節(女性28関節,年齢72.5±5.8歳),RA群が15名17関節(女性13関節,男性4関節,年齢70.8±7.1歳)であった。膝OA群における罹患関節の内訳は,両側が18名,片側が2名,対側施行後が2名であった。使用機種は日本ストライカー社製で,膝OA群がTriathlonⓇCS,RA群はTriathlonⓇPSが8関節,ScorpioⓇNRG PSが9関節であった。取り込み基準は60歳以上,同一の術者,術前ROMが110°以上,術前TUGが30秒未満の者とした。研究デザインは前向きコホート研究で,ベースライン調査として術前に年齢,BMI,疾患名,罹患期間,膝屈曲・伸展ROM,FTAを調査した。追跡調査として入院期間ならびに術後1・2・3・4週および3・6・12ヵ月における膝屈曲ROMを測定し,術前に対する術後12ヵ月の改善率(%)を算出した。統計学的処理は,まず膝OA群とRA群のそれぞれで,術後12ヵ月のROMおよび改善率とベースライン調査項目ならびに入院期間との相関係数を確認した。次に,術前ROMに基づいてすべての対象関節を130°以上の良好群と130°未満の中間群に分類し,その上で膝OA群とRA群の2群に分類した。そして,分類した2群間における術前ROMおよび術後改善率の相違を独立した2群の差の検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
術後12ヵ月のROMは術前ROM(膝OA群:r=0.73,p<0.01。RA群:r=0.64,p<0.01)と,術後改善率も術前ROM(膝OA群:r=-0.52,p<0.01。RA群:r=-0.86,p<0.01)との間にのみ有意な相関を認めた。術前ROMは,良好群と中間群のそれぞれで両疾患群間に有意差は認めなかった。術後改善率は,良好群では膝OA群(-3.6±4.8%)とRA群(-2.6±4.7%)に有意差は認めなかったものの,中間群では膝OA群(-0.6±4.6%)に比べRA群(6.2±5.4%)の方が有意に高値を示した(p<0.01)。
【結論】
中間群の術後ROMは,膝OA群は術前ROMと同程度であったのに対して,RA群は術前ROMを平均6%上回っていた。関節破壊の要因が退行変性に起因する膝OAと炎症に起因するRAでは,術後も温存される軟部組織の状態が異なることが推察される。そのため,関節破壊に至る両疾患の病態の相違が,術後ROMの改善率に影響した可能性が考えられる。