The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-43] ポスター(運動器)P43

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-43-5] 術後に動作困難に陥った人工膝関節全置換術患者における歩行再獲得までの推移
~免荷式リフトPOPOの役割に関する一考察~

竹中 裕 (社団医療法人かなめ会山内ホスピタルリハビリテーション部)

Keywords:人工膝関節全置換術, 免荷式リフトPOPO, 運動学習

【はじめに・目的】人工膝関節全置換術(以下:TKA)は,脳血管障害の既往に関わらず麻痺が軽度かつ術前検査で合併症のリスクが低いと判断された場合に実施されるが,非麻痺側TKA術後の経過を記録した報告は我々の渉猟し得る限り見当たらない。今回,術後に動作困難に陥った左片麻痺後右TKA患者に対し,歩行支援機器を用いて実用的な歩行の獲得を目指したので報告する。

【方法】症例は70代後半女性。TKA施行14か月前に右被核出血(被核外側)発症,保存療法が選択され3か月でステッキ歩行可能となり自宅で生活されていた。術前評価として,膝関節可動域:左右共に屈曲130°,伸展-10°。筋力:右膝伸展0.5Nm/kg,左膝伸展0.55Nm/kg。SIAS-motor:4-4-4-4-4。疼痛:Numerical Rating Scale(以下:NRS)動作時7。Timed Up and Go Test(以下TUG-T):右手ステッキ使用85秒。長谷川式簡易知能評価スケール23点(記憶で減点)。FIM運動項目:69点。術中トラブルなかったが術後5日を経過しても端座位保持困難,立位保持最大介助であった。また,歩行は両下肢ならびに体幹の伸展位保持に最大介助が必要であり,右立脚期の運動制御課程において1人の療法士の徒手介助のみでは右膝折れを防止できず創部伸張痛を誘発していた。患者自身が能動的に誤差を修正するための負荷量調整ならびに反復回数の獲得を目的として免荷式リフトPOPO(以下:POPO)を使用した歩行練習を開始した。アシスト量について,右立脚期に膝折れする直前で自己にて膝伸展動作可能な負荷量を目視ならびに徒手感覚で判断して設定した。

【結果】術後25日目にPOPOを前方へ軽く押す程度の介助で50mの連続歩行が可能になった。術後30日目に歩行器歩行とトイレ動作が監視で可能に,術後55日目に病棟内シルバーカー歩行自立となり,術後89日で自宅退院となった。退院時評価:疼痛:NRS動作時0~2。右膝関節可動域:屈曲115°,伸展-5°。筋力:右膝伸展0.39Nm/kg,左膝伸展0.6Nm/kg。TUG-T:71秒。6分間歩行距離:164m。FIM運動項目:74点。

【結論】POPOが第3の手として療法士のハンドリングをアシストした結果,右立脚期の運動制御課題について膝折れせず重心を前方移動する運動の誘導を行い,且つ創部痛の発生を来すことなく反復して動作を遂行できた。方向転換時の足の踏みかえや着座前の後方移動時,荷重量を調整しながら視覚からの情報入力による自身と空間との位置関係を調整でき,同時に運動学習が可能なことはPOPO独自の機能である。前進のみの歩行練習に加え,ADL動作に近い環境で実施した正しい運動出力・感覚入力のループの再構築は,運動学習の定着ならびに実用的な移動への転移に繋がったと考える。