[P-NV-23-2] 脳卒中片麻痺患者におけるステップ肢位での動的バランス評価(SPT)と歩行自立度の関係~第2報~
Keywords:脳卒中片麻痺患者, ステップ肢位, 歩行自立度
【はじめに,目的】
脳卒中片麻痺患者において,草野ら(2002)はステップ肢位での最大重心移動や姿勢保持能力が歩行自立度と関連があると報告している。我々は第50回の本学会にて,臨床的観点からPTの観察によるステップ肢位での動的バランス評価(Step Position Test;以下,SPT)を考案し,歩行自立度との関連を報告した。今回,対象者数を増やし統計的な検討を加えSPTの意義について再度検証を行った。
【方法】
対象は当院回復期病棟に入院した脳卒中片麻痺患者から,触れる程度の介助以上で歩行が可能であった者14名(男性9名:女性5名,平均69±9歳)とした。診断名は脳梗塞9名:脳出血5名。麻痺側は右4名:左10名,発症から測定までの日数は101±46日。下肢Brunnstrom stageはIIが2名,IIIが1名,IVが7名,Vが1名,VIが3名。SPTとして4種類のTestを実施。Test①・②:静止立位から対象者自身のタイミングで前方にステップし5秒間保持した後に,元の姿勢に戻る(①麻痺側・②非麻痺側からのステップ)。Test③:静止立位から非麻痺側下肢を前方にステップし,そのまま非麻痺側の足関節背屈運動5回,背屈位を5秒間保持し,元の姿勢に戻る。Test④:静止立位から非麻痺側下肢を後方にステップし,そのまま非麻痺側の足関節底屈運動5回と底屈位を5秒間保持し,元の姿勢に戻る。Test①~④実施中の動画を撮影し,臨床経験10年目以上のPT4名が個別で動画を観ながら以下の基準で採点。4:安全に実施可能,3:ふらつきあるが自制内,2:ふらつき強く触れる程度の介助必要,1:実施困難とした。4名のPTが採点した点数の平均値を各Testの結果とし,Test①~④の合計点を各対象者のSPT値とした。また,検者間信頼性を確認するため級内相関係数(ICC)を算出。SPT値とBerg Balance Scale(以下,BBS),最速10m歩行にて,歩行自立度(評価時点のFIM歩行点数)との関連性を検証するためSpearmanの順位相関係数(ρ)を算出。さらに,対象をFIM歩行点数より自立群:FIM=7点,修正自立群:FIM=6点,要介助群:FIM=5 or 4点の3群に分類。歩行自立度に応じて各測定値が異なるか検証するため,Kruskal-Wallis検定とその後の多重比較検定(Bonfferoni法)にて,3群間の測定値を比較した。
【結果】歩行自立度との関連性としてSPT値はρ=0.88(p<0.01),BBSはρ=0.76(p<0.01)と高い関連性を示した。SPT値のICC(2,1)は0.89と検者間の差は少なかった。3群間の比較では,SPTのTest①・②の点数は自立群が要介助群よりも有意に高く(p<0.05),SPT値は自立群が他の2群よりも有意に高かった(p<0.01)。また,BBSは要介助群が他の2群よりも有意に低かった(p<0.01)。
【結論】脳卒中片麻痺患者におけるステップ肢位での動的バランス評価は歩行自立度と関連することが示唆された。ステップ肢位は歩行の両脚支持期と類似した姿勢であり,歩行時のバランス能力を反映しやすいと考えられる。
脳卒中片麻痺患者において,草野ら(2002)はステップ肢位での最大重心移動や姿勢保持能力が歩行自立度と関連があると報告している。我々は第50回の本学会にて,臨床的観点からPTの観察によるステップ肢位での動的バランス評価(Step Position Test;以下,SPT)を考案し,歩行自立度との関連を報告した。今回,対象者数を増やし統計的な検討を加えSPTの意義について再度検証を行った。
【方法】
対象は当院回復期病棟に入院した脳卒中片麻痺患者から,触れる程度の介助以上で歩行が可能であった者14名(男性9名:女性5名,平均69±9歳)とした。診断名は脳梗塞9名:脳出血5名。麻痺側は右4名:左10名,発症から測定までの日数は101±46日。下肢Brunnstrom stageはIIが2名,IIIが1名,IVが7名,Vが1名,VIが3名。SPTとして4種類のTestを実施。Test①・②:静止立位から対象者自身のタイミングで前方にステップし5秒間保持した後に,元の姿勢に戻る(①麻痺側・②非麻痺側からのステップ)。Test③:静止立位から非麻痺側下肢を前方にステップし,そのまま非麻痺側の足関節背屈運動5回,背屈位を5秒間保持し,元の姿勢に戻る。Test④:静止立位から非麻痺側下肢を後方にステップし,そのまま非麻痺側の足関節底屈運動5回と底屈位を5秒間保持し,元の姿勢に戻る。Test①~④実施中の動画を撮影し,臨床経験10年目以上のPT4名が個別で動画を観ながら以下の基準で採点。4:安全に実施可能,3:ふらつきあるが自制内,2:ふらつき強く触れる程度の介助必要,1:実施困難とした。4名のPTが採点した点数の平均値を各Testの結果とし,Test①~④の合計点を各対象者のSPT値とした。また,検者間信頼性を確認するため級内相関係数(ICC)を算出。SPT値とBerg Balance Scale(以下,BBS),最速10m歩行にて,歩行自立度(評価時点のFIM歩行点数)との関連性を検証するためSpearmanの順位相関係数(ρ)を算出。さらに,対象をFIM歩行点数より自立群:FIM=7点,修正自立群:FIM=6点,要介助群:FIM=5 or 4点の3群に分類。歩行自立度に応じて各測定値が異なるか検証するため,Kruskal-Wallis検定とその後の多重比較検定(Bonfferoni法)にて,3群間の測定値を比較した。
【結果】歩行自立度との関連性としてSPT値はρ=0.88(p<0.01),BBSはρ=0.76(p<0.01)と高い関連性を示した。SPT値のICC(2,1)は0.89と検者間の差は少なかった。3群間の比較では,SPTのTest①・②の点数は自立群が要介助群よりも有意に高く(p<0.05),SPT値は自立群が他の2群よりも有意に高かった(p<0.01)。また,BBSは要介助群が他の2群よりも有意に低かった(p<0.01)。
【結論】脳卒中片麻痺患者におけるステップ肢位での動的バランス評価は歩行自立度と関連することが示唆された。ステップ肢位は歩行の両脚支持期と類似した姿勢であり,歩行時のバランス能力を反映しやすいと考えられる。