[P-NV-15-4] 慢性期脳卒中患者における歩行の非対称性と活動との関連について
Keywords:脳卒中, 慢性期, 非対称性
【はじめに,目的】
脳卒中患者は,半身に運動麻痺や感覚障害などの機能障害を呈することから,その姿勢や動作は左右非対称となりやすい。特に慢性期では,非対称性を有した状態で長期にわたり生活を送ることになる。しかし,非対称性は歩行効率の低下や,関節障害などの二次障害につながる可能性が指摘されている。さらに非対称性が強い歩容は,外観上の問題から活動を制限する可能性もある。そこで本研究は,発症から半年以上を経た慢性期脳卒中患者を対象に,非対称性と活動との関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,地域在住の75歳未満の初発の脳卒中患者21名(平均67.3歳,女性9名)で,発症から6ヶ月以上経過し,自宅内の歩行が自立している者(装具や杖の使用は可)とした。除外基準は,意思疎通が困難な者,歩行に重大な影響を及ぼす循環器疾患や糖尿病による末梢神経障害,パーキンソン病等の他の神経疾患を有する者,発症前に整形外科疾患を有する者,発症後に骨折の受傷が有る者とした。非対称性は姿勢と動作から評価を行った。姿勢の非対称性として静止立位における麻痺側下肢への荷重の割合(以下,立位非対称性)を,動作の非対称性として歩行の非対称性(以下,歩行非対称性)を測定した。歩行非対称性は,5m歩行中の定常状態となった3歩行周期における非麻痺側に対する麻痺側単脚支持時間の比の平均値とした。また,活動の評価項目として,日常生活の自立度(FIM:Functional Independence measure)(126点満点),生活範囲(LSA:Life Space Assessment)(120点満点)を測定した。加えて,慢性期脳卒中患者の活動との関連が報告されている身体機能障害(SIAS:Stroke Impairment Assessment Set)(76点満点),バランス(BBS:Berg Balance Scale)(56点満点),転倒に対する自己効力感(FES:Fall Efficacy Scale)(40点満点)を用いた。統計学的分析は,それぞれの指標についてSpearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は,発症後平均86.6±72.5ヶ月経過し,立位非対称性は平均41.0±7.2%,歩行非対称性は0.7±0.2,FIMは114.5±6.4点,LSAは43.8±19.9点,SIASは54.5±13.4点,BBSは41.8±9.7点,FESは31.7±7.6点,であった。相関分析の結果,FIMはBBSおよびFESと強い相関(それぞれr=0.80,0.84)を,SIASと中等度の相関(r=0.62)を有意に認め,歩行非対称性とは有意な中等度の相関関係を認めた(r=0.52)。LSAはFESと強い相関(r=0.89)を,BBSと中等度の相関(r=0.68)を有意に認め,歩行非対称性との間には有意な中等度の相関関係を認めた(r=0.43)。立位非対称性は,FIMとLSAとの間に有意な相関関係を認めなかった。
【結論】
歩行非称性は,FIMおよびLSAと中等度の相関を認めた。よって慢性期脳卒中患者の活動を維持・改善するためには,歩行の非対称性にも注目すべきである。
脳卒中患者は,半身に運動麻痺や感覚障害などの機能障害を呈することから,その姿勢や動作は左右非対称となりやすい。特に慢性期では,非対称性を有した状態で長期にわたり生活を送ることになる。しかし,非対称性は歩行効率の低下や,関節障害などの二次障害につながる可能性が指摘されている。さらに非対称性が強い歩容は,外観上の問題から活動を制限する可能性もある。そこで本研究は,発症から半年以上を経た慢性期脳卒中患者を対象に,非対称性と活動との関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は,地域在住の75歳未満の初発の脳卒中患者21名(平均67.3歳,女性9名)で,発症から6ヶ月以上経過し,自宅内の歩行が自立している者(装具や杖の使用は可)とした。除外基準は,意思疎通が困難な者,歩行に重大な影響を及ぼす循環器疾患や糖尿病による末梢神経障害,パーキンソン病等の他の神経疾患を有する者,発症前に整形外科疾患を有する者,発症後に骨折の受傷が有る者とした。非対称性は姿勢と動作から評価を行った。姿勢の非対称性として静止立位における麻痺側下肢への荷重の割合(以下,立位非対称性)を,動作の非対称性として歩行の非対称性(以下,歩行非対称性)を測定した。歩行非対称性は,5m歩行中の定常状態となった3歩行周期における非麻痺側に対する麻痺側単脚支持時間の比の平均値とした。また,活動の評価項目として,日常生活の自立度(FIM:Functional Independence measure)(126点満点),生活範囲(LSA:Life Space Assessment)(120点満点)を測定した。加えて,慢性期脳卒中患者の活動との関連が報告されている身体機能障害(SIAS:Stroke Impairment Assessment Set)(76点満点),バランス(BBS:Berg Balance Scale)(56点満点),転倒に対する自己効力感(FES:Fall Efficacy Scale)(40点満点)を用いた。統計学的分析は,それぞれの指標についてSpearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者は,発症後平均86.6±72.5ヶ月経過し,立位非対称性は平均41.0±7.2%,歩行非対称性は0.7±0.2,FIMは114.5±6.4点,LSAは43.8±19.9点,SIASは54.5±13.4点,BBSは41.8±9.7点,FESは31.7±7.6点,であった。相関分析の結果,FIMはBBSおよびFESと強い相関(それぞれr=0.80,0.84)を,SIASと中等度の相関(r=0.62)を有意に認め,歩行非対称性とは有意な中等度の相関関係を認めた(r=0.52)。LSAはFESと強い相関(r=0.89)を,BBSと中等度の相関(r=0.68)を有意に認め,歩行非対称性との間には有意な中等度の相関関係を認めた(r=0.43)。立位非対称性は,FIMとLSAとの間に有意な相関関係を認めなかった。
【結論】
歩行非称性は,FIMおよびLSAと中等度の相関を認めた。よって慢性期脳卒中患者の活動を維持・改善するためには,歩行の非対称性にも注目すべきである。