The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-20] ポスター(神経)P20

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-20-1] ロボットスーツHALを用いた歩行練習の効果と追跡調査
―HTLV-1関連脊髄症の1例―

西 倫史 (鹿児島大学病院霧島リハビリテーションセンター)

Keywords:HTLV-1関連脊髄症, ロボットスーツHAL, 歩行練習

【はじめに,目的】

ロボットスーツHAL(以下,HAL)は,脳卒中患者や脊髄損傷患者,希少性難治性の神経・筋難病疾患に対して歩行能力などの改善効果が報告されている。HTLV-1関連脊髄症(以下,HAM)はHTLV-1が原因で生じる慢性進行性疾患であり,HAM患者に対するリハビリテーションではHALの使用による歩行能力の改善が期待されている。本研究ではHAM患者1例に対して,HALを用いた歩行練習の効果を検討し,その追跡調査を行った。


【方法】

症例は50代女性。診断名はHAM(罹病期間19年),障害名は痙性対麻痺と歩行障害であった。介入前の身体機能評価は,納の運動障害重症度でGrade 5,下肢筋力はManual Muscle Testingで2~3であり,T字杖を使用し軽介助歩行レベルだった。介入方法は転倒予防用の歩行器を使用し,HALを用いた歩行練習を実施した。HALは両側ともにCVCモード(随意制御)とし状態に合わせてアシストを設定・調整した。介入期間は1日20分を,週2回の頻度で5週間,合計10回実施した。評価は2分間歩行テストと10m歩行テスト(快適歩行,最大歩行の速度),フォース&圧分布計測システムWIN FDM2(以下,フォースプレート)による歩行周期の解析とし,介入前後で実施した。また,追跡調査は2分間歩行テストと10m歩行テストを介入終了4週後,8週後,12週後,16週後で行った。


【結果】

2分間歩行テストと10m歩行テストの快適歩行と最大歩行の速度では介入前と比較すると介入後で改善が得られた。また,フォースプレートによる歩行解析では介入後で歩幅と単脚支持期割合,1歩時間で改善が得られた。追跡調査では介入終了4週後の快適歩行と最大歩行の速度,2分間歩行テストでともに低下した。しかし,2分間歩行テストと快適歩行速度は介入前と比較すると介入終了16週後まで高い水準で維持されていた。最大歩行速度では介入終了8週後までは維持されていたが,12週後で介入前と同等となり16週後では低下した。


【結論】

HAM患者1例に対してHALを用いた歩行練習を実施し,介入前後で歩行能力の改善が得られた。また,追跡調査では2分間歩行テストと快適歩行速度で介入終了16週後まで維持されており,最大歩行速度では8週後まで維持されていた。本研究結果から,HALでの歩行パターンの反復により歩行に関する運動学習と神経回路の強化が促されたと考えた。最大歩行速度では追跡調査結果から歩行能力の低下がみられており,介入後も継続的な歩行練習が必要であることが示唆された。本研究では介入回数が10回と少ないものの,HALを用いた歩行練習は慢性進行性疾患であるHAM患者の歩行能力の改善に効果的であると考えられる。今後は,症例数の蓄積とともに,HALの介入方法や筋力強化および歩行指導,自主練習指導などの身体能力改善・維持を目的にした長期的かつ効果的なリハビリテーションの検討が必要である。