The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-20] ポスター(神経)P20

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-20-2] デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者の歩行可能期における脊柱変形の凹凸側と下肢関節可動域制限左右差との関係性について

立石 貴之1, 松井 彩乃2, 小牧 宏文3, 岩田 恭幸1, 佐藤 福志1, 早乙女 貴子1, 齊藤 亘4 (1.国立精神・神経医療研究センターリハビリテーション科, 2.国立精神・神経医療研究センター整形外科, 3.国立精神・神経医療研究センター小児神経科, 4.北里大学病院整形外科)

Keywords:デュシェンヌ型筋ジストロフィー, 側彎, 関節可動域

【背景】デュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下DMD)患者に対するリハビリテーションの重要な目標の1つに側彎予防が挙げられるが,効果がある運動療法の報告は少ない。側彎予防の運動療法を確立するために,側彎と身体機能との関係性の把握が必要だが,歩行困難期の報告ですら少なく,側彎は一般的にCobb角10°以上と定義されるため,脊柱変形が軽度な歩行可能期の報告においては皆無である。


【目的】DMD患者の歩行可能期における脊柱変形の凹凸側と下肢関節可動域(以下ROM),筋力,利き手の関係を調査すること。


【方法】平成28年6月から10月の診療録を用いた後方視的観察研究とした。対象は当院受診中の7歳以上で10m歩行が可能であるDMD患者で,座位で撮影した全脊柱X線画像から整形外科医がCobb角を計測し,5°以上呈する患者とした。X線画像は身体機能評価日から前後1年間以内に撮影した画像を使用した。Cobb角の計測結果から脊柱変形の凹凸側を決定し,凹凸側の2群間で身体機能(足背屈,股伸展,股内旋の関節可動域(以下ROM),膝伸展筋力(MicroFET2を使用),利き手,評価をしたROMでより制限のある側の凹凸側の各症例数)を比較し,有意差を検証した。統計解析は各項目で正規性の検定を行い,対応のあるt検定およびχ2乗適合度検定を用い,有意水準は5%未満とした。


【結果】対象となった患者は26名で,欠損データのあった7名を除いた19名(9.6±1.6歳)の測定結果を検討に用いた。Cobb角は10.3±3.7°(5.2~18.7°)であった。脊柱変形の凸側は右7名,左12名であった。凹凸側の身体機能(凹側/凸側)の比較で,ROMは足背屈(-0.8±11.5°/3.1±9.4°),股伸展(4.5±11.8°/6.8±11.5°),股内旋(49.0±28.2°/52.9±22.3°)であった。筋力は膝伸展(30.9±21.5N/30.0±21.5N)であった。利き手(8例/11例),足背屈制限側(14名/4名),股伸展制限側(8名/5名),股内旋制限側(11名/6名)であった。身体機能を凹凸側の2群間で比較したところ,凹側の足背屈ROMは凸側に比して,有意にROMの低下を認めた。また,足背屈ROM制限を認めた症例は凹側で有意に多かった。


【考察】足関節ROM制限と脊柱変形側との因果関係は不明であるが,歩行や立ち上がり動作の中で凹側の足関節底屈モーメントをより発揮せざるを得ない運動連鎖があるのかもしれない。今後,今回の対象者を経年的に観察し,歩行期と歩行困難期の脊柱変形,身体機能に一貫性があるか,また,歩行可能期に脊柱変形のある症例とない症例の身体機能の相違を調査したい。そして,歩行期からの運動療法が将来生じうる側彎の程度を軽減することができるのかも検討していきたい。