第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-12] ポスター(神経)P12

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-12-4] 急性期重症脳卒中患者における麻痺側大腿四頭筋筋厚低下に関連する因子の検討

林 雄李1, 後藤 圭1, 山内 康太1, 熊谷 謙一1, 小柳 靖裕1, 荒川 修治2 (1.社会医療法人製鉄記念八幡病院リハビリテーション部, 2.社会医療法人製鉄記念八幡病院脳卒中・神経センター)

キーワード:急性期重症脳卒中, 筋厚, 超音波

【目的】急性期脳卒中患者において骨格筋量の減少は機能予後に影響を及ぼすという報告があり,廃用性筋萎縮を予防するため早期リハビリテーションが推奨されている。このことから理学療法士が筋萎縮を防ぐために早期より介入を行なう意義は重要である。近年,超音波診断装置を用いて筋萎縮の経時的変化を観察した報告がみられるが,急性期脳卒中患者において大腿四頭筋筋厚低下に関連する因子を検討した研究は少ない。今回,入院時National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)scoreが8点以上の重症脳卒中患者に対し,超音波を用いて麻痺側・非麻痺側筋厚を経時的に測定し,筋厚低下に関連する因子を検討した。

【方法】対象は2016年3月から7月に当院へ入院した急性期脳卒中患者112名のうち,脳卒中発症前のmodifified Rankin Scaleが0,入院時のNIHSS scoreが8点以上の14名(男性:9名)である。筋厚の測定には超音波診断装置Logic S8(GE Healthcare社製)を用いた。超音波はBモードを用い周波数は8MHzとした。仰臥位で解剖学的肢位とし,測定部位は上前腸骨棘から膝蓋骨の上縁を結んだ中点とした。筋厚は中間広筋遠位端から大腿直筋近位端とした。同一部位の計測を誤差が5%未満になるまで行い,3回の平均値を採用した。測定は理学療法士が実施し,初回,1週,2週,3週時に行なった。初回数値-3週時の筋厚(%)を算出し,中央値(-8.96)で非低下群(range:-8.95_+14,n=7),低下群(range:-8.96_-40.64,n=7)の2群に分け,調査項目の比較した。項目は年齢,体重,身長,BMI,入院時NIHSS,入院時麻痺側下肢NIHSS,1-3週時麻痺側・非麻痺側筋厚,1・3週時PT・OTリハビリ単位数を比較した。統計解析はMann-Whitney検定を用いた。(p<0.05)

【結果】非低下群,低下群の中央値は初回筋厚(mm)で38.1,26.9,3週時は42.7,19.3であった。3週後の変化割合(%)は-1.81,-23.63であった。両群間に有意な差を認めた項目は,中央値(IQR:最小値-最大値)は年齢(歳)59.0(IQR:50.0-76.0),83.0(IQR:68.0-87.0),体重(kg)71.7(IQR:65.5-81.0),51.6(IQR:35.3-65.1),入院時NIHSS(点)15.0(IQR:10.0-16.0),22.0(IQR:14.0-25.0),2週時筋厚(%)98(IQR:82-100),67(IQR:62-95),3週時筋厚(%)98(IQR:93-101),76(IQR:76-82),3週時単位数85.0(IQR:67.0-90.0),49.0(IQR:42.0-61.0)であった(p<0.05)。

【結論】本結果は年齢,体重,入院時NIHSS,2・3週時麻痺側筋厚,3週時単位数に有意な差が認められ,先行研究と類似していた。また,リハビリテーションの介入は脳卒中治療ガイドラインに基づき行なったが,単位数に有意な差を認めたことから,早期離床に加え,電気刺激など介入頻度の増加が必要と考える。重症脳卒中患者は高齢であるほど筋萎縮が進行し,回復遅延や機能予後に影響を及ぼすかもしれない。