[P-NV-22-2] 脳卒中片麻痺患者の下肢感覚障害が歩行とバランスに及ぼす影響
―表在感覚障害と深部感覚障害での比較―
Keywords:表在感覚障害, 深部感覚障害, 下肢
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺患者における下肢感覚障害は多くの症例に認められる。先行研究より下肢感覚障害は最大歩行速度やバランス,歩行自立までの期間などへの影響が明らかになっている。しかし,先行研究では表在感覚障害と深部感覚障害が混在しており,表在感覚と深部感覚のそれぞれが歩行やバランスに及ぼす影響は明らかではない。脳卒中片麻痺患者における表在感覚と深部感覚障害は回復が異なるとの報告があり,それぞれの感覚障害の影響をできるだけ除外した状態にて分析することが重要である。そこで,本研究の目的はそれぞれの感覚障害が混在しないように群分けを行い,脳卒中片麻痺患者における下肢の表在感覚障害と深部感覚障害が歩行とバランスへ及ぼす影響を明らかにすることとした。
【方法】
研究デザインは後方視的研究とし診療録よりデータを抽出した。対象は2014年12月1日以降当院回復期病棟に入院し,2016年9月20日までに自宅退院した初発のテント上病変の脳卒中片麻痺患者127名とした。そのうち,認知障害,高次脳機能障害患者を除外し,運動麻痺の程度を揃えるためBrunnstrom recovery stage(以下,BRS)III以上の118名を抽出した。感覚障害はStroke Impairment Assessment Setにて評価した。SIASの感覚検査の結果から表在感覚と深部感覚障害が混在しないように,触覚は正常で位置覚が鈍麻した症例と位置覚は正常で触覚が鈍麻した症例を抽出し,深部感覚障害群と表在感覚障害群として2群に分類した。最終的に深部感覚障害群11名,表在感覚障害群18名を対象とした。2群の基本属性(年齢,性別,病型,麻痺側,BRS,在院日数,FIM利得)と入退院時における10m歩行速度,6分間歩行距離,屋外歩行距離,Functional Balance Scale(以下,FBS),Functional Independence Measure(以下,FIM)を2群間で比較した。統計学的処理として,基本属性はマンホイットニーのU検定とχ2検定を用いた。表在感覚障害群と深部感覚障害群における入退院時の各因子の比較には二元配置反復測定分散分析を用いた。ソフトはSPSSを使用し,有意水準5%とした。
【結果】
2群間において,基本属性である年齢(P=0.671),性別(P=0.732),病型(P=0.732),麻痺側(P=0.958),FIM利得(P=0.216),BRS(P=0.053)に有意差は見られなかった。しかし,在院日数に有意差を認め(P=0.049),深部感覚障害群の方が有意に在院日数は長かった。また,10m歩行速度,6分間歩行距離,屋外歩行距離,FBS,FIMに主効果を認め(P<0.05),深部感覚障害が有意に低い値を示した。交互作用は認められなかった(P>0.05)。
【結論】
運動麻痺の程度を揃え,表在感覚と深部感覚障害のそれぞれの影響を除外し分析した結果,深部感覚障害群は表在感覚障害群に比べ歩行速度や屋内外の歩行距離,バランス,FIMが低い結果となった。下肢は表在感覚よりも深部感覚の方が歩行やバランス機能に与える影響が大きいことが明らかとなった。
脳卒中片麻痺患者における下肢感覚障害は多くの症例に認められる。先行研究より下肢感覚障害は最大歩行速度やバランス,歩行自立までの期間などへの影響が明らかになっている。しかし,先行研究では表在感覚障害と深部感覚障害が混在しており,表在感覚と深部感覚のそれぞれが歩行やバランスに及ぼす影響は明らかではない。脳卒中片麻痺患者における表在感覚と深部感覚障害は回復が異なるとの報告があり,それぞれの感覚障害の影響をできるだけ除外した状態にて分析することが重要である。そこで,本研究の目的はそれぞれの感覚障害が混在しないように群分けを行い,脳卒中片麻痺患者における下肢の表在感覚障害と深部感覚障害が歩行とバランスへ及ぼす影響を明らかにすることとした。
【方法】
研究デザインは後方視的研究とし診療録よりデータを抽出した。対象は2014年12月1日以降当院回復期病棟に入院し,2016年9月20日までに自宅退院した初発のテント上病変の脳卒中片麻痺患者127名とした。そのうち,認知障害,高次脳機能障害患者を除外し,運動麻痺の程度を揃えるためBrunnstrom recovery stage(以下,BRS)III以上の118名を抽出した。感覚障害はStroke Impairment Assessment Setにて評価した。SIASの感覚検査の結果から表在感覚と深部感覚障害が混在しないように,触覚は正常で位置覚が鈍麻した症例と位置覚は正常で触覚が鈍麻した症例を抽出し,深部感覚障害群と表在感覚障害群として2群に分類した。最終的に深部感覚障害群11名,表在感覚障害群18名を対象とした。2群の基本属性(年齢,性別,病型,麻痺側,BRS,在院日数,FIM利得)と入退院時における10m歩行速度,6分間歩行距離,屋外歩行距離,Functional Balance Scale(以下,FBS),Functional Independence Measure(以下,FIM)を2群間で比較した。統計学的処理として,基本属性はマンホイットニーのU検定とχ2検定を用いた。表在感覚障害群と深部感覚障害群における入退院時の各因子の比較には二元配置反復測定分散分析を用いた。ソフトはSPSSを使用し,有意水準5%とした。
【結果】
2群間において,基本属性である年齢(P=0.671),性別(P=0.732),病型(P=0.732),麻痺側(P=0.958),FIM利得(P=0.216),BRS(P=0.053)に有意差は見られなかった。しかし,在院日数に有意差を認め(P=0.049),深部感覚障害群の方が有意に在院日数は長かった。また,10m歩行速度,6分間歩行距離,屋外歩行距離,FBS,FIMに主効果を認め(P<0.05),深部感覚障害が有意に低い値を示した。交互作用は認められなかった(P>0.05)。
【結論】
運動麻痺の程度を揃え,表在感覚と深部感覚障害のそれぞれの影響を除外し分析した結果,深部感覚障害群は表在感覚障害群に比べ歩行速度や屋内外の歩行距離,バランス,FIMが低い結果となった。下肢は表在感覚よりも深部感覚の方が歩行やバランス機能に与える影響が大きいことが明らかとなった。