[P-MT-52-2] 入院早期に退院時の状態を予測し評価した転倒自己効力感であっても退院時の転倒恐怖感の予測因子となる
Keywords:入院患者, 整形外科疾患, 転倒恐怖感
【はじめに,目的】
転倒自己効力感は身体機能の予測因子とされ,これまで地域在住高齢者を対象にした検討が数多く報告されてきた。しかし,転倒自己効力感の評価特性から入院患者を対象にした報告は少ない。そこで,我々はこれまで整形外科患者を対象に入院早期に退院時の状態を予測し評価した国際版転倒自己効力感尺度(Falls Efficacy Scale-International;FES-I)の併存的妥当性や予測的妥当性を検証し入院患者にも使用可能であることを報告してきた。今回の目的は,退院時の転倒恐怖感を入院早期に退院時の状態を予測し評価したFES-Iや身体機能の観点から検証することである。
【方法】
対象は,整形外科に入院し認知機能が良好で歩行獲得が見込まれた84名(平均年齢70.5±11.8歳,男性32名,女性52名)であった。疾患別では,下肢骨折が41名,脊椎圧迫骨折が20名,骨盤骨折が4名,上肢骨折が5名,変形性脊椎症などその他が14名であった。転倒を原因に受傷した者は58名であった。調査項目は,入院前Life-space assessment(LSA),入院後に10m歩行を獲得した時点でのFES-Iおよび同時期に評価した病棟での生活空間(Nursing home life-space diameter;NHLSD),Timed up and go test(TUG),疼痛(Numerical Rating Scale;NRS)とした。また,退院時に転倒恐怖感の有無を聴取した。
統計解析は,退院時の転倒恐怖感の有無を従属変数,性別,入院前LSA,FES-I,NHLSD,TUG,NRSを独立変数とした尤度比変数増加法によるロジスティック回帰分析を行った(有意水準5%)。また,抽出された因子にはReceiver-Operating-Characteristic(ROC)曲線にてカットオフ値とArea under the curve(AUC)を求めた。
【結果】
10m歩行を獲得した時点の入院日からの平均日数は22.2±16.4日であった。各調査項目の中央値(範囲)は,FES-Iが41.5点(17-64),NHLSDが42.0点(12-100),NRSが2(0-9)であった。入院前LSAは74.2±27.5(平均値±標準偏差)点,TUGは18.9±9.8秒であった。また,退院時に転倒恐怖感を抱いていた者は43名であった。
ロジスティック回帰分析の結果,退院時の転倒恐怖感に影響する因子としてFES-I(odds比1.06,95%信頼区間1.02-1.10)のみが抽出された(p<0.01)。FES-IのROC曲線によるカットオフ値は,40.5点(感度67%,特異度61%,AUC 0.67)であった。また,FES-I得点が41点以上での退院時転倒恐怖感の判別的中率は,男性60%,女性67%,受傷原因では転倒が59%,それ以外が77%であった。
【結論】
McAuleyら(1997)は地域在宅高齢者を対象に転倒自己効力感が転倒恐怖感の予測因子となることを報告しており,今回,入院早期から退院時の状態を予測し評価したFES-Iにおいても同様の結果が得られた。FES-Iのカットオフ値はMoreiraら(2016)の地域在住高齢者を対象とした23点より高かった。今回の対象も,退院後カットオフ値が変化する可能性があり,経時的変化の検証が必要である。
転倒自己効力感は身体機能の予測因子とされ,これまで地域在住高齢者を対象にした検討が数多く報告されてきた。しかし,転倒自己効力感の評価特性から入院患者を対象にした報告は少ない。そこで,我々はこれまで整形外科患者を対象に入院早期に退院時の状態を予測し評価した国際版転倒自己効力感尺度(Falls Efficacy Scale-International;FES-I)の併存的妥当性や予測的妥当性を検証し入院患者にも使用可能であることを報告してきた。今回の目的は,退院時の転倒恐怖感を入院早期に退院時の状態を予測し評価したFES-Iや身体機能の観点から検証することである。
【方法】
対象は,整形外科に入院し認知機能が良好で歩行獲得が見込まれた84名(平均年齢70.5±11.8歳,男性32名,女性52名)であった。疾患別では,下肢骨折が41名,脊椎圧迫骨折が20名,骨盤骨折が4名,上肢骨折が5名,変形性脊椎症などその他が14名であった。転倒を原因に受傷した者は58名であった。調査項目は,入院前Life-space assessment(LSA),入院後に10m歩行を獲得した時点でのFES-Iおよび同時期に評価した病棟での生活空間(Nursing home life-space diameter;NHLSD),Timed up and go test(TUG),疼痛(Numerical Rating Scale;NRS)とした。また,退院時に転倒恐怖感の有無を聴取した。
統計解析は,退院時の転倒恐怖感の有無を従属変数,性別,入院前LSA,FES-I,NHLSD,TUG,NRSを独立変数とした尤度比変数増加法によるロジスティック回帰分析を行った(有意水準5%)。また,抽出された因子にはReceiver-Operating-Characteristic(ROC)曲線にてカットオフ値とArea under the curve(AUC)を求めた。
【結果】
10m歩行を獲得した時点の入院日からの平均日数は22.2±16.4日であった。各調査項目の中央値(範囲)は,FES-Iが41.5点(17-64),NHLSDが42.0点(12-100),NRSが2(0-9)であった。入院前LSAは74.2±27.5(平均値±標準偏差)点,TUGは18.9±9.8秒であった。また,退院時に転倒恐怖感を抱いていた者は43名であった。
ロジスティック回帰分析の結果,退院時の転倒恐怖感に影響する因子としてFES-I(odds比1.06,95%信頼区間1.02-1.10)のみが抽出された(p<0.01)。FES-IのROC曲線によるカットオフ値は,40.5点(感度67%,特異度61%,AUC 0.67)であった。また,FES-I得点が41点以上での退院時転倒恐怖感の判別的中率は,男性60%,女性67%,受傷原因では転倒が59%,それ以外が77%であった。
【結論】
McAuleyら(1997)は地域在宅高齢者を対象に転倒自己効力感が転倒恐怖感の予測因子となることを報告しており,今回,入院早期から退院時の状態を予測し評価したFES-Iにおいても同様の結果が得られた。FES-Iのカットオフ値はMoreiraら(2016)の地域在住高齢者を対象とした23点より高かった。今回の対象も,退院後カットオフ値が変化する可能性があり,経時的変化の検証が必要である。