[P-NV-22-4] 聴覚刺激が立位・歩行制御に与える影響
Keywords:リズム聴覚刺激, 歩行制御, 立位姿勢制御
【はじめに,目的】
聴覚刺激が静止立位時の身体動揺や歩行に影響を及ぼす報告が散見されるが,未だ明らかとなっていない。今回,歩行中の各個人のリズム聴覚刺激(Rhythmic Auditory Stimulation 以下RAS)を用い,RASが静止立位時の重心動揺や歩行に与える影響について検証した。
【方法】
若年健常者24名(男性13名,女性11名,平均年齢20.5歳±0.9歳)を対象に歩行検査と重心動揺検査を実施した。歩行検査では被験者の定常歩行と速歩から計測時間,歩行率,速度を算出し,歩行率から定常歩行と速歩のRASを作成した。その後,作成した速歩のRASを与えながら定常歩行を実施し,同様に計測時間,歩行率,速度を算出した。重心動揺検査では,聴覚刺激なし条件,聴覚刺激左右5sec条件,RAS条件の3条件とした。聴覚刺激左右5sec条件では,左耳と右耳交互に5秒間ずつ聴覚刺激を与えた。RAS条件では,被験者の定常歩行の歩行率からRASを作成した。70秒間の測定を各3施行とし,計9施行実施した。重心動揺測定機器はWiiボード(任天堂社製)を使用した。聴覚刺激音源は音源作成ソフト(Audacity)で作成した。データ解析は被験者24名のうち,解析可能であった20名を対象とし,有意水準は5%未満とした。歩行検査では,歩数,速度,歩行率について対応のあるt検定を行った。重心動揺検査では,総軌跡長,外周面積,実効値面積(Root Mean Square Area:以下,RMS),を使用し,統計処理は一元配置分散分析,多重比較検定にはBonferroni/Dunn法を用いた。
【結果】
歩行検査においてRASあり群とRASなし群では,RASあり群で速度が有意に高値を示し(p<0.05),歩数においては低値の傾向を示した(p=0.06)。歩行率には有意差を認めなかった。重心動揺検査では,聴覚刺激なし条件と比較して,聴覚刺激左右5 sec条件,RAS条件ではRMSが有意に低値を示した(p<0.01)。総軌跡長,外周面積には有意差を認めなかった。
【結論】
歩行検査において,RASあり群では歩行速度が有意に高値を示し,歩数が減少傾向にあった。武藤らは健常者に対してリズム聴覚刺激を用い,引き込み現象が起こることを報告している。したがって被験者は定常歩行の教示を受けながら,RASに引き込まれたと考えられる。また,歩行率は有意差を認めなかった。これは,歩行速度をあげて歩幅を増大させることで代償していたと考えられる。今回の実験結果は,歩行中にRASを用いることで歩行速度が変わることを示唆したものであり,臨床において歩行速度を向上させたい場合の聴覚刺激の有用性を支持するものである。また,重心動揺検査では閉眼時と比較して,聴覚刺激左右5 sec条件,RAS条件でRMSが有意に減少した。Rossらは聴覚刺激が大脳の感覚統合領域におけるフィードバック機構に関与し,姿勢を安定させることを報告している。このことから,本研究においても同様の姿勢制御機構が働き,姿勢の安定に関与したことが推測される。
聴覚刺激が静止立位時の身体動揺や歩行に影響を及ぼす報告が散見されるが,未だ明らかとなっていない。今回,歩行中の各個人のリズム聴覚刺激(Rhythmic Auditory Stimulation 以下RAS)を用い,RASが静止立位時の重心動揺や歩行に与える影響について検証した。
【方法】
若年健常者24名(男性13名,女性11名,平均年齢20.5歳±0.9歳)を対象に歩行検査と重心動揺検査を実施した。歩行検査では被験者の定常歩行と速歩から計測時間,歩行率,速度を算出し,歩行率から定常歩行と速歩のRASを作成した。その後,作成した速歩のRASを与えながら定常歩行を実施し,同様に計測時間,歩行率,速度を算出した。重心動揺検査では,聴覚刺激なし条件,聴覚刺激左右5sec条件,RAS条件の3条件とした。聴覚刺激左右5sec条件では,左耳と右耳交互に5秒間ずつ聴覚刺激を与えた。RAS条件では,被験者の定常歩行の歩行率からRASを作成した。70秒間の測定を各3施行とし,計9施行実施した。重心動揺測定機器はWiiボード(任天堂社製)を使用した。聴覚刺激音源は音源作成ソフト(Audacity)で作成した。データ解析は被験者24名のうち,解析可能であった20名を対象とし,有意水準は5%未満とした。歩行検査では,歩数,速度,歩行率について対応のあるt検定を行った。重心動揺検査では,総軌跡長,外周面積,実効値面積(Root Mean Square Area:以下,RMS),を使用し,統計処理は一元配置分散分析,多重比較検定にはBonferroni/Dunn法を用いた。
【結果】
歩行検査においてRASあり群とRASなし群では,RASあり群で速度が有意に高値を示し(p<0.05),歩数においては低値の傾向を示した(p=0.06)。歩行率には有意差を認めなかった。重心動揺検査では,聴覚刺激なし条件と比較して,聴覚刺激左右5 sec条件,RAS条件ではRMSが有意に低値を示した(p<0.01)。総軌跡長,外周面積には有意差を認めなかった。
【結論】
歩行検査において,RASあり群では歩行速度が有意に高値を示し,歩数が減少傾向にあった。武藤らは健常者に対してリズム聴覚刺激を用い,引き込み現象が起こることを報告している。したがって被験者は定常歩行の教示を受けながら,RASに引き込まれたと考えられる。また,歩行率は有意差を認めなかった。これは,歩行速度をあげて歩幅を増大させることで代償していたと考えられる。今回の実験結果は,歩行中にRASを用いることで歩行速度が変わることを示唆したものであり,臨床において歩行速度を向上させたい場合の聴覚刺激の有用性を支持するものである。また,重心動揺検査では閉眼時と比較して,聴覚刺激左右5 sec条件,RAS条件でRMSが有意に減少した。Rossらは聴覚刺激が大脳の感覚統合領域におけるフィードバック機構に関与し,姿勢を安定させることを報告している。このことから,本研究においても同様の姿勢制御機構が働き,姿勢の安定に関与したことが推測される。