The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-13] ポスター(神経)P13

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-13-2] 素早い体幹運動がもたらす,片麻痺患者の歩幅と歩行率への影響について

村上 明香理1, 岩田 晃2 (1.大阪府立急性期・総合医療センター, 2.大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科)

Keywords:片麻痺, 歩幅, ケイデンス

【はじめに,目的】

歩行速度は実用歩行獲得のための重要な要素の1つで,歩幅と歩行率の積によって決定される。我々は,昨年度の本学会にて,座位で体幹を素早く動かす運動が片麻痺患者の歩行速度の向上に有効な手段であることを報告した。しかし,歩幅の延長,もしくは歩行率の増加のいずれによって歩行速度が向上したかについては明らかにできていない。先行研究では,片麻痺患者の通常歩行速度は,歩行率ではなく,歩幅の影響を受けることが報告されている。そこで,体幹を素早く動かす運動が,片麻痺患者の歩幅あるいは歩行率に与える影響を検証することを,本研究の目的とした。




【方法】

当センター回復期病棟に入院中で,脳梗塞または脳出血により片麻痺を呈し,杖歩行または独歩が監視以上で可能である10名(男性8名,女性2名,年齢64.8±10.9歳,発症日数55.4±36.2日,下肢BRSはIIIが1名,Vが5名,VIが4名,Fugl-Meyerは下肢機能29.4±5.6点,総合計204.3±16.0点)を対象とした。

すべての対象者に,体幹を側方に素早く動かすmodified Seated Side Tapping(以下mSST)運動を実施し,運動実施前後の歩行速度を測定した。

mSST運動は,背もたれのない台に両上肢を組んで座った状態を開始肢位とし,上腕中央外側から10cm離して左右に設置した台までを目安に,左右交互に10回,出来るだけ速く体幹を動かすこととした。運動方法は口頭説明に加え,検者が動作を提示した。15秒間の休憩を挟み3施行行った。歩行速度は,通常速度で8m歩行路の中央5mの歩行に要した時間から算出した。また歩幅を,歩行の様子を側方よりデジタルビデオカメラにて撮影し,ビデオ画面の中央4歩に要した距離から,画像解析ソフトImageJを用いて計測した。また歩行率を,ビデオ映像より算出した。

統計処理は歩行速度,歩幅,歩行率について,介入前後の比較を,対応のあるt検定を用いて行った。




【結果】

mSST運動実施前の歩行速度は0.88±0.21m/sec,実施後は0.97±0.19m/secであった(p=0.003)。また歩幅は,実施前は49.1±7.8cm,実施後は51.6±6.9cmで,mSST運動実施前後での歩幅の差は2.5±2.3cmであり,有意な改善がみられた(p=0.007)。歩行率は,実施前103.1±17.4steps/min,実施後109.6±21.9steps/minで有意な変化がみられた(p=0.012)。




【結論】

mSST運動前後で,歩幅の延長だけではなく,歩行率の増加もみられた。先行研究の報告とは異なり,本研究では歩幅と歩行率に変化がみられたことから,体幹を素早く動かす運動は,歩幅に加えて歩行率にも影響を与える可能性が示された。また歩行速度での臨床的意義のある最小変化量(MCID)は0.08m/sec以上とされており,本研究では0.09m/secの向上が認められたことから,本研究での歩行速度の変化は有意であると考えられる。