[P-NV-08-2] 回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者のADL回復に関連する要因
―後ろ向きコホート研究―
Keywords:脳卒中, FIM, 単位数
【はじめに,目的】
回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟は,日常生活動作(activities of daily living:ADL)向上による寝たきり防止と家庭復帰を目的としたリハプログラムを作成し,これに基づくリハを集中的に行う病棟であるとされている。脳卒中後のADLの回復に影響を及ぼす因子は様々なものが挙げられている。これらの数多くの先行研究は,ADLの回復に影響する患者側の因子を検討しており,治療者側の因子について検討していない。よって,本研究の目的は,脳卒中患者のADL回復の対策として,PT,OTおよびSTの介入量の増加が有効であるかどうか検討することである。
【方法】
本研究のデザインは,後ろ向きコホート研究とした。取り込み基準は,蓄積された患者データベースを用いて2008年4月から2013年3月までにリハビリテーション病院に入院した脳梗塞および脳出血患者とした。除外基準は,術後に合併症が発生して急性期病院に転院された者およびくも膜下出血患者とした。測定項目は,基本医学情報,各療法士の介入量およびADLとした。基本医学情報は,性別,年齢,入院までの期間,在院日数,回復期入院病名,高次脳機能障害の有無およびBody Mass Index(以下,BMI)とした。各療法士の介入量は,入院中に施行されたリハの総単位数(PT,OT,ST),1日の平均単位数(PT,OT,ST)とした。ADLは,入院時と退院時のFIMとした。辻らの報告を参考に,本研究では,入院時FIM運動項目50点未満群をFIM運動項目低群,50点以上70点未満群をFIM運動項目中群,70点以上群をFIM運動項目高群と分類した。統計解析として,各群のFIM利得に影響する因子の検討を行うために,ロジスティック回帰分析を行った。抽出された因子ごとにROC曲線を用いて尤度比が最大となるカットオフ値を算出した。各項目の事前確率を求め,ベイズの定理に基づき,変数ごとに事後確率を算出した。
【結果】
2008年4月から2013年3月の間に取り込み基準に合致した対象者は,823名であった。除外患者は,急性期病院への転院した者が97名,くも膜下出血である者が69名であった。最終的に本研究の対象者は,657名であった。重症度別の対象者は,低群が297名,中群が190名,高群が170名であった。対象者と抽出因子数は,低群5因子,中群2因子,高群3因子であった。3群に共通の因子は,PTとOTの総単位数であった。各群におけるこのカットオフ値・陽性尤度比・陰性尤度比・事後確率は,低群で747単位以上・2.26・0.63・71.0%であり,中群で495単位以上・1.5・0.67・62.0%であり,高群で277単位以上・1.86・0.45・65.0%であった。
【結論】
入院時のADL自立度に関わらず,PTとOTの総単位数はADLの回復に有意な影響を及ぼす。また,重症の者ほど回復は予測しやすいが,より多くの変数でなければ精度の高い予測は難しい。
回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟は,日常生活動作(activities of daily living:ADL)向上による寝たきり防止と家庭復帰を目的としたリハプログラムを作成し,これに基づくリハを集中的に行う病棟であるとされている。脳卒中後のADLの回復に影響を及ぼす因子は様々なものが挙げられている。これらの数多くの先行研究は,ADLの回復に影響する患者側の因子を検討しており,治療者側の因子について検討していない。よって,本研究の目的は,脳卒中患者のADL回復の対策として,PT,OTおよびSTの介入量の増加が有効であるかどうか検討することである。
【方法】
本研究のデザインは,後ろ向きコホート研究とした。取り込み基準は,蓄積された患者データベースを用いて2008年4月から2013年3月までにリハビリテーション病院に入院した脳梗塞および脳出血患者とした。除外基準は,術後に合併症が発生して急性期病院に転院された者およびくも膜下出血患者とした。測定項目は,基本医学情報,各療法士の介入量およびADLとした。基本医学情報は,性別,年齢,入院までの期間,在院日数,回復期入院病名,高次脳機能障害の有無およびBody Mass Index(以下,BMI)とした。各療法士の介入量は,入院中に施行されたリハの総単位数(PT,OT,ST),1日の平均単位数(PT,OT,ST)とした。ADLは,入院時と退院時のFIMとした。辻らの報告を参考に,本研究では,入院時FIM運動項目50点未満群をFIM運動項目低群,50点以上70点未満群をFIM運動項目中群,70点以上群をFIM運動項目高群と分類した。統計解析として,各群のFIM利得に影響する因子の検討を行うために,ロジスティック回帰分析を行った。抽出された因子ごとにROC曲線を用いて尤度比が最大となるカットオフ値を算出した。各項目の事前確率を求め,ベイズの定理に基づき,変数ごとに事後確率を算出した。
【結果】
2008年4月から2013年3月の間に取り込み基準に合致した対象者は,823名であった。除外患者は,急性期病院への転院した者が97名,くも膜下出血である者が69名であった。最終的に本研究の対象者は,657名であった。重症度別の対象者は,低群が297名,中群が190名,高群が170名であった。対象者と抽出因子数は,低群5因子,中群2因子,高群3因子であった。3群に共通の因子は,PTとOTの総単位数であった。各群におけるこのカットオフ値・陽性尤度比・陰性尤度比・事後確率は,低群で747単位以上・2.26・0.63・71.0%であり,中群で495単位以上・1.5・0.67・62.0%であり,高群で277単位以上・1.86・0.45・65.0%であった。
【結論】
入院時のADL自立度に関わらず,PTとOTの総単位数はADLの回復に有意な影響を及ぼす。また,重症の者ほど回復は予測しやすいが,より多くの変数でなければ精度の高い予測は難しい。