The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-09] ポスター(神経)P09

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-09-4] 三次元動作解析を用いた脊髄小脳変性症患者の歩行特性の検討

浅倉 靖志1, 菊地 豊1, 美原 盤2, 河島 則天3 (1.公益財団法人脳血管研究所美原記念病院神経難病リハビリテーション科, 2.同神経内科, 3.国立障害者リハビリテーションセンター研究所)

Keywords:脊髄小脳変性症, 歩行障害, 三次元動作解析

【はじめに】

脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)は,運動失調を主症候とした病態を呈する神経変性疾患の総称である。SCD患者は重症度/進行度や神経変性の生じる領域などの影響により,多様な歩行障害を呈することが知られているが,その特徴を明確に記述したものは少ない。本研究では,SCD患者と健常成人の歩行分析を実施し,両群の対比およびSCDの重症度による比較の観点から,SCDの歩行障害の特徴を検討することを目的とした。


【方法】

対象は当院に2008年から2016年8月までに入院および外来リハビリテーションを実施したSCD患者30名(病型:遺伝性14名・非遺伝性16名,年齢:61.9±11.5歳,罹病期間:7.4±4.8年,SARAの歩行スコア:3.6±1.7点)および健常成人17名(年齢:23.2±2.3歳)とした。

方法は,自己快適速度での歩行とし,全身に貼付した39点のマーカーの座標データを三次元動作解析装置で取得し,床反力計より床反力を計測した。歩行パラメーターとして歩行速度,歩幅,歩行率,両脚支持期,歩幅非対称性をそれぞれ算出した。分析はSARA歩行スコアと各歩行パラメーターの相関分析を行った。また,健常成人を対照群とし,SARA歩行項目の軽症群(1~3点,n=16)と重症群(4~7点,n=14)の3群に分け,多重比較検定により各歩行パラメーターを比較した。統計的水準は5%とした。

【結果】

SARA歩行スコアは歩行速度(R=-0.58)と負の相関を示した。歩行速度は歩幅(r=0.79)と歩行率(r=0.73)と正の相関を示した。歩行率は両脚支持期(r=-0.79)と負の相関を示した。

対照群と軽症群と重症群の3群で比較すると,歩行速度(対照群1.3±0.2m/秒,軽症群0.8±0.2m/秒,重症群0.4±0.3m/秒)と歩幅(対照群0.7±0.1m,軽症群0.4±0.1m,重症群0.3±0.1m)は各群で差を示した。歩行率(対照群115.5±8.4歩/分,軽症群140.2±20.6歩/分,重症群96.2±50.1歩/分)は軽症群と重症群間のみ差を示した。両脚支持期(対照群18.5±2.1%,軽症群12.0±2.4%,重症群22.4±9.6%)は,対照群と軽症群間及び軽症群と重症群間に差を示した。歩幅非対称性(対照群5.4±3.1%,軽症群10.1±8.9%,重症群26.9±20.5%)では対照群と重症群間及び軽症群と重症群間に差を示した。

【結論】

SCD患者では重症度に応じて歩行速度が停滞する結果となり,軽症群は,歩幅の低下に対し,歩行率を増加させることで歩行速度を保つ戦略をとっていると考えられる。一方,重症群は歩幅,歩行率の減少による著しい歩行速度の低下がみられており,歩幅の非対称性の増加と両脚支持期の延長が顕著であった。本研究を通して,SCD患者の歩行障害に関して,どのような側面に重症度に応じた特徴が現れるかが明確となり,医療者の観察による主観的なSARAスコアではとらえられない歩行障害の特徴把握が可能となった。この結果は,歩行障害の特徴に応じた治療介入を考える上で重要な資料となるものと考えられる。