第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-23] ポスター(神経)P23

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-23-5] 脳卒中片麻痺患者における立脚後期の足関節底屈トルクの大きさと運動麻痺の関連

石原 匠1, 高村 優作1, 市村 幸盛1, 藤本 康浩2, 藤内 和恵2, 富永 孝紀3 (1.医療法人穂翔会村田病院リハビリテーション部, 2.川村義肢株式会社, 3.株式会社たか翔)

キーワード:脳卒中片麻痺患者, 歩行, 運動麻痺

【はじめに,目的】

先行研究では,脳卒中片麻痺患者において踵接地直後の底屈トルク値(First Peak:FP)や足趾離地時の底屈トルク値(Second Peak:SP)が低いといった報告(山木2014)や,健常成人において歩行速度が速いほどSPが高値となるといった報告(丹保2013)がある。一方で,臨床場面では運動麻痺が重度でも蹴り出しが十分な症例や運動麻痺が軽度でも蹴り出しが不十分な症例,歩行速度を意識的に上げることが不可能な症例がいる。本研究では,運動麻痺の程度と歩行時に得られる各パラメータからSPの大きさに関連する因子の調査を試みた。


【方法】

対象は脳卒中片麻痺患者で歩行が可能な16名(男性8名,女性8名)とした。平均年齢は65.0±11.7歳,発症からの経過年数は2.0±2.8年,自立歩行9名,監視歩行7名であった。歩行時間が平均値±2SD外の患者1名を除外とした。運動麻痺の評価としてFugl-Meyer motor assessment(FMA)下肢運動項目を実施し27.9±3.0点であった。測定は快適歩行速度で実施し,開始後3周期,終了前3周期を除いた5~10歩行周期の底屈モーメントと足関節角度を計測した(川村義肢社製Gait Judge System,Gait Solution付短下肢装具を使用)。解析は,得られたデータより,足趾離地時の底屈トルク値としてSPの最大値(SP-max),麻痺側の体重心の移動時間の変数と仮定してFPからSPまでの潜時(潜時),蹴り出し速度の変数と仮定して同時期の足関節運動の加速度(足関節加速度)の各平均値を算出した。統計学的処理は,SP-max,潜時,足関節加速度,FMAの間のSpearman順位相関係数を算出し,危険率は5%未満とした。


【結果】

SP-maxと潜時,SP-maxと足関節加速度の間で有意な相関関係が認められた(P<0.05)。FMAとSP-max,潜時,足関節加速度の間ではいずれも有意な相関関係を認めなかった。


【結論】

本研究では,FMAとSP-max,潜時,足関節加速度はいずれも相関関係を認めず,SP-maxや潜時,足関節加速度は運動麻痺の程度に規定されないことが明らかとなった。SPの発現にはStretch Shortening Cycle(SSC)が関与するとされており,SP-maxと潜時,足関節加速度に相関関係を認めたことから,潜時と足関節加速度がSSCの神経筋機構に働きかけることにより,SP-maxを得ていることが考えられる。潜時は麻痺側の体重心の移動時間を,足関節加速度は蹴り出し速度と仮定しており,脳卒中片麻痺患者において,SP-maxの大きさには,運動麻痺の程度ではなく,麻痺側の体重心の移動時間や蹴り出し速度が寄与しているものと考える。