[P-MT-49-2] スタティックストレッチング時間がハムストリングス筋腱複合体に与える即時効果の検討
圧力計を搭載した超音波装置による観点から
Keywords:スタティックストレッチング, 筋硬度の変化, 筋腱複合体
【はじめに,目的】
臨床現場においてスタティックストレッチング(以下SS)は理学療法士にとって実施頻度の高い運動療法手技の一つである。SSにより関節可動域(以下ROM)の改善,疼痛緩和,筋機能改善など様々な効果が得られると報告されている。しかし,これらの研究の多くは徒手による他動的なROMテストをアウトカムとしており,信頼性が低いと指摘されている。近年の報告ではSSによるROMや疼痛改善は軟部組織の柔軟性向上ではなく,痛みや伸長刺激に対する耐性など心理的要因の影響である報告も散見される。そのため他動的ROMテストに代わる評価の指標として,他動的に関節を動かしたときの受動的トルクが推奨されており,また超音波画像診断装置を用いた筋腱移行部の移動量を測定する方法などがあるが,報告数は少ない。さらにSS時間の違いが筋機能に与える即時効果の報告も多々あるが,明確になっていない。そこで,今回,圧力計を搭載した超音波装置を用い,SS時間の違いにおけるSS前後の筋硬度の変化を比較・検証した。
【方法】
対象は下肢,体幹に障害既往がない20歳代の健常男性20名である。対象全例に右ハムストリングスのSSを1分間,2分間,3分間実施した。SS時間の順番は被験者によりランダムで実施し,測定間隔は2日間以上空けた。SS方法はRed Cordを使用し,Suspension Pointは股関節に設定。ストレッチングの強度は痛みを感じない最大伸張位を至適強度とした。SS前,後にハムストリングスの筋硬度を測定した。筋硬度の測定肢位は安静腹臥位,圧力計を搭載した超音波装置で100gf,500gf,1000gf時の筋厚を測定し,筋厚の変化は0.1mm単位で記録し,100gf時の筋厚に対し500gf,1000gf時の筋厚を%で記録した。統計学的検討にはSPSSを用い,SS前後の比較には対応のあるt検定を用いた。有意水準はいずれも5%未満とした。
【結果】
1)ハムストリングス筋硬度はSS前とSS2分間を比較し有意な減少が認められた。2)ハムストリングス筋硬度はSS前とSS1分間,SS3分間と比較したが有意な変化は認められなかった。
【結論】
今回の研究ではSS前と比較し,SS2分間のみ有意な変化が認められ,SS1分間,SS3分間ともに有意な変化は認められなかった。SSの効果として血管断面積および血流量の増加が認められるが,対馬らによると過剰な伸張は循環の途絶,駆血損傷を起こし,関節可動域の損失を招くと報告している。そのため循環不全のため,筋硬度の有意な変化が起こらなかったと考える。また,先行研究では筋の形態学的変化が起こるには合計2分間以上必要であるとの報告もある。今回の研究から先行研究と同様の結果となったが,臨床現場においてSSを実施する際は2分間が適当であると示唆された。
臨床現場においてスタティックストレッチング(以下SS)は理学療法士にとって実施頻度の高い運動療法手技の一つである。SSにより関節可動域(以下ROM)の改善,疼痛緩和,筋機能改善など様々な効果が得られると報告されている。しかし,これらの研究の多くは徒手による他動的なROMテストをアウトカムとしており,信頼性が低いと指摘されている。近年の報告ではSSによるROMや疼痛改善は軟部組織の柔軟性向上ではなく,痛みや伸長刺激に対する耐性など心理的要因の影響である報告も散見される。そのため他動的ROMテストに代わる評価の指標として,他動的に関節を動かしたときの受動的トルクが推奨されており,また超音波画像診断装置を用いた筋腱移行部の移動量を測定する方法などがあるが,報告数は少ない。さらにSS時間の違いが筋機能に与える即時効果の報告も多々あるが,明確になっていない。そこで,今回,圧力計を搭載した超音波装置を用い,SS時間の違いにおけるSS前後の筋硬度の変化を比較・検証した。
【方法】
対象は下肢,体幹に障害既往がない20歳代の健常男性20名である。対象全例に右ハムストリングスのSSを1分間,2分間,3分間実施した。SS時間の順番は被験者によりランダムで実施し,測定間隔は2日間以上空けた。SS方法はRed Cordを使用し,Suspension Pointは股関節に設定。ストレッチングの強度は痛みを感じない最大伸張位を至適強度とした。SS前,後にハムストリングスの筋硬度を測定した。筋硬度の測定肢位は安静腹臥位,圧力計を搭載した超音波装置で100gf,500gf,1000gf時の筋厚を測定し,筋厚の変化は0.1mm単位で記録し,100gf時の筋厚に対し500gf,1000gf時の筋厚を%で記録した。統計学的検討にはSPSSを用い,SS前後の比較には対応のあるt検定を用いた。有意水準はいずれも5%未満とした。
【結果】
1)ハムストリングス筋硬度はSS前とSS2分間を比較し有意な減少が認められた。2)ハムストリングス筋硬度はSS前とSS1分間,SS3分間と比較したが有意な変化は認められなかった。
【結論】
今回の研究ではSS前と比較し,SS2分間のみ有意な変化が認められ,SS1分間,SS3分間ともに有意な変化は認められなかった。SSの効果として血管断面積および血流量の増加が認められるが,対馬らによると過剰な伸張は循環の途絶,駆血損傷を起こし,関節可動域の損失を招くと報告している。そのため循環不全のため,筋硬度の有意な変化が起こらなかったと考える。また,先行研究では筋の形態学的変化が起こるには合計2分間以上必要であるとの報告もある。今回の研究から先行研究と同様の結果となったが,臨床現場においてSSを実施する際は2分間が適当であると示唆された。