The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-42] ポスター(運動器)P42

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-42-5] 人工膝関節全置換術に起因する大腿四頭筋の筋力低下を誘引する術部腫脹に関連する因子の検討
―多価不飽和脂肪酸に着目して―

高仲 理江, 久保 裕介, 杉浦 武, 杉山 秀平, 中嶋 仁美, 鈴木 友美, 小堀 かおり, 小堀 眞 (こぼり整形外科クリニック)

Keywords:人工膝関節全置換術, 筋力低下, 多価不飽和脂肪酸

【目的】

近年,人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:以下,TKA)に起因する大腿四頭筋の筋力低下(Quadriceps Weakness:以下,QW)に関連する因子として術部腫脹が挙げられた。また,腫脹の増大には駆血帯の利用による急性炎症(虚血再灌流障害)が関与することが示唆されている。そこで我々は,急性炎症の発生と収束に関わる多価不飽和脂肪酸のn6系不飽和脂肪酸(以下,n6)とn3系不飽和脂肪酸(以下,n3)に着目した。急性炎症の発生にはn6,収束にはn3が関与することから,術前の食事におけるn6の摂取量が多く,n3の摂取量が少ない対象者ほど腫脹が増大すると考えられる。本研究の目的は,食事摂取状況と腫脹,腫脹とQWとの関連を検討し,多価不飽和脂肪酸が腫脹を介してQWに関与することを明らかにすることである。

【方法】

対象は,2015年9月から12月にTKAを施行した患者で同意が得られた14名{男性2名,女性12名,年齢:74±6歳,BMI:25±3}とした。主な評価項目は,食事評価によるn6とn3の摂取量と大腿周径,大腿四頭筋筋力とした。食事評価は,術前3日間の食事内容を記録用紙に患者自身が記載し,それを検者がエクセル栄養君を用いて3日間のn6とn3の平均摂取量を算出した。大腿周径と大腿四頭筋筋力は,手術1週間前と術後4日目に測定した。大腿周径は,膝蓋骨上縁10cmの周径とし,術前後の周径差を術部腫脹とした。大腿四頭筋筋力は,Hand-Held Dynamometerを用いて,膝関節伸展時の最大等尺性随意収縮力を測定し,術前からの低下率(QW)を求めた。各評価項目の関連性は,ピアソンの積率相関係数を用いて検討した。なお,有意水準は危険率5%未満とした。

【結果】

各評価項目の平均値は,n6:10.8±3.4g,n3:2.9±1.2g,腫脹:3.0±1.8cm,QW:60±15%であった。各評価項目の関連性に関しては,n6と腫脹(r=0.56),腫脹とQW(r=0.58)に有意な正の相関関係が認められた(p<0.05)が,n3と腫脹との間には有意な相関関係は認められなかった(p>0.05)。

【考察】

n6と腫脹との間に有意な相関関係が認められたが,n3と腫脹との間に有意な相関関係が認められなかったことから,TKA後における術部腫脹の制御には急性炎症を収束に誘導するn3よりも急性炎症の発生に関与するn6が重要な役割を果たすことが示唆された。また,腫脹とQWとの間にも有意な相関関係が認められたことは,先行研究を支持するものであり,腫脹の抑制は重要課題であることが再認識された。本研究の成果により,術前指導の1つとしてn6の摂取量を減らす食事指導を実施する重要性が示唆された。