[P-NV-23-1] 脳梗塞患者における大脳白質病変が歩行自立度に及ぼす影響
~回復期リハビリテーション病棟患者での検討~
Keywords:脳梗塞, 大脳白質病変, 歩行自立
【はじめに,目的】
無症候性脳血管障害は脳卒中に発展しうる病態として注目されており,そのうち大脳白質病変は頭部MRIで観察可能な慢性の虚血性変化である。脳卒中ガイドラインにて,大脳白質病変は脳卒中発症の独立した危険因子として報告されている。しかしながら,脳卒中発症後の回復と大脳白質病変の関連は明らかではない。健常高齢者において,大脳白質病変は認知症,歩行速度低下やバランス障害などの要因となることが報告されている。これらの機能低下は脳卒中後の回復にも影響を及ぼす可能性がある。よって本研究では,回復期リハビリテーション病棟において大脳白質病変が歩行自立度に及ぼす影響を検討することとする。
【方法】
当院回復期リハビリテーション病棟に入院した初発脳梗塞患者を対象とした。退院時の歩行様式にて自立群,非自立群に群分けし後ろ向きに検討した。調査期間は2014年4月から2016年8月とした。入院時歩行自立の者,入院中増悪した者,発症前歩行非自立の者は除外した。なお,歩行自立度はFunctional Independence Measureにて評価し6点以上を自立群,5点以下を非自立群とした。大脳白質病変は発症時のMRIにて評価を行った。Fazekasらの分類に従い,脳室周囲病変(以下PVH)及び深部皮質下白質病変(以下DSWMH)でグレード分類した。各グレード2以上を病変有りとした。退院時病棟歩行自立度を従属変数,年齢,性別,入院時Fugl-Meyer Assessment下肢項目(以下FMA),テント上の損傷か否か,高次脳機能障害の有無,PVHの有無,DSWMHの有無を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を実施した。統計ソフトはR ver 2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
本研究の対象は74名で,歩行自立群43名,非自立群31名となった。多重ロジスティック回帰分析の結果,関連を認めた項目は年齢(オッズ比1.11,95%信頼区間1.03-1.20),FMA(オッズ比1.12,95%信頼区間1.05-1.21),高次脳機能障害の有無(オッズ比4.64,95%信頼区間1.31-16.4),PVHの有無(オッズ比4.45。95%信頼区間1.22-16.2)であった。
【結論】
脳梗塞患者について大脳白質病変のうちPVHが歩行自立の阻害因子になることが示唆された。回復期リハビリテーション病棟にて脳梗塞患者の評価をする際,脳梗塞の損傷部位のみならず大脳白質病変とりわけPVHへの考慮を行う必要がある。大脳白質病変の局在について,健常高齢者においてPVHの存在はより歩行速度やバランス低下の身体機能に影響を及ぼすと報告されている。病棟歩行自立の評価基準には曖昧な面もあるが,PVHを有する者は,潜在的な歩行・バランス障害が要因となり歩行自立が阻害されたと考えられる。
無症候性脳血管障害は脳卒中に発展しうる病態として注目されており,そのうち大脳白質病変は頭部MRIで観察可能な慢性の虚血性変化である。脳卒中ガイドラインにて,大脳白質病変は脳卒中発症の独立した危険因子として報告されている。しかしながら,脳卒中発症後の回復と大脳白質病変の関連は明らかではない。健常高齢者において,大脳白質病変は認知症,歩行速度低下やバランス障害などの要因となることが報告されている。これらの機能低下は脳卒中後の回復にも影響を及ぼす可能性がある。よって本研究では,回復期リハビリテーション病棟において大脳白質病変が歩行自立度に及ぼす影響を検討することとする。
【方法】
当院回復期リハビリテーション病棟に入院した初発脳梗塞患者を対象とした。退院時の歩行様式にて自立群,非自立群に群分けし後ろ向きに検討した。調査期間は2014年4月から2016年8月とした。入院時歩行自立の者,入院中増悪した者,発症前歩行非自立の者は除外した。なお,歩行自立度はFunctional Independence Measureにて評価し6点以上を自立群,5点以下を非自立群とした。大脳白質病変は発症時のMRIにて評価を行った。Fazekasらの分類に従い,脳室周囲病変(以下PVH)及び深部皮質下白質病変(以下DSWMH)でグレード分類した。各グレード2以上を病変有りとした。退院時病棟歩行自立度を従属変数,年齢,性別,入院時Fugl-Meyer Assessment下肢項目(以下FMA),テント上の損傷か否か,高次脳機能障害の有無,PVHの有無,DSWMHの有無を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を実施した。統計ソフトはR ver 2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
本研究の対象は74名で,歩行自立群43名,非自立群31名となった。多重ロジスティック回帰分析の結果,関連を認めた項目は年齢(オッズ比1.11,95%信頼区間1.03-1.20),FMA(オッズ比1.12,95%信頼区間1.05-1.21),高次脳機能障害の有無(オッズ比4.64,95%信頼区間1.31-16.4),PVHの有無(オッズ比4.45。95%信頼区間1.22-16.2)であった。
【結論】
脳梗塞患者について大脳白質病変のうちPVHが歩行自立の阻害因子になることが示唆された。回復期リハビリテーション病棟にて脳梗塞患者の評価をする際,脳梗塞の損傷部位のみならず大脳白質病変とりわけPVHへの考慮を行う必要がある。大脳白質病変の局在について,健常高齢者においてPVHの存在はより歩行速度やバランス低下の身体機能に影響を及ぼすと報告されている。病棟歩行自立の評価基準には曖昧な面もあるが,PVHを有する者は,潜在的な歩行・バランス障害が要因となり歩行自立が阻害されたと考えられる。