[P-MT-49-1] 股関節疾患患者の骨盤アライメントは立ち上がり能力に影響する
Keywords:股関節疾患, 骨盤アライメント, 立ち上がり
【はじめに・目的】
股関節疾患患者では,股関節の変性と脊椎・骨盤のアライメント異常は相互に関連していることが明らかとされている。このため股関節疾患患者に対して理学療法を展開していくためには,体幹機能や脊椎・骨盤のアライメントにも着目した評価や介入が必要となる。しかし,股関節疾患患者の脊椎・骨盤のアライメント異常が筋力や関節可動域などの下肢機能ならびに動作能力にどのように影響を及ぼしているかを詳細に検討した報告は少なく,不明な点が多い。そこで,本研究の目的は,股関節疾患患者の骨盤アライメントが下肢機能および動作能力に及ぼす影響について検討することとした。
【方法】
対象は片側罹患の股関節疾患患者52名(変形性股関節症36名,大腿骨頭壊死12名,人工関節のゆるみ3名,関節リウマチ1名)であった。当院整形外科医の処方により撮影された立位レントゲン画像からkitajimaらによる回帰式を用いて,骨盤前傾角を測定した。また,動作能力の評価として,10m歩行速度,5回立ち上がりテスト,Timed up and go test(以下,TUG)を実施した。下肢機能の評価として,股関節屈曲角度,股関節伸展角度,股関節外転筋力,脚伸展筋力,膝関節伸展筋力,日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)を測定した。股関節外転筋力は徒手筋力計(日本MEDIX社製),脚伸展筋力と膝関節伸展筋力はIsoforce GT-330(OG技研社製)にて等尺性筋力を測定した。さらに,先行研究より骨盤アライメントは健常者平均27°を基準とし,骨盤前傾角が27°以下の群(A群)と27°以上の群(B群)の2群に分類した。統計には,各評価項目の両群間の比較に対応のないt検定とMann-WhitneyのU検定を用い,統計学的有意基準は5%未満とした。
【結果】
両群の割合は,A群16名(30.8%),B群36名(69.2%)であり,年齢とBMIは両群間で有意差は認めなかった。各評価項目の2群間の比較では,5回立ち上がりテストは,A群(10.6±2.0秒)と比較してB群(9.4±1.8秒)で有意に速かった。また,健側の膝関節伸展筋力は,A群(2.27±0.87Nm/kg)と比較してB群(1.76±0.78Nm/kg)で有意に低値であった。一方,その他の評価項目については,両群間で有意差を認めなかった。
【結論】
本研究の結果から,股関節疾患患者で骨盤後傾位の症例では,骨盤前傾位の症例と比較して,健側の膝関節伸展筋力が大きいにもかかわらず,立ち上がり能力が低下していることが明らかとなった。これは立ち上がり動作の臀部離床までの重心前方移動が骨盤後傾位であるほど困難となるからであると考えられる。以上から,股関節疾患患者の立ち上がり動作能力の向上には,立ち上がり動作時の臀部離床までの前方への重心移動を促すための骨盤前傾・腰椎前彎の動きを獲得するとともに実際の立ち上がり動作でも骨盤の動きを十分に意識することが必要となると考えられた。
股関節疾患患者では,股関節の変性と脊椎・骨盤のアライメント異常は相互に関連していることが明らかとされている。このため股関節疾患患者に対して理学療法を展開していくためには,体幹機能や脊椎・骨盤のアライメントにも着目した評価や介入が必要となる。しかし,股関節疾患患者の脊椎・骨盤のアライメント異常が筋力や関節可動域などの下肢機能ならびに動作能力にどのように影響を及ぼしているかを詳細に検討した報告は少なく,不明な点が多い。そこで,本研究の目的は,股関節疾患患者の骨盤アライメントが下肢機能および動作能力に及ぼす影響について検討することとした。
【方法】
対象は片側罹患の股関節疾患患者52名(変形性股関節症36名,大腿骨頭壊死12名,人工関節のゆるみ3名,関節リウマチ1名)であった。当院整形外科医の処方により撮影された立位レントゲン画像からkitajimaらによる回帰式を用いて,骨盤前傾角を測定した。また,動作能力の評価として,10m歩行速度,5回立ち上がりテスト,Timed up and go test(以下,TUG)を実施した。下肢機能の評価として,股関節屈曲角度,股関節伸展角度,股関節外転筋力,脚伸展筋力,膝関節伸展筋力,日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)を測定した。股関節外転筋力は徒手筋力計(日本MEDIX社製),脚伸展筋力と膝関節伸展筋力はIsoforce GT-330(OG技研社製)にて等尺性筋力を測定した。さらに,先行研究より骨盤アライメントは健常者平均27°を基準とし,骨盤前傾角が27°以下の群(A群)と27°以上の群(B群)の2群に分類した。統計には,各評価項目の両群間の比較に対応のないt検定とMann-WhitneyのU検定を用い,統計学的有意基準は5%未満とした。
【結果】
両群の割合は,A群16名(30.8%),B群36名(69.2%)であり,年齢とBMIは両群間で有意差は認めなかった。各評価項目の2群間の比較では,5回立ち上がりテストは,A群(10.6±2.0秒)と比較してB群(9.4±1.8秒)で有意に速かった。また,健側の膝関節伸展筋力は,A群(2.27±0.87Nm/kg)と比較してB群(1.76±0.78Nm/kg)で有意に低値であった。一方,その他の評価項目については,両群間で有意差を認めなかった。
【結論】
本研究の結果から,股関節疾患患者で骨盤後傾位の症例では,骨盤前傾位の症例と比較して,健側の膝関節伸展筋力が大きいにもかかわらず,立ち上がり能力が低下していることが明らかとなった。これは立ち上がり動作の臀部離床までの重心前方移動が骨盤後傾位であるほど困難となるからであると考えられる。以上から,股関節疾患患者の立ち上がり動作能力の向上には,立ち上がり動作時の臀部離床までの前方への重心移動を促すための骨盤前傾・腰椎前彎の動きを獲得するとともに実際の立ち上がり動作でも骨盤の動きを十分に意識することが必要となると考えられた。