[P-MT-45-2] 体幹回旋を伴う上肢運動時の体幹ローカル筋筋活動onsetの検討
Keywords:体幹筋, 上肢拳上, 筋電図
【はじめに,目的】
体幹ローカル筋群に含まれる腹横筋や内腹斜筋は,体幹回旋を伴う上肢運動課題にて主動作筋よりも早期に筋活動を開始し腰仙部の安定性に貢献すると報告されているが,近年体幹回旋を伴わない上肢運動課題においては筋活動開始時点(onset)が主動作筋よりも遅延することが示された。このことから体幹回旋と体幹ローカル筋群のonsetは関連していることが推察されるが,この関連について検討した先行研究は少なく一致した見解は得られていない。よって,本研究の目的は体幹回旋を伴う異なる上肢運動時の体幹ローカル筋onsetについて調査することとした。
【方法】
対象は健常男女13名(21.4±1.5歳,167.2±9.6 cm,57.5±9.3 kg)とした。筋活動の測定にはワイヤレス表面筋電計(日本光電社製)をサンプリング周波数1000 Hzで使用し,対象筋は両側の三角筋前部線維,内腹斜筋-腹横筋重層部(IO-TrA)とした。動作課題は以下の7つとした;体幹右回旋を伴う課題として①右側肩関節屈曲運動,②右側肩関節屈曲+左側肩関節伸展運動,③両手に1 kgの重錘を把持した右側肩関節屈曲運動+左側肩関節伸展運動,体幹左回旋を伴う課題として④左側肩関節屈曲運動,⑤左側肩関節屈曲+右側肩関節伸展運動,⑥両手に1 kgの重錘を把持した左側肩関節屈曲+右側肩関節伸展運動,さらに非体幹回旋課題として⑦両側肩関節屈曲運動を行った。各課題を聴覚刺激後,最大速度にて5試行実施した。onsetはベースラインの筋活動を1SD上回り50 msec持続した始めの時点とし,三角筋前部線維のonsetからIO-TrAのonsetを特定した。統計解析は課題間での比較に反復測定一元配置分散分析を使用し,post-hoc testにはTukey法を用いた。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
左側のIO-TrAのonsetは,体幹右回旋を伴う課題(動作課題①,②,③)において早期に生じた(p<0.05)。対照的に,右側のIO-TrAのonsetは,体幹左回旋を伴う課題(動作課題④,⑤,⑥)において早期に生じた(p<0.05)。しかし同方向の体幹回旋を伴う課題間にて有意差は認められなかった。
【結論】
本結果より,体幹回旋方向とは逆側のIO-TrAのonsetが他の課題におけるonsetよりも早期に生じることが示された。これは,回旋方向とは逆側のIO-TrAの筋活動を早期に開始することで腰仙部の安定性を獲得し,より安全な課題遂行に寄与した結果であるかもしれない。また本結果では同方向の体幹回旋を伴う課題間にて有意差は認められなかった。本研究において体幹回旋モーメントの算出はしていないが,先行研究により本研究で用いた課題間で体幹回旋モーメントが異なることが報告されていることから,IO-TrAのonsetは体幹回旋モーメントに依存しない可能性が考えられる。したがって,IO-TrAのonsetは体幹回旋方向に影響され,体幹回旋モーメントとは関連しないのかもしれない。
体幹ローカル筋群に含まれる腹横筋や内腹斜筋は,体幹回旋を伴う上肢運動課題にて主動作筋よりも早期に筋活動を開始し腰仙部の安定性に貢献すると報告されているが,近年体幹回旋を伴わない上肢運動課題においては筋活動開始時点(onset)が主動作筋よりも遅延することが示された。このことから体幹回旋と体幹ローカル筋群のonsetは関連していることが推察されるが,この関連について検討した先行研究は少なく一致した見解は得られていない。よって,本研究の目的は体幹回旋を伴う異なる上肢運動時の体幹ローカル筋onsetについて調査することとした。
【方法】
対象は健常男女13名(21.4±1.5歳,167.2±9.6 cm,57.5±9.3 kg)とした。筋活動の測定にはワイヤレス表面筋電計(日本光電社製)をサンプリング周波数1000 Hzで使用し,対象筋は両側の三角筋前部線維,内腹斜筋-腹横筋重層部(IO-TrA)とした。動作課題は以下の7つとした;体幹右回旋を伴う課題として①右側肩関節屈曲運動,②右側肩関節屈曲+左側肩関節伸展運動,③両手に1 kgの重錘を把持した右側肩関節屈曲運動+左側肩関節伸展運動,体幹左回旋を伴う課題として④左側肩関節屈曲運動,⑤左側肩関節屈曲+右側肩関節伸展運動,⑥両手に1 kgの重錘を把持した左側肩関節屈曲+右側肩関節伸展運動,さらに非体幹回旋課題として⑦両側肩関節屈曲運動を行った。各課題を聴覚刺激後,最大速度にて5試行実施した。onsetはベースラインの筋活動を1SD上回り50 msec持続した始めの時点とし,三角筋前部線維のonsetからIO-TrAのonsetを特定した。統計解析は課題間での比較に反復測定一元配置分散分析を使用し,post-hoc testにはTukey法を用いた。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
左側のIO-TrAのonsetは,体幹右回旋を伴う課題(動作課題①,②,③)において早期に生じた(p<0.05)。対照的に,右側のIO-TrAのonsetは,体幹左回旋を伴う課題(動作課題④,⑤,⑥)において早期に生じた(p<0.05)。しかし同方向の体幹回旋を伴う課題間にて有意差は認められなかった。
【結論】
本結果より,体幹回旋方向とは逆側のIO-TrAのonsetが他の課題におけるonsetよりも早期に生じることが示された。これは,回旋方向とは逆側のIO-TrAの筋活動を早期に開始することで腰仙部の安定性を獲得し,より安全な課題遂行に寄与した結果であるかもしれない。また本結果では同方向の体幹回旋を伴う課題間にて有意差は認められなかった。本研究において体幹回旋モーメントの算出はしていないが,先行研究により本研究で用いた課題間で体幹回旋モーメントが異なることが報告されていることから,IO-TrAのonsetは体幹回旋モーメントに依存しない可能性が考えられる。したがって,IO-TrAのonsetは体幹回旋方向に影響され,体幹回旋モーメントとは関連しないのかもしれない。