[P-MT-47-4] 当院における前十字靱帯再建術後の歩行獲得について
入院中独歩獲得可能群と入院中独歩獲得不可能群の傾向
Keywords:ACL, 早期理学療法, 疼痛管理
【はじめに,目的】
当院では,前十字靱帯(以下ACL)再建術後5日目での退院をプロトコールとし,入院中独歩獲得を目標としている。リハビリは術前より介入,術後は術当日から開始し,術後1日目に荷重開始している。術後疼痛管理として術後2日目まで大腿神経ブロックを使用し,同時に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用している。
本研究では当院に入院中の独歩獲得可能群と独歩獲得不可能群の傾向を明らかにする事を目的とする。
【方法】
当院で2016年5月から2016年9月までにACL再建術(BTB法)を施行された37名中,入院中独歩獲得可能(以下獲得可群)であった計32名(男22名,女10名:平均年齢22.7±9歳)と入院中独歩獲得不可能(以下獲得不可群)であった計5名(男2名女3名:平均年齢22±10.2歳)を対象とした。半月板損傷や非荷重例は除外した。調査項目は安静時Numerical Rating Scale(以下NRS),Pain Catastrophizing Scale(以下PCS),膝屈曲・伸展可動域(以下ROM),下肢荷重率,独歩獲得期間とした。調査時期は術前,術後1日目,術後5日目とした。統計学的解析にはJSTATversion17.1を使用し,wilcoxonの符号順位検定,対応のあるT検定,多重比較はKruskal-Wallis検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
獲得可群の独歩獲得期間は2.8±1日。NRSは,獲得可群で術後1日目(1.4±2.1)と術後5日目(0.2±0.6)で有意に低下し(p<0.05),獲得不可群では術後1日目(2.8±2.6)と術後5日目(2.8±3.1)で変化が少なく,術後5日目で獲得可群に比べ高い傾向があった。PCSにおいて,獲得可群では,術前(13.5±6.9)と術後1日目(13.5±6.9)で有意差なく(p>0.05),術後5日目(7.7±5.2)で有意に低下する(p<0.05)のに対し,獲得不可群では,すべての期間(術前16.8±9.5,術後1日目21.6±12.7,術後5日目21.6±12.7)において変化が少ない傾向があった。屈曲ROMは,獲得可群が術後1日目(93.1±16.6),術後5日目(117.2±15.2)に対し獲得不可群で術後1日目(70.0±19.7),術後5日目(89.0±7.4)に可動域制限があった。
【結論】
ACL損傷患者は受傷,再建術というイベントを機に様々な機能障害を生じる。その中でも術後鎮痛は早期リハビリを進める上で重要である。疼痛は感覚的側面だけでなく,情動,認知的側面も含めた概念とされており,結果から術前より疼痛に対する破局的思考が強い症例はさらに,術後疼痛,破局的思考を増強させる傾向があった。また,膝前面痛は膝伸展筋力に影響を与える事が報告されており,本研究でも同様に疼痛が歩行能力に影響した可能性がある。Vlaeyenらが報告した恐怖-回避モデルの悪循環への岐路は破局的思考だと言われ,急性期から疼痛管理をし,運動に対する不安を改善させる事が術後鎮痛や機能予後にも重要だと考える。
今後も症例数を増やし,縱断的研究として獲得不可群と比較し早期理学療法の効果や機能予後因子,スポーツ復帰因子を明らかにしていきたい。
当院では,前十字靱帯(以下ACL)再建術後5日目での退院をプロトコールとし,入院中独歩獲得を目標としている。リハビリは術前より介入,術後は術当日から開始し,術後1日目に荷重開始している。術後疼痛管理として術後2日目まで大腿神経ブロックを使用し,同時に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用している。
本研究では当院に入院中の独歩獲得可能群と独歩獲得不可能群の傾向を明らかにする事を目的とする。
【方法】
当院で2016年5月から2016年9月までにACL再建術(BTB法)を施行された37名中,入院中独歩獲得可能(以下獲得可群)であった計32名(男22名,女10名:平均年齢22.7±9歳)と入院中独歩獲得不可能(以下獲得不可群)であった計5名(男2名女3名:平均年齢22±10.2歳)を対象とした。半月板損傷や非荷重例は除外した。調査項目は安静時Numerical Rating Scale(以下NRS),Pain Catastrophizing Scale(以下PCS),膝屈曲・伸展可動域(以下ROM),下肢荷重率,独歩獲得期間とした。調査時期は術前,術後1日目,術後5日目とした。統計学的解析にはJSTATversion17.1を使用し,wilcoxonの符号順位検定,対応のあるT検定,多重比較はKruskal-Wallis検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
獲得可群の独歩獲得期間は2.8±1日。NRSは,獲得可群で術後1日目(1.4±2.1)と術後5日目(0.2±0.6)で有意に低下し(p<0.05),獲得不可群では術後1日目(2.8±2.6)と術後5日目(2.8±3.1)で変化が少なく,術後5日目で獲得可群に比べ高い傾向があった。PCSにおいて,獲得可群では,術前(13.5±6.9)と術後1日目(13.5±6.9)で有意差なく(p>0.05),術後5日目(7.7±5.2)で有意に低下する(p<0.05)のに対し,獲得不可群では,すべての期間(術前16.8±9.5,術後1日目21.6±12.7,術後5日目21.6±12.7)において変化が少ない傾向があった。屈曲ROMは,獲得可群が術後1日目(93.1±16.6),術後5日目(117.2±15.2)に対し獲得不可群で術後1日目(70.0±19.7),術後5日目(89.0±7.4)に可動域制限があった。
【結論】
ACL損傷患者は受傷,再建術というイベントを機に様々な機能障害を生じる。その中でも術後鎮痛は早期リハビリを進める上で重要である。疼痛は感覚的側面だけでなく,情動,認知的側面も含めた概念とされており,結果から術前より疼痛に対する破局的思考が強い症例はさらに,術後疼痛,破局的思考を増強させる傾向があった。また,膝前面痛は膝伸展筋力に影響を与える事が報告されており,本研究でも同様に疼痛が歩行能力に影響した可能性がある。Vlaeyenらが報告した恐怖-回避モデルの悪循環への岐路は破局的思考だと言われ,急性期から疼痛管理をし,運動に対する不安を改善させる事が術後鎮痛や機能予後にも重要だと考える。
今後も症例数を増やし,縱断的研究として獲得不可群と比較し早期理学療法の効果や機能予後因子,スポーツ復帰因子を明らかにしていきたい。