The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-10] ポスター(神経)P10

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-10-4] 回復期病棟脳卒中患者におけるFugl-meyer assessment各項目得点とFIM運動項目との関係

山下 浩樹, 渡邉 充 (いわてリハビリテーションセンター)

Keywords:Fugl-meyer assessment, 回復期病棟, 日常生活動作能力

【はじめに,目的】

Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA)は脳卒中患者の機能障害の総合評価として世界で最も有名なものの1つであり,脳卒中治療ガイドライン2015においても用いることが勧められている評価法である。FMAは226点満点であり,機能障害を多面的に評価できる一方,総得点のみの情報では患者の日常生活動作などの状況が見えにくい面もある。これは上肢・下肢・バランスなど各項目の得点を単純に合計し総得点としているためと思われる。これまでも各項目の得点パターンが重要という指摘がなされてきたが,各項目がどの程度,日常生活動作に関連するか調査したものはほとんど見られない。今回はFMA各項目得点とFunctional Independence Measure運動項目合計点(以下,FIM運動項目)との関係を調査し,FMAのどの項目が日常生活動作にどの程度重要となってくるのか明らかにすることを目的とした。



【方法】

対象は平成27年度に当センター回復期病棟に入院した脳卒中患者96名とした。入院1ヶ月後の「FMA各項目得点および総得点」と「FIM運動項目」との間の相関係数をそれぞれ求めた(有意水準は5%とした)。また,FIM運動項目を従属変数,FMA各項目を独立変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行い,FIM運動項目とFMA各項目との関係を調べた。



【結果】

相関係数については各項目とも有意な相関が見られた(p<0.01)。相関の強さは,相関係数が0.4~0.7の範囲となった“かなり相関がある”項目は「B.手関節」「C.手」「D.協調性/スピード(上肢)」「F.協調性/スピード(下肢)」「I.他動可動域」「J.関節痛」であり相関係数が0.7を超えた“かなり強い相関がある”項目は「A.肩/肘/前腕」「E.股/膝/足」「G.バランス」「H.感覚」「総得点」であった。重回帰分析の結果,独立変数としてFMAの「G.バランス」項目が選択された。重回帰式は(FIM運動項目)=5.625×(FMAバランス項目)+8.182であり,自由度調整済決定係数R2は0.802であった。



【結論】

相関の強さは上肢に関連した項目よりも下肢やバランス能力の方が相対的に強い様子も見受けられた。これはFIMに代表される日常生活動作評価では,下肢体幹能力が優れていれば上肢能力が低くても高得点が可能であることも関係しているのではないかと考えられた。また,関節可動域と疼痛の相関が比較的低いにもかかわらず,この2項目だけでFMA総得点の約39%にあたる88点が配点されているため,総得点だけでは,患者の状況が理解しにくくなっている原因となっている可能性が考えられた。重回帰分析では,FMAバランス得点がFIM運動項目に対し大きな影響があることを示す結果が得られた。今後,臨床においてFMA評価を行う際は,上肢や関節可動域,疼痛に関連した項目はFIMとの関係が比較的少ない一方で,バランス能力が総得点以上に重要な可能性があり,日常生活動作能力低下の原因を検討する際に考慮が必要である。