[P-NV-18-2] 脳梗塞により不全片麻痺を呈した症例に対して,短下肢装具の撓み度の違いが歩行時の下肢筋活動に与える影響
Keywords:歩行, 調整機能付き短下肢装具, 表面筋電図
【はじめに,目的】
脳卒中によって片麻痺を呈した患者に対して,筋緊張をコントロールする目的で短下肢装具を使用することがある。脳卒中患者に処方する短下肢装具を評価するための装具として,当院には調整機能付き短下肢装具(以下,APS-AFO)がある。臨床を行う上で足継手の種類,底背屈方向の角度制限については検討を行うものの,装具の可撓性については主観的に判断することが多い。下腿三頭筋の筋緊張亢進が著明な症例に対して,APS-AFOの後方平板支柱の強度が歩行時下肢筋活動に与える影響について検討した。
【方法】
対象は中大脳動脈領域の梗塞によって左不全片麻痺を呈した50歳代の女性であった。Brunnstrom Recovery Stageは上肢III,手指I,下肢IV,Ashworth Scaleは足関節背屈がグレード3であった。APS-AFOの平板支柱はアルミ(以下,硬支柱),フレキシブル(以下,柔支柱)をそれぞれ使用し,麻痺側下肢に装着して直線歩行を行った。APS-AFOの足関節の可動範囲は底屈-2°,背屈はフリーとした。2条件における歩行中の麻痺側下腿三頭筋,前脛骨筋,内側広筋,内側ハムストリングスの筋活動を表面筋電計km-818MT(メディエリアサポート社)で計測した。10歩行周期を抽出し,階級幅10%で正規化を行い加算平均した。統計学的検討として,支柱間の筋活動量の比較をMann-WhitneyのU検定を実施した。有意差は5%未満とした。
【結果】
下腿三頭筋では歩行周期全体を通して柔支柱が硬支柱より高い筋活動を認め,歩行周期の80%,100%に柔支柱が有意に高い筋活動を認めた。前脛骨筋は,歩行周期全体を通して柔支柱が高い筋活動を認め,硬支柱,柔支柱ともに立脚中期,遊脚後期に高い二峰性の波形となった。内側ハムストリングスは,硬支柱,柔支柱ともに初期接地期,遊脚後期に高い一峰性の波形となった。歩行周期の90%に柔支柱が有意に高い筋活動を認めた。内側広筋では,硬支柱,柔支柱ともに初期接地期,遊脚後期に高い筋活動を認めた一峰性の波形を認めた。歩行周期を通して柔支柱が硬支柱より高い筋活動量であった。
【結論】
すべての歩行周期において概ね柔支柱の筋活動量が硬支柱より高かった。下腿三頭筋の筋緊張亢進が著明な症例に対して,可撓性の低い装具が底屈筋の筋緊張抑制に働くとの報告がある。本調査において,足継手の可動範囲は同様であっても硬支柱を使用することで,筋活動を抑制する可能性があると考えた。また,遊脚相では柔支柱を使用すると下腿三頭筋の筋活動量が有意に高値を示した。本症例の下腿三頭筋の筋緊張はAshworth scaleグレード3であり,柔支柱を使用すると筋緊張を抑制することが困難であったと考えた。足クリアランスを確保する目的で,遊脚相のハムストリングスの筋活動量も有意に高値を示したと考えた。そのため,下腿三頭筋の筋緊張が亢進している症例に対しては,硬支柱を使用することで高い筋活動を抑制することができると考えた。
脳卒中によって片麻痺を呈した患者に対して,筋緊張をコントロールする目的で短下肢装具を使用することがある。脳卒中患者に処方する短下肢装具を評価するための装具として,当院には調整機能付き短下肢装具(以下,APS-AFO)がある。臨床を行う上で足継手の種類,底背屈方向の角度制限については検討を行うものの,装具の可撓性については主観的に判断することが多い。下腿三頭筋の筋緊張亢進が著明な症例に対して,APS-AFOの後方平板支柱の強度が歩行時下肢筋活動に与える影響について検討した。
【方法】
対象は中大脳動脈領域の梗塞によって左不全片麻痺を呈した50歳代の女性であった。Brunnstrom Recovery Stageは上肢III,手指I,下肢IV,Ashworth Scaleは足関節背屈がグレード3であった。APS-AFOの平板支柱はアルミ(以下,硬支柱),フレキシブル(以下,柔支柱)をそれぞれ使用し,麻痺側下肢に装着して直線歩行を行った。APS-AFOの足関節の可動範囲は底屈-2°,背屈はフリーとした。2条件における歩行中の麻痺側下腿三頭筋,前脛骨筋,内側広筋,内側ハムストリングスの筋活動を表面筋電計km-818MT(メディエリアサポート社)で計測した。10歩行周期を抽出し,階級幅10%で正規化を行い加算平均した。統計学的検討として,支柱間の筋活動量の比較をMann-WhitneyのU検定を実施した。有意差は5%未満とした。
【結果】
下腿三頭筋では歩行周期全体を通して柔支柱が硬支柱より高い筋活動を認め,歩行周期の80%,100%に柔支柱が有意に高い筋活動を認めた。前脛骨筋は,歩行周期全体を通して柔支柱が高い筋活動を認め,硬支柱,柔支柱ともに立脚中期,遊脚後期に高い二峰性の波形となった。内側ハムストリングスは,硬支柱,柔支柱ともに初期接地期,遊脚後期に高い一峰性の波形となった。歩行周期の90%に柔支柱が有意に高い筋活動を認めた。内側広筋では,硬支柱,柔支柱ともに初期接地期,遊脚後期に高い筋活動を認めた一峰性の波形を認めた。歩行周期を通して柔支柱が硬支柱より高い筋活動量であった。
【結論】
すべての歩行周期において概ね柔支柱の筋活動量が硬支柱より高かった。下腿三頭筋の筋緊張亢進が著明な症例に対して,可撓性の低い装具が底屈筋の筋緊張抑制に働くとの報告がある。本調査において,足継手の可動範囲は同様であっても硬支柱を使用することで,筋活動を抑制する可能性があると考えた。また,遊脚相では柔支柱を使用すると下腿三頭筋の筋活動量が有意に高値を示した。本症例の下腿三頭筋の筋緊張はAshworth scaleグレード3であり,柔支柱を使用すると筋緊張を抑制することが困難であったと考えた。足クリアランスを確保する目的で,遊脚相のハムストリングスの筋活動量も有意に高値を示したと考えた。そのため,下腿三頭筋の筋緊張が亢進している症例に対しては,硬支柱を使用することで高い筋活動を抑制することができると考えた。