[P-NV-02-2] 長下肢装具を用いた片麻痺者の歩行練習における,股関節伸展筋活動の力学的考察
Keywords:脳卒中片麻痺, 長下肢装具, 三次元動作解析
【はじめに,目的】
片麻痺者に対し長下肢装具を用いて歩行練習をする際,麻痺側荷重応答期における股関節伸展筋の活動を促すことは目的の一つである。歩行中に股関節伸展筋の活動を感じられないことをしばしば経験するが,原因の一つとして股関節と足部の位置関係の影響が考えられる。特に荷重応答期としては足部に対し股関節がより前方に位置する症例は伸展筋が働きにくいことが多く,このアライメントでは床反力ベクトルが股関節の後方を通り,伸展モーメントが働きにくいのではないかと推測している。本研究の目的は,この臨床的推測の妥当性について三次元動作解析を用いて確認すること,確認した力学的視点を基に歩行練習で股関節伸展筋の活動を促す可能性を考察することである。
【方法】
対象は2012年~2016年に当院入院中で,計測当日に長下肢装具を用いて歩行練習を行っていた片麻痺者の中から,経験10年以上の理学療法士2名が視覚的歩行分析と歩行中の筋活動の触診を行い①麻痺側荷重応答期としては足部に対し股関節がより前方に位置し,股関節伸展筋が働かない4例(以下,伸筋-群)②麻痺側荷重応答期に足部に対し股関節がより前方とならず,股関節伸展筋が働いた5例(以下,伸筋+群)を選出した。伸筋-群は右片麻痺2例,左片麻痺2例,平均年齢55.2(46~63)歳,全例Brunnstrom StageIIIであった。伸筋+群は右片麻痺4例,左片麻痺1例 平均年齢44.4(30~63)歳,Brunnstrom StageIIIが4例,IVが1例であった。計測機器はVICON512,キスラー社製床反力計を使用し,反射マーカーを両側肩峰・股関節・膝関節・足関節・第5中足骨に貼付け,長下肢装具を用いた平行棒での自由歩行を計測した。装具の足継手は全例底屈制動で,背屈角度は症例毎に調整し,膝継手は全例0°固定とした。解析データは,剛体リンクモデルにより股関節屈伸モーメントを算出し,麻痺側荷重応答期について,伸展モーメントが働く時間の割合を,各症例で計測できた最初の3歩行周期分算出したものとした。さらに伸筋-群と伸筋+群における麻痺側荷重応答期に伸展モーメントが働く割合について,3歩行周期の中央値を算出し,Mann-Whittney U検定を行った。統計解析ソフトはJSTATを使用した。
【結果】
麻痺側荷重応答期に伸展モーメントが働く割合の中央値は,伸筋-群で症例①0%②0%③4.3%④0%,伸筋+群で症例①35.9%②92.1%③45%④45.1%⑤77.8%であり,両群間に有意差が認められた(p<0.01)。
【結論】
結果から臨床的推測の妥当性が確認された。麻痺側荷重応答期に股関節伸展筋が働かない症例では,伸展モーメントの働く割合が優位に少なく,これは床反力ベクトルが股関節の後方を通ることと関連する可能性が高い。理学療法では,足部に対する股関節の位置を調整し,床反力ベクトルが股関節の前方を通るよう誘導することで,股関節伸展筋の活動を促せる可能性があると考える。
片麻痺者に対し長下肢装具を用いて歩行練習をする際,麻痺側荷重応答期における股関節伸展筋の活動を促すことは目的の一つである。歩行中に股関節伸展筋の活動を感じられないことをしばしば経験するが,原因の一つとして股関節と足部の位置関係の影響が考えられる。特に荷重応答期としては足部に対し股関節がより前方に位置する症例は伸展筋が働きにくいことが多く,このアライメントでは床反力ベクトルが股関節の後方を通り,伸展モーメントが働きにくいのではないかと推測している。本研究の目的は,この臨床的推測の妥当性について三次元動作解析を用いて確認すること,確認した力学的視点を基に歩行練習で股関節伸展筋の活動を促す可能性を考察することである。
【方法】
対象は2012年~2016年に当院入院中で,計測当日に長下肢装具を用いて歩行練習を行っていた片麻痺者の中から,経験10年以上の理学療法士2名が視覚的歩行分析と歩行中の筋活動の触診を行い①麻痺側荷重応答期としては足部に対し股関節がより前方に位置し,股関節伸展筋が働かない4例(以下,伸筋-群)②麻痺側荷重応答期に足部に対し股関節がより前方とならず,股関節伸展筋が働いた5例(以下,伸筋+群)を選出した。伸筋-群は右片麻痺2例,左片麻痺2例,平均年齢55.2(46~63)歳,全例Brunnstrom StageIIIであった。伸筋+群は右片麻痺4例,左片麻痺1例 平均年齢44.4(30~63)歳,Brunnstrom StageIIIが4例,IVが1例であった。計測機器はVICON512,キスラー社製床反力計を使用し,反射マーカーを両側肩峰・股関節・膝関節・足関節・第5中足骨に貼付け,長下肢装具を用いた平行棒での自由歩行を計測した。装具の足継手は全例底屈制動で,背屈角度は症例毎に調整し,膝継手は全例0°固定とした。解析データは,剛体リンクモデルにより股関節屈伸モーメントを算出し,麻痺側荷重応答期について,伸展モーメントが働く時間の割合を,各症例で計測できた最初の3歩行周期分算出したものとした。さらに伸筋-群と伸筋+群における麻痺側荷重応答期に伸展モーメントが働く割合について,3歩行周期の中央値を算出し,Mann-Whittney U検定を行った。統計解析ソフトはJSTATを使用した。
【結果】
麻痺側荷重応答期に伸展モーメントが働く割合の中央値は,伸筋-群で症例①0%②0%③4.3%④0%,伸筋+群で症例①35.9%②92.1%③45%④45.1%⑤77.8%であり,両群間に有意差が認められた(p<0.01)。
【結論】
結果から臨床的推測の妥当性が確認された。麻痺側荷重応答期に股関節伸展筋が働かない症例では,伸展モーメントの働く割合が優位に少なく,これは床反力ベクトルが股関節の後方を通ることと関連する可能性が高い。理学療法では,足部に対する股関節の位置を調整し,床反力ベクトルが股関節の前方を通るよう誘導することで,股関節伸展筋の活動を促せる可能性があると考える。