第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-26] ポスター(神経)P26

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-26-2] 霊長類内包出血後の機能回復を促進する新規薬剤の開発

中島 和希1, 阿部 弘基1, 村田 弓2, 奥田 智博3, 肥後 範行2, 高橋 琢哉1 (1.横浜市立大学医学部生理学, 2.国立研究開発法人産業技術総合研究所人間情報研究部門システム脳科学研究グループ, 3.富山化学工業株式会社綜合研究所)

キーワード:AMPA型受容体, カニクイザル, 内包出血

【はじめに,目的】

脳血管障害により生じた麻痺はリハビリテーション(リハビリ)によりある程度回復するが,元の水準までの機能回復は困難である。そのため,脳血管障害後のリハビリによる機能回復を促進する新規薬剤の開発が求められている。

我々はシナプス伝達に重要な役割を担うグルタミン酸受容体(AMPA型受容体)に着目して研究を行っており,富山化学工業株式会社との共同研究でAMPA型受容体のシナプス移行を促進する新規低分子化合物(T-817MA)を同定した。げっ歯類凍結脳損傷モデルにおいて,T-817MAを投与すると,リハビリ様トレーニング依存的に上肢機能回復を促進することを既に明らかにしている(unpublished data)。本研究では,高度な上肢運動機能を持つ霊長類の内包出血モデルを用いて,T-817MAによる上肢運動機能の回復促進効果を検証し,AMPA型受容体シナプス移行促進作用を利用したリハビリ促進薬を開発することを目的とした。


【方法】

実験には雄の成体カニクイザル6頭を供した。実験者,実験装置への馴化と利き手の決定を5日間行った後,2つの行動実験課題(Simple reach-to-grasp task,Vertical-slit task)を20日間学習させた。学習成立後に,ナビゲーションシステムガイド下で内包後脚へのコラゲナーゼ局所注入を行い,限局的な出血を作製した。内包出血作製1日後から片側上肢に限局する麻痺を確認し,麻痺肢の提示餌へのリーチング運動が認められた後,約60日間の薬剤投与及びリハビリ様トレーニングと行動実験課題の達成度評価を行った。評価は,提示餌を把持し飼育ケージ内まで引き入れる時間(Time to retrievals)と提示餌を落とさずに飼育ケージ内まで引き入れる割合(Success rate)を用いた。


【結果】

T-817MA投与群では,Simple reach-to-grasp task,Vertical-slit taskのどちらのタスクにおいてもTime to retrievalsが短縮した。また,T-817MA投与群では,Vertical-slit taskにおいてSuccess rateが増加した。


【結論】

新規低分子化合物T-817MAは,霊長類内包損傷後の上肢運動機能回復を促進した。